- Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062175654
作品紹介・あらすじ
敵は七人の魔女、待ち構えるのは英国海軍。敗戦後、日本の石油エネルギーを牛耳ったのは、巨大国際石油資本・メジャーたちだった。日系石油会社はつぎつぎとメジャーに蹂躙される。一方、世界一の埋蔵量を誇る油田をメジャーのひとつアングロ・イラニアン社(現BP)に支配されていたイランは、国有化を宣言したため、国際的に孤立し、経済封鎖で追いつめられる。英国海軍が警戒する海を、一隻の日本のタンカーがイランに向けて航行していた――。
「日章丸事件」に材をとった、圧倒的感動の歴史経済小説、ここに完結。
感想・レビュー・書評
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昭和22年から56年までが描かれる下巻。
石油を自由に売ることのできる世の中を目指して仕事に邁進する国岡であったが、メジャーと組んだ企業や通産省からの横槍もあり、一向に思うようにはならない。
次から次へと押し寄せる難題をひとつひとつ解決していくものの、石油を売るということの難しさ故か、本質的な解決への道のりは長く険しい。
日本のエネルギー政策が後手後手に回った結果、第2次世界大戦への道を選ばざるを得なかったという辺りが、上巻に書かれていた。食料やエネルギーなどライフラインに関わることは、それが断たれると国の存続に大いに影響する重大事で、長期的な視野をもって粘り強い交渉していかなければならない。明治以降、ずいぶん長い間うまくいかないまま、現在に至っているように思う。
そんな中で、国岡の先見性とその手腕には驚くばかり。何に着目し未来を予想するのかといった、卓越した見識と新しい視点はどのような分野においても一目置かれるに違いない。
経済界における剛腕。
ノーベル賞受賞者が排出されるような研究環境。
今まで日本人が苦手としていたプレゼンテーション。
同じ国に生まれた一人として、少しばかり誇りに思えることが続くうれしさ。
ただひたすら、前へ前へと道なき道を切り拓いてきたが、別れた先妻が亡くなったことを後になって知り、一緒に暮らしていた頃を懐かしく思い出す。国岡は幸せな現在の暮らしを肯定しながらも、苦楽を共にした先妻と別れたことは間違いだったのでは、との思いが一瞬頭をよぎる。
そして、あらためて次のように考えるのだった。
人生は一度きりだ。二つの道はない。(P350)
これには平凡に暮らしている私も激しく同意した。
日々淡々と過ごしても、後になってその選択が正しかったか?と思い返すことは少なくないものだ。
それでも、今を肯定できるのならば、そこにつながる無数の点も肯定しよう。
ひとつの道だからこそ、尊く愛おしい。 -
読み終えジーンとしている。
最後はあっけなく終わる。
読者の感傷など全く煽らない。
国岡鐵造の潔さ、天年を全うした最後に相応しく素晴らしい読後感を残す。
国岡鐵造(出光佐三氏)の経営方針は普通と違いすぎる。
タイムカードなし、出勤簿なし、定年なし、労働組合なし、残業手当もない。
「社員を信じる」経営方針の徹底であった。
普通の会社では到底真似できない。
さらに数百、数千、数万人の会社にはコンプライアンスという枷も加わり輪をかけて社員を縛り会社を縛り、結果的に顧客、国へ提供する価値を減じている。
国岡鐵造が闘った実話に、実話だからこその緊張感がページをめくるスピードをどんどん速めていった。
ページをめくるスピードはどんどん速まるが、伝えていく想いはゆっくりと私の心に刻まれていく。
国岡鐵造をただ信じきった日田さんの器の大きさ、その魅力に取り憑かれる。
そして日田の最後の言葉を聞いた時に駆け巡ったであろう国岡の胸中を想像すると、自らの胸をも痛めた。
あー、なんて遠いところまで連れてきてしまったのだろう。
あー、なんて遠いところまで見つめていてくれたのだろう。
人を育てる素晴らしさが胸に満ちた。
そして、ユキ。
国岡の最初の妻だった人。
この人の物語。妻だった人への想いが綴られる箇所は短い。
短いが深く染み入るものがあった。
本書は壊滅的な境遇、私利を追求する敵を打破していった成功譚だけの物語ではない。
「人」をみつめていく根源的なものを思い出せてくれる。
読んでよかった。 -
敗戦後、日本の石油エネルギーは、巨大石油資本「メジャー」に牛耳られ日系石油会社は次々とその傘下に入ることで生き延びる道を選択せざるを得なかった
そんな情勢の中、国岡商店はそれを断固拒否し、自らの力で、念願だった石油の輸入化に向かって、数々の妨害や中傷を克服し、一歩一歩前進していく様に何度となく胸が熱くなり、深い感動に包まれた
『日本人としての誇りと自信を持て』社員に向けて何度となく投げかけられた鐵造の言葉は、現代の日本人に対しても向けられている言葉ではないだろうか
国岡鐵造が店員5人からスタートした国岡商店
当時、石油を商品として扱うことは儲けに繋がらないとされていたにも関わらず、これから日本が世界と対等に渡り合っていく産業を起こすためには、石油なくしては成り立たないとの信念は、見事的中した
その先見の明にも驚く
日本は鐵造らの尽力により敗戦後わずか20年ほどで世界有数の国家となった
石油を扱った会社だけでなくこういった数々の先人の努力によって今の日本があるのだろうと思う
昭和44年83 歳となった鐵造が自分の人生を振り返るこんな一節があった
「日本のために生涯をかけて石油の供給に励み、戦後の日本の繁栄にも幾分かは貢献してきたという自負もある
しかし、石油は人々を本当に幸せにしたのだろうか。もしかしたら石油など手にしない方が幸せだったのではないだろうか」
まだ、この頃、地球環境破壊の問題は大きくなってはいなかっただろうに、いろいろ弊害が出てきていたのだろうか
自分が生涯をかけてきた事業にそんなことを思う鐵造の視野の広さや懐の深さに驚くとともに気の毒にもなった
上下巻とも感動の連続だった
何度となく鼻の奥がツーンと痛くなり目頭が熱くなった
表紙の写真も上・下の概要を象徴していて、意味深い
この本に出会えて本当に良かったと思った
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経営者だけでなく、人の上に立つ人には一読して頂きたい、本来の意味での自働化とは何か思い知らされる一冊でした。
店主の店員への気持ち、また店員の気持ちの一文、一文にいちいち感動して、ページをめくる毎に涙が止まりませんでした。
読んでいる間中、感動の嵐で涙が止まらず、家族には怪訝な顔をされましたが(^-^; -
思わず、ふわっとあくびがでそうになるのは
夢の話と
自慢話である。
出光興産の創始者
国岡てつぞう氏
の生涯は大波乱に満ちながらも
国内屈指の大きな会社にまで成長させたのだから
後世に生きる者への
夢物語としてでも
出世物語としてでも
いいはずなのに
全く違う。
むしろ(そんな物語なのか…)
と、ちら、と思いをよぎらせたりしたならば
どっかん!!!
と、でかい雷が落ちてくる事は必至。
(何を見聞きしていたんじゃ?!お前は一体何をっ!)
今の日本に彼の様な大和魂を持った豪傑はいないけど、
読後はしっかり守護神として心に鎮座して頂ける。
人生に迷った時、悩んだりした時は
「人を頼らず、自分の意志をつらぬけよ!」
と、
大きな声が聞こえてきそうだ。 -
出光興産創始者である出光佐三の生涯を描いた、歴史経済小説下巻。
民族経営を行う国岡商店に襲い掛かる外資の魔の手。その手を断ち切るためにてつぞうが求めた、一振りの太刀。
それが、巨大タンカー「日章丸」。
てつぞうは、この日章丸を用いて、アメリカや、メキシコの石油を輸入する。しかし、国際石油資本メジャーに南米を抑えられたてつぞう。彼の次なる地は、イランー。国有化したてのイランという国から、石油を輸入した始めて国が、この日本であったなんて。
こんなに、素晴らしい人たちが存在し、日本を造り、そして現在に導いてくれたことを、私は今までちっとも知らずにのうのうと生きてきた。なんということだ・・・
家族のために、店員のために、そして日本国民のために誰も成し得ていなかった新天地に足を踏み入れ、そのいばらの道を開拓し、後世の日本の地位をここまで上げた国岡さんを始めとする彼らに、心からありがとうを言いたい。
そして、私にも、この素晴らしい人たちと同じ血が流れていることを、心から誇りに思いたい。 -
僕は日本が大好きです。次生まれるとしても日本に生まれたい。
戦後の日本が戦争を乗り越えてきた人の目にどう映るかわ分からないけれど、過去何もない所からここまでの繁栄の礎を築いた先人たちの偉業は、これをいくら誇っても構わないと思います。僕らは最初から電気も食べ物もふんだんにあって、少なくとも餓えることは非常に少ない。そんな世界にしてくれたのは、この本に登場するような真剣にこの国を憂い、前進させてきた人々です。
この本では主人公である田岡鐵三と彼を取り巻く世界情勢や人々の思惑が濃密にそして駆け足で描かれています。長い本ですが、この小説の長さ位では全てを網羅する事は難しかっただろうと思います。ひたすら正道を歩む為に、周りからは異端と評される人生。曲がらないという事がどれだけ難しいかという事が、文面からだけでもぐっと迫ってきて息苦しいようでした。史実を基にした日章丸事件は、ニュースに疎い僕は知らなかったので、手に汗握って読みました。ホント知らなくて良かった。これから読む人も色々情報入れないでそのまま読むことをお勧めします。
恩人や部下たちへの深い愛情。世の中に恥じる事が無いという信念から発する高潔な魂。そして何よりも、日本の為、ひいては世界中の正しい道を歩もうとする人々の為に邁進する姿からは目が離せませんでした。学ぶとしたら強引な手腕ではなく「愛」ではないでしょうか。
さて、上巻でも言いましたが、この本はモデルになった出光社長の一代記であって、参考にするべきビジネスサンプルではありません。どう考えても博打的要素が強いし、これをみんなやり始めたらとんでもない事になるでしょう。しかも田岡商店以外が物凄く鈍重で能無しのように読めますが、実際は田岡商店の方が特殊であると思います。そう思うと、特殊なヒーローとして羨望はするけれど、日本人としての誇りの拠り所ではないだろうなと思います。何しろ足引っ張っている一番の原因は日本の政府と同業者ですからね。
ちなみに話は逸れますが、最近の誤りを一斉に集中砲火で糾弾して、その時の状況や情状に耳を傾けず、ひたすら謝罪だけを要求する今の日本社会の中では、こういう身を捨ててチャレンジする梟雄は立ちえないでしょう。この頃のマスコミは個人個人の主張が有りながら報道していたんでしょうね。今は責めるとなったら全員で責める、徹底的に人生がが破壊されるまで責めつづける。政治家や企業家がチャレンジして失敗して這い上がるなんて無理な窮屈な社会です。上がやり直し効かないんだから、末端は推して知るべしですね。
最後に描かれる元妻ユキへの回想は必要だったのだろうかと思った。自分が実際の家族だったら僕には正視に耐えない。