まるまるの毬

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062189903

感想・レビュー・書評

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  • 好きですねぇ。大好きです。初めて西條奈加さんの作品を読みましたがとても幸せな気持ちにさせてくれる話でした。

    諸国の菓子屋で修行したのち、江戸で南星屋を開いた治兵衛とその娘お永、お永の子供のお君と、治兵衛を幼き頃から支えてきた弟の石海。
    家族の愛や人情だけではなく、菓子作りの言葉の美しさには惚れました。当時の日本の春夏秋冬それぞれの情景が浮かぶようで、日本語ってとても美しいですね。
    カスドース、若みどり、まるまるの毬、大鶉、梅枝、松の風、南天月と七話それぞれの落ちが落語のさげみたいでとても気分がいい!


  • 和菓子屋「南星屋」を舞台にした時代小説。
    治兵衛の実直な人柄が、お菓子や商いのやり方にも反映されていて気持ちよく読めた。
    幼少期を過ごした岡本家での五郎とのエピソードや、その後の関係性もすごくいいなと思った。
    和菓子って名前や使われている素材に季節感や想いが詰まっていて、それ自体が物語になるなとも思った。

  • 「お君ちゃん、今日の菓子は何だい?」
    麹町六丁目裏通りにある南星屋の朝は、開店を待ち侘び並んだ客のこの言葉で始まる

    店の看板商品はなく、全国を菓子行脚して習得した各地の銘菓2〜3品をその日の仕入れ具合や天候・気分で見繕い商う
    江戸に居ながらにして、全国各地の銘菓がお手頃価格で味わえるまさに庶民の味方ともいうべき店だ

    この店を営む治兵衛とその娘お永、孫お君、時折顔を見せ、3人を支える弟の五郎(石海)
    3人の人間性がとてもいい
    それぞれがそれぞれを気遣いあっている

    店主治兵衛の驚くべき出自により、思わぬ苦境に立たされるが、家族の強い絆で見事に乗り切る

    各章のタイトルにもなっている銘菓の名前も興味深い
    季節感に溢れていたり、洒落が効いていたり・・・
    日本人の心の豊かさまで感じられる

    南星屋独自の『南天月』も発売され、
    まずはめでたしめでたし

    次巻では、どんな銘菓が登場するのか楽しみだ


  • 江戸の町を舞台に、お菓子屋を営む主人公が、家族と共に災難を乗り越えていく連作短編集。
    お互いを思いやりながら、自分より相手を優先させる姿が描かれていて温かい気持ちになった。一生懸命で真っ直ぐな主人公も、豪快で頼りになる弟も、可愛らしい孫娘も、魅力的でいいキャラクターだった。読み終わったあとは、和菓子が食べたくなった。

    タイトルになっている まるまるの毬 が心に残った。自分の気持ちを押し殺して、周りに求められる自分を演じていても、いつか抑えきれなくなる。嫌な気持ちも相手にうまく伝えられるようにしなくては。

  • 新しく読み始めた時代小説。これを含めて3冊のシリーズ既刊が出ている。Amazonのおすすめ欄に出てきて、珍しく釣られて読んでしまった。いわゆる『ジャケ買い』ならぬ『ジャケ読み』。表紙には、中からあんこをのぞかせている大判焼き。すごく美味しそうで、題字にも趣があって。ひと目で読みたいと思った。果たせるかな実際面白く、おいしいご本だったから。第一印象ってすごい。

    南星屋治兵衛は、麹町のちいさな菓子屋の主。諸国をめぐって珍しい菓子を習い覚え、それを再現しては江戸の人々に商いをする、一風変わった菓子職人でもある。この治兵衛、もとは武家の倅で、由あって家を出て菓子の道を志した。今は娘のお永と、孫のお君が店をもり立ててくれ、立派な町人として生きている。そんな筋立て。

    皆さんがすでにたくさんレビューされているとおり、お菓子の知識や作る場面、物語の筋がお菓子で大きく動く部分は、本当に味が想像されて、なんとも美味しそう。

    でも、本当の読みどころは、そこではない。小説としてはほろ苦い部類に入ると思う。治兵衛が家を出た事情は、物語であらばこそ成立する。そんな事情であるが、それが引き起こす出来事は、とても現実的でせつない。

    出てくる人物が’、地に足をつけて描かれているだけに、今後が気にかかって2冊めを読み始める。そういうお話だ。ただのハッピーエンドにだって出来ただろうに。並の作家さんでは、こうはしないだろう。これからどうなるのだろう。

    また、治兵衛の兄、位の高い僧、石海とのやり取りの豪放磊落と、情の細やかさ、浅見光彦ばりの兄の影響力は、微笑ましくも楽しい。上に挙げたようなほろ苦さと、人気エンタテイメントにつきものの『読者と作者の間で共有された』お約束があるのも楽しい。

    時代小説はどんどんいいものが出てくる。まことに底力のあるジャンルで’ある。次もおいしそうな表紙が待っている。読まなくちゃね。

    • workmaさん
      瑠璃花@紫苑さん

      こんにちは。
      時代小説、古く感じる人もいるかもしれませんが、よく読むと、現代と違う人情や、現代と共通する人情や時代背景な...
      瑠璃花@紫苑さん

      こんにちは。
      時代小説、古く感じる人もいるかもしれませんが、よく読むと、現代と違う人情や、現代と共通する人情や時代背景など…いろいろあって、いいですよね(^^)。時代小説に興味を持っていらっしゃるようなので、コメントさせていただきましたm(_ _)m
      2024/01/03
    • 瑠璃花@紫苑さん
      workma様へ

      こんにちは。コメントありがとうございました。
      時代小説って、読者の年代や経験の差を超えて、私達の何か共通の人情や優...
      workma様へ

      こんにちは。コメントありがとうございました。
      時代小説って、読者の年代や経験の差を超えて、私達の何か共通の人情や優しさ、ふとした寂しさに触れてくると思います。良いですよね。最初に好きになったのは宇江佐真理さん。それから藤沢周平さん、池波正太郎さんも好きで…。忘れちゃいけない司馬遼太郎さんも(^^)
      このシリーズは美味しそうなお菓子も見どころで、和菓子好きにはそれも楽しいです。workma様は、どんな作品がお好きでしょうか。お揃いだったり、私の知らない作品も教えて頂ければ嬉しいです。
      2024/01/07
    • workmaさん
      時代小説、最近の作者では、
      浅井まかてさん。
      『眩』…葛飾北斎と娘、絵師親子の話。
      『類』…森鴎外の末子、類の人生。
      有名人の子どもの話は興...
      時代小説、最近の作者では、
      浅井まかてさん。
      『眩』…葛飾北斎と娘、絵師親子の話。
      『類』…森鴎外の末子、類の人生。
      有名人の子どもの話は興味深くおもしろかったです。

      宇江佐真理さん
      『髪結い伊三次シリーズ』お文さんとの恋愛・人情・仕事、おもしろかったです。

      高田郁さん。
      澪つくし料理帳シリーズ、料理・修行・人情、魅力的。

      畠中恵さん『しゃばけ』シリーズも、病弱な若だんなとあやかしたちの江戸物話。ほのぼのしてて気楽に読めます。

      10〜20代は、司馬遼太郎『項羽と劉邦』『竜馬がゆく』『坂の上の雲』に熱中しましたが、最近では、突然出てくる作者の思考饒舌に胃もたれするので読まなくなりました。そこが魅力なのだろうと思うけど、合う合わないありますね、お好きな方ごめんなさいm(_ _;)m

      藤沢周平は
      『橋ものがたり』が特に気に入ってます。市井の人情、人間のどうしようもない業や、さがに惹かれるようです。
      池波正太郎さん
      『幕末新選組』『散歩のときなにか食べたくなって…』などエッセー、おいしそうな食べ物の話を読むと楽しくなります。

      書いていると、最近では英雄よりも、名もなき民草の話が好きなんだな…と、気づくことができました。おかげさまです、ありがとうございました(*^^*)
      2024/01/07
  • 少しでもおいしいと思ってもらえるお菓子をと、
    こつこつ商売している「南星屋」に次々とふりかかってくる困難。
    それでも家族皆、お互いを思い支えあって乗り越えていく。
    ほんわかと温かくやさしい気持ちになれるお話でした。
    こういうお話は大好きです。

    いつもまんまるい心でいられれば一番いいのにね。
    なかなか難しい…。

    和菓子食べたくなっちゃった~
    ぜひ続編を読みたいです!

  • 美味しそうな菓子に、人の温かい心がじんわりしみる良い話(*´-`)でも店主の治兵衛が将軍さまの血をひいているという事で、いろいろな災難が降りかかる(T-T)10歳の頃から武家を離れ、菓子職人として生きているのに、どこまでも血筋が追いかけてくるって辛いな(._.)食いしん坊で立派な寺の住職となった弟(石海)がいなかったら、治兵衛はどうなっていたことか…孫のお君の縁談は悲しい結果になってしまったけれど、菓子職人になるという新たな目標もでき、菓子屋「南星屋」独自の菓子も生まれ良い終わり方(^^)南天月ぜひ食べたい!近所にあったら、常連客になる事間違いなし♪

  • 南星屋のお菓子食べたい!
    和菓子好きにはたまらない小説。グルメ小説はやっぱり面白い。西條奈加さんの時代小説、はじめて読んだけれど読みやすかった!

    石海の説教に痺れる!
    「才ある者は、己の才のなさを誰よりもよく知っている。だからこそたゆまず努め、転んでも立ち上がり、時には這ってでも先へ行こうとする。世にいう天分とは、そのようなものだ。天狗になっているようでは進歩は望めず、ましてや詮なき愚痴をこぼしていては、地べたに座り込んで、いつまでものの字を書いているに等しい」

    最終章の「南天月」は切なくうるっときたけど、納得のラスト。その後が気になる〜。
    南星屋シリーズ2作目と最新刊の3作目は図書館で予約済み。早く読みたい!

  • 麹町の南星屋は、店主治兵衛・娘のお永・孫娘のお君の3人が営む菓子店。
    その店は、店を構えるまでは全国を渡り歩いて修行した主の憶えた、諸国の名物菓子を日替わりで売る、一風変わった店だった。

    江戸の菓子店を舞台にした連作短編集。
    身分を捨てて菓子職人となった治兵衛が、出生の秘密に関わる困難にあい、苦しみながらも、お永、お君、そして固い絆で結ばれた「弟」で僧侶の石海らに背を押され、ついに自分だけの創作菓子を作り出す。


    とにかく、菓子の描写が楽しく、美味しそうだったので、和菓子が食べたくなった。
    時代もので、料理人が登場するものはいくつもあるけれど、菓子職人というのは初めて。
    しかも、サクセスストーリーではなく、言ってみれば齢六十をこえたひとりの職人が、長い回り道をして屈託から自由になり、職人としてひとつ階段を上るまで…という物語。
    職人としての苦労話はなく、嫌な人物もひとりくらいしか出てこない幸せな世界だったので、さらっと読めた。

    それにしても、治兵衛がここに至ったのがもっと早かったらなぁ。もっと南星屋の菓子は、市井の人々を楽しませただろうにね。

    この作者の本は初めて読んだ。軽いけれど、軽薄ではないし、後味も悪くなかった。
    また読んでみようかな。

  • 江戸時代の和菓子屋を営む一家のお話。
    出てくる人がみんな素敵で奥深い。
    華やかではない
    豪勢でもない
    庶民の人々に寄り添い続けた昔ながらの和菓子の奥深さを感じる1冊。
    装幀もまた素敵。

    講談社  2014年
    装幀:鈴木久美  装画:彦坂木版工房

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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