まるまるの毬

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062189903

感想・レビュー・書評

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  • 武士から転身した変わり種、諸国の菓子に通ずる店の主・治兵衛。菓子のことなら何でもござれ、驚異の記憶力を持つ出戻り娘・お永。ただいま花嫁修業中!ご存じ、南星屋の“看板娘”・お君。親子三代で営む菓子舗「南星屋」。繁盛の理由は、ここでしか買えない日本全国、銘菓の数々。でもこの一家、実はある秘密を抱えていて…。思わず頬がおちる、読み味絶品の時代小説!

  •  お江戸を舞台に、とある秘密を抱えながらも身分を捨てて、小さな和菓子店「南星屋(なんぼしや)」をいとなむ菓子職人とその家族の心模様を描いた、「いとおかし」な連作短編集です。栄えある第36回吉川英治文学新人賞受賞作✧

     各話を彩る和菓子たちに象徴されるような、繊細な味わいを魅力とする読本です。人を見る目のあたたかさ、紡ぎ出される文章のやわらかさ。和紙の優美さにも似たイメージが心地よく、またたく間にこの本のとりこになりました。大切にしたくなるお話たちだと感じたのでした★

     ほんわか和む印象で完結している話も気持ちよく、このままの世界にも魅了されます。ただ、口当たりのいいことばかり書いているわけではなく、最後に明かされる思いがけないドラマにもグッと引き込まれます★

     突然ですが、お江戸の人情物……、この表現を見かけると、私は少しの警戒心をおぼえます。人情の機微を感じとるのは嫌ではないのだけれど、距離感が近すぎて甘ったるく、ベタベタした感じが出るものが不得手なのです★
     お菓子にしても、こってりした甘さを好む人もいれば、ほのかな甘味に惹かれる人もいることでしょう。
     本書からは、品のいい、淡い味がすると思います✧

     自分の愛読書を評価する人に、親しみがわくことがあります。しかし親近感と呼ぶのとは別の感情で、『まるまるの毬』の匙加減が好きな人を、私は好き。本書をそっと大切にしたい、雑に扱えないと言う人と、握手を交わしたいような気になるのです☆

     のちに、デビュー作『金春屋ゴメス』の豪快さに触れ、作者・西條奈加さんのレンジの広さを感じたことでも心が躍りました。これからも、あたらしい日本情緒がかよったこの著者の作品を、無条件で追いかけて読もうと決意!

     私は断然、西加奈子より西條奈加派です★(別にどちらかの「派」に属さなくてもいいのですが)(しかも、そんな「派」は存在しない)

  • 日本全国の名菓を、庶民が買える値段で提供する「南星屋」。
    主の治兵衛、出戻り娘のお永、孫娘のお君の一家が切り盛りする。
    元武士、治兵衛の出自の秘密が原因で、面倒事に巻き込まれたり、お永の元亭主が現れたりと事件が起きます。
    家族想いの言葉にほろりとさせられたり、お菓子の工夫でワクワクしたり、登場人物も魅力的で、とても楽しく読めました。
    ただ、お君ちゃんの縁談話の結末は悲しくて、幸せになる続編を是非読みたい!

  • 江戸の町屋の菓子屋を巡る時代小説。

    出だしは連作短編集かと思いましたが、意外な展開が待っていました。
    治兵衛の出生の秘密、娘のお永の失踪した夫の登場、孫娘のお君の恋愛が見事に絡んで単純な人情時代物とはなっていませんでした。
    弟の五郎(石海)をはじめとして善人、悪人の脇もしっかりしていて面白いです。
    もちろん、肝心なお菓子についても、江戸時代らしい蘊蓄など興味を引きます。
    ラストは
    元の鞘に納まってしまいますが、治兵衛とお店はもちろんお永やお君の行く末も気になりますので、続編希望です。

  • 和菓子屋「南星屋」を舞台にした、連作短編集。

    困難が降りかかったり、問題を抱えていても、治兵衛達家族がお互いを思いやる姿に、心が温かくなります。出てくるお菓子も美味しそう。

  • ある「ちょっとだけ訳あり」の
    菓子屋「南星屋」で巻き起こる様々な出来事。

    その訳ありがある種の強み。
    「所詮真似事」と治兵衛は言っていますが
    それでもおいしいものを作る心は
    さすがといえましょう。

    後半には暗雲が立ち込めます。
    南星屋の活躍を快く思わぬ人間が
    お君の縁談を壊す行動をとるからです。

    しかもその理由はクソみたいな嫉妬。
    確かにすべては壊れなかったけど
    大人の事情で縁談は壊れてしまった。

    ただし、彼女のような心を持っている子は
    武士の家には無理だった気がするのよ。
    何度も裾踏んで転んじゃうわよ。

  • 表紙の今川焼(?)に心を惹かれ、手に取った。
    和菓子が食べたくなる。

  • 同じ著者の「心淋し川」を読み、別の本もどの様な物語りを綴ってくれるのかと手に取りました。
    高田郁の「澪つくし」や「あきない世傳」にも似た味わいの中に祖父と孫、祖父とその娘、祖父とその弟、その思いや心模様に共感しつつ、菓子職人や主人公の出自から巻き起こる騒ぎに味つけられた心温まる物語りに引き込まれ、また、和菓子を自分の口で味わっている様な心持ちにもなりながら、楽しい読書の時間を過ごすことが出来ました。

  • 2021.08.11

  • 真面目に生きているだけなのに、勝手に恨まれて家族を不幸にさせられる。理不尽な人生でも菓子を通してささやかな幸せを届ける。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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