あの日

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062200127

感想・レビュー・書評

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  • 前半は結構文章が稚拙というか科学者らしからぬ主観的な感想や子供っぽい表現が多く、著者が本当に悪気がなくスケープ・ゴートにされたことが真実としても大変伝わりづらく感じる。

    せっかく書籍化という形で世に発言できるのに大変もったいない。

    寝る間も惜しんで実験を続けたと何度も書く割には家にケーブルテレビを引いたり(見るんかい)、上司に指示されなかった実験を探求心のためこっそり進める割には『追実験すべきだと思ったが反対されたのでそういうものかと思いしなかった』みたいな(事件化する前なのでやろうと思えばやっても良かった時期)

    逆にそれを隠さないところに著者の素直さというか悪気のなさが伝わるんだがちょっとダブスタやん?とも感じる。

    ところが後半は文章が淡々としてきて内容もかなり同情でき、サスペンス展開の内容もあってすっげー面白い!

    別の人が書いたんかと思うくらいだが、ちょいちょい育ちの良い物言い(『お手紙』とか『お化粧』とか)が出てくるのでまあ本人かな。前半の『お母さんマウス』には失笑した。

    普段言うのは良いけど文章化するなよと。良くも悪くも裏表のないお嬢さんなんでしょうね。

  • STAP細胞の有無はともかくとして、マスコミの姿勢と権力者の保身の体質がよく伝わってくる。

  • 噂に違わず全体的に詩的で,情緒が前面に出ていて,こういうの読みなれてないのでふわふわした不思議な気持ちになってくる。
    章題も「ハシゴは外された」とか「業火」とか「戦えなかった。戦う術もなかった」とか。
    「第九章 私の心は正しくなかったのか」では,4/1の調査委員会報告を受けて,
    「専門家を名乗る人たちが生き生きとバッシングコメントをしていた」「ただただ涙がこぼれた。むせび泣くような体力はもう残っていなかった」p.165
    終始こんな感じで,どうも白けてしまう。
    笹井さんの言葉とされてるこれとか,直接話法で書かれてるけど著者フィルターが相当程度かかってるような気が…。
    「だから真の科学者は神の使徒なんだ。その美しい神の世界を人間にわかる言葉に翻訳するのが科学者の仕事なんだよ。神に仕える身として日々を過ごすんだよ。」p.135

  • 情緒的な文章の波。読み進めて行くうちにだんだんと「小保方ワールド」に取り込まれかけたが、読了後に残ったのは不信感だった。
    百歩譲って恣意的にデータ改ざんをしたのでないにしてもやはりデータによる裏付けの重要性を理解できてなかったことになる。
    また例の「200回」については本書で200回キメラマウスまで作ったように誤解されたとあるが、では結局何回できたのか。そこについては書かれていない。
    そもそも200回ってどこからでてきた数字なのか。手順どおりにやってできるなら、200回も繰り返しデータを出さずとも、極端な話、5回でも10回でも良いのでは?
    ハーバードに行く経緯にしても、STAP細胞の発表にしても、書かれている事をそのまま受け取るなら余りにも本人も周囲も曖昧であり密室的で、どのみちおかしな話。
    味方になってくれた人には申し訳ない気持ちを表し、そうじゃない人をやり玉にあげる。いったいこの本は誰のために書いたのだろうか。

    ある一人の人物のこれまでの生き様としては「色々経験をされましたね、お疲れ様。一日も早く健康を取り戻しこれからの人生を大切に」と願うが、ある一人の化学者として、また社会人としては未熟であり(読む限り)結局自覚がないままなんだと残念に思った。
    またそしてそれを利用した周囲がいたのも事実で各々猛省は必要であろう。むろんそれに踊らされた我々も。

  • 読まずに批判するのも如何なものかと思ったので、読んでみました。

    最初の率直な感想は「ポエム」。既に取り消しにはなってしまっているが、嘗ては、博士号を持っていた人物の文章とは思えない、情緒的な文章である。自分が行ってきた実験に関しての説明も、理系であってもその分野を知らない素人や、そもそも全くの文系の人などを対象としたものとは思えず、わかりにくい。

    しかし、この本の対象が、この実験に関係していた人物たちを対象としていたものと考えると、この様な内容であることは理解できる。嘗て自分が行ってきた実験の内容を、あたかも時系列を追うがごとく、且つ、何をどう行ったかなどを細かく説明する事などは、まさにそう(嘗て実験と共に行ってきていたステークホルダーが対象)なのではないかと思えば、納得である。

    前半の(と言っていいだろう)、ハーバード大留学までの件は、時間が経っていることもあってか、自分の記憶を掘り起こして書かれたような雰囲気であり、抒情的ですら有る。しかし、理研に移り、今回の騒動の舞台となった若山研に参画したあたりから、比較的最近のことであり、またあまりにも強烈な体験で深く記憶に刻み込まれている事もあってか、文章に鋭さを帯びてくる。そしてそこには、当事者に寄る文章であるので、どこまで客観的に事実を記しているかは神のみぞ知るが、報道で伝えられていた事以外のことも記されている。

    著者は、正直わたしレベルの知識でも科学者としては未熟としか思えない。本当に博士号に値する人物なのかと言うと、はっきり言ってそれは疑問である。論文執筆における不注意さは、学部の学生実験以下である。しかしそれでも、著者が本書で記している後半の事柄が、事実なのであるとすれば、本書の著者の責任は免れるわけではないが、他にも責任を追うべき人物が居たのではないかと思わずにはいられない。

    日本の科学技術の発展のためにも、また、この事件の過程で世界的研究者の命が失われてしまったということにおいても、本当の真相が知りたいと思うのは、私だけでは無いと思う。それが明らかになる時が来るのかは・・・

    著者が科学者としては未熟で、世の中に騒動を巻き起こしてしまったのは、残念ながら取り消すことは出来ないが、それでも一人の人間としての尊厳を否定されて良い訳はない。著者が、いつの日か健康を取り戻し、元気になる日が来れば良いなと思った。

  • 研究者になりたかった小保方さん。研究者って、その研究対象が好きすぎて、寝食も身なりも忘れて、研究にゾッコンになるんだろうなと思っていた。小保方さんはすてきな研究者になりたかったようだ。だから、その世界の第一人者の方達に気に入られることが喜びだし、素敵なスーツでまた研究発表したいなと思うのだ。本当に研究が好きで大切にしていたら、博士論文やネイチャー論文などのここ一番の舞台でこのような凡ミスとも言えるような事態にはならないと思う。1度ならず2度も。真摯に受け止めている様子もない。これはミスで、論文の内容には影響がないと言っても、そんな大きなミスを犯す人の実験結果にも、やはりミスがあるのではという目が向けられてしまうのは当然だと思う。いろいろなことに巻き込まれたのも事実でしょうが、研究者として大切にすべき部分を、雑にしていたことも事実なのではないかと思った。マスコミの在り方はこの件に限らず間違っていると思うが、小保方さんの科学者、研究者としての在り方もなんだかなと思った。理系思考の人の文章ではないように感じた。

  • 今回の件は、若山教授が色々不正を働いたのではないかといった結論であった。
    ただ、小保方さんにもだいぶ、信じられないようなミスがある。
    真実は、どこにあるのか?
    若山さんの話しを聞かなければ分からないということのようだ。

  • 高校受験に挫折するものの、早稲田理工にAOで入学できてしまい、体育会ラクロス部で活動しつつもさらに進学し、そこから東京女子医科大やハーバードを経て理研でSTAP細胞の発表までのサクセスストーリーはあまりにもデキスギている。が、有力者に認められ支援も受けて地位を確保しているのだから、それなりに優秀ではあったのかなと思う。そしてそこからの転落。
    「捏造と改ざん」という調査委員会の結論に対し、「不必要な加工と取り違い」との反論。真相はわからないが、彼女を取り巻く人間模様は面白い。早々と逃げだし責任逃れしようとする者。騒動の責任者として彼女を支え続ける者。同情する者。非難する者。組織を守ろうとする者等々。そして執拗に追いかけるマスコミ。
    自殺者が出る騒動までなり、彼女もいろいろ辛かっただろうが、このような本を出して反論するのだからやはりタフだ。「自分は悪くない」というある種の鈍感力が彼女自身を支えているのだろうなと思う。

  • STAP細胞に関する一連の出来事を小保方晴子さん自身が書いた手記。
    STAP現象を発見し、ネイチャー誌などに論文を投稿した小保方さんらの研究者たちは論文掲載にはキメラマウスの作成が必要だと返信される。
    小保方さんたちは、他の研究施設では作れない細胞からもキメラマウスを作成できる技術を持つという理研の若山研究室に依頼するが・・・。
    若山研究室でのキメラマウス作成過程はブラックボックス化され、他研究者には確認取れないまま、STAP細胞のキメラマウス作成は成功し研究は進められていく。

    一連の報道をみていて、チームで行っている研究で若手研究者が指導教官のチェックイン無しに研究を進め、1人で捏造事件を起こすような事はありえないだろうという印象を持っていたが、この本の内容であれば納得できます。

    一連の報道やネットなんかを しょうもないなぁと思いながら見つつ、これを機にSTAP細胞の真偽が他研究者の論文の追試により明らかになっていく過程が世間に認知されれば良いかなと考えていたが、ヒステリックな世論はそんな余裕を与えなかったようでとても残念に感じた。

    地方議員やらゴーストライターやら都知事やら、昔から延々と続く誰かにバッシングしても良いフラグを立てて、狂ったように攻撃している(またはそれを見て喜ぶ)連中は、
    その攻撃対象に自分がなるかもしれない
    という想像力を ほんの少しでも持ってみるとよい。
    誰にでも起きうる事なのだから。

    小保方さんの博士論文のコピペの件についても、実際に査定が行われた論文と違い、製本に提出されたデータが古く画像が仮作成のものだったという点は大学側も認めているようなので、我々の情報のアップデートも必要ですね。

  • まずはよく書き上げて出版されたな、と思いましたね。
    これを書かなければ生きていけなかったのでしょうね、きっと。

    本書にでてくる名指しの記者2名、某新聞社と某テレビ局の。某テレビのスペシャル番組は見逃しましたが、某新聞記者の出版された著作は読みました。で、良く調べているな、わかりやすいなと思ったのを覚えています。

    そして、レビューには書かなかったけれどもその著作はすごく「若山教授寄り」に書かれているということをその時感じたことを覚えています。そちらを読むと若山教授は本騒動の被害者なのだなと誰でも思ってしまうことでしょう。私もうっかりそう思いかけました。
    でも私はそれに違和感を感じました。こういうことは所詮当事者でなければわからぬことだとその時思ったことでした。
    そもそも騒動中の記者会見で、まだ何も分からぬうちから若山さんばかりがいろいろ「逃げ」的発言を繰り返していること自体が私は「この人うさんくさい」と感じていました。

    で、本書です。当事者が書き上げた魂の一冊、でもこれもまた全部鵜呑みには出来ないだろうと思いました。
    ただ小保方さんや亡くなられた笹井さんがいかに追い詰められていったかということは如実にわかるので読んでいて苦しくなりました。
    本当であるか嘘であるかと言う前に、言い分を聞いてさえももらえず四面楚歌に追い込まれてゆくというのはどれ程の断絶だろうと思います。ご本人も苦しいでしょうがご家族も同じようにバッシングを受けているような気持ちでしたでしょうね。

    前半は研究者としての始まりから具体的な研究内容がかなりのページを割いて記載されています。
    専門的で素人にはわからないことも多いですが、そうとうわかりやすいように書かれていると思います。
    文章が上手、というか文学的才能もお持ちのように感じました。

    そして後半、海外の研究室や雑誌とのやり取り、所属する組織の中の思惑、関わる人間の思惑…寂聴さんとの対談も読みましたが確かに男の嫉妬もあるだろうなと思いました。思いましたが男の嫉妬とまとめるにはあまりにも複雑な状況です。
    騒動があそこまでになってしまうと言い方は悪いですがやはり見せしめ的に処分を出さなければ納まらなくなってしまったのでしょうね。
    しかし早稲田大学の対処がここに書かれた通りだったなら、私は早稲田大学に不信感を持ちますね。やりすぎているように思います。

    一番悪いのはマスコミでしょう。読んでいて虫唾が走りました。本書を読まなくても報道を見ていればやり過ぎているのはわかります。

    日本ではもう難しいから海外に行けばいいのに…と思いますがバカンティ先生は引退されたのでしたっけ。
    何とか研究者として復活できる道を見つけていただきたいですね。

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著者プロフィール

千葉県生まれ。早稲田大学、同大学大学院、東京女子医科大学先端生命科学研究所、ハーバード大学医学大学院、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)で研究に従事。2014年12月、理化学研究所を退職。著書に『あの日』がある。

「2018年 『小保方晴子日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小保方晴子の作品

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