新しいウイルス入門 (ブルーバックス)

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  • / ISBN・EAN: 9784062578011

感想・レビュー・書評

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    【書誌情報】
    製品名 新しいウイルス入門
    著者:武村 政春(タケムラ マサハル)
    発売日 2013年01月18日
    価格 定価 : 本体1,000円(税別)
    ISBN 978-4-06-257801-1
    通巻番号 1801
    判型 新書
    ページ数 240
    シリーズ ブルーバックス

     生物進化にウイルスが深く関わっていた?
     ウイルスのイメージは変わりつつある。ウイルスが生物のゲノムの中に入り込み、生物の進化にとって重要な役割を果たしてきたことが明らかになってきたからだ。
     さらに巨大ウイルスの発見で、ウイルス研究は新段階を迎えた。ウイルスとはどんな形をし、どんな種類があり、どんな働きをしているのか。
    インフルエンザやノロウイルスといった身近な存在に触れながら、新しいウイルス像を解説する。
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000194762


    【目次】
    はじめに(武村政春) [003-005]
    目次 [006-011]


    プロローグ 発見された巨大ウイルス 013


    第一章 生物に限りなく近い物質 19
    1-1 ウイルスの形 020
      ウイルスは生物ではない?
      核酸
      タンパク質
      ウイルスの一般的な形と大きさ
    1-2 ウイルスの種類 033
      ウイルスの分類
      DNAウイルスとRNAウイルス
    1-3 ウイルスの生活 040
      ウイルスはどこにいるのか
      ウイルスもやっぱり水の中にいる
      “食べられて”生きていく生物


    第二章 ウイルスの生活環 49
    2-1 ウイルスの増殖 050
      六つのステップ
        ①吸着/②侵入/③脱殻/④合成/⑤成熟/⑥放出
      ウイルスは潜伏する
    2-2 ウイルスと「セントラルドグマ」 066
      DNAとRNA
        ①DNA/②RNA
      セントラルドグマ
        ①転写/②翻訳
      ウイルスとセントラルドグマ
        ①DNAウイルスの「合成」/②RNAウイルスの「合成」

    コラム1 役に立つウイルスたち(その1) 〜医療分野で用いられるウイルス〜 080
      遺伝子治療
      ワクチン


    第三章 ウイルスはどう病気を起こすのか 083
    3-1 ポックスウイルスと天然痘 084
      ジェンナーと種痘
      ポックスウイルスの構造と種類
      天然痘とその発症メカニズム
    3 - 2 風邪のウイルスたち 092
      やぶ医者と風邪
      ピコルナウイルスの構造
      ピコルナウイルスの“悪さ”
      ライノウイルスの感染と風邪の症状
      胃腸炎とノロウイルス
      占いよりも信憑性の高い話〜ノロウイルスと血液型〜
    3-3 インフルエンザウイルスと突然変異 104
      インフルエンザウイルスにはタイプがある
      インフルエンザウイルスの「亜型」
      パンデミック(世界的大流行)とエピデミック(小規模な流行)
      インフルエンザウイルスの構造
      インフルエンザウイルスの生活環と病原性
      インフルエンザウイルスと突然変異 〜修復されないミスコピー〜
      インフルエンザウイルスと突然変異 〜組み合わせが変わる〜
    3-4 エイズウイルス、そしてエマージングウイルス 121
      ヒトT細胞白血病ウイルス
      ヒト免疫不全ウイルス
      エマージングウイルスとは何か
      さまざまなエマージングウイルス
      ウイルスは生物とともにある

    コラム2 役に立つウイルスたち(その2) 〜工業分野で用いられるウイルス〜 137


    第四章 ウイルスは生物進化に関わったのか 139
    4-1 哺乳類の進化におけるウイルスの役割 140
      生物の進化とトランスポゾン
      レトロウイルスから遺伝子への進化
      胎盤
      胎盤の形成に関わる遺伝子
      生物進化に関わったウイルス


    第五章 ウイルスの起源 153
    5-1 ウイルスはどう誕生したか 154
      もともとは細胞だったという仮説
      細胞内の自己複製分子がウイルスになったという仮説
      細胞とは別個に誕生したという仮説


    第六章 巨大ウイルスの波紋 163
    6-1 生物により近いウイルス 164
      巨大ウイルスの“先駆者”クロレラウイルス
      ミミウイルス
      ミミウイルスの構造
      ヴァイロファージ


    第七章 ウイルスによる核形成仮説 177
    7-1 ウイルス工場と細胞核 178
      ウイルス工場とは
      第二の核
      DNAポリメラーゼの分子系統樹
      DNAボリメラーゼαは“共生”したウイルス由来か
      ウイルスによる核形成仮説
    7-2 細胞核とDNAウイルス 188
      細胞核とDNAウイルスの共通点
      ウイルス的な細胞核


    エピローグ 結局、ウイルスとは何なのか 195
      さらに巨大なウイルスの発見
      ウイルスと生物との境界線はなくなるかもしれない
      ウイルス粒子と生殖細胞
      生物の本当の姿、ウイルスの本当の姿
      ウイルスが生きる世界と、生物が生きる世界

    役に立つウイルスたち(その3) 〜食品分野で用いられるウイルス〜 212


    おわりに(二〇一二年 冬 東京・神楽坂にて 武村 政春) [216-219]
    参考図書 [220-223]
    さくいん [224-228]



    著者:武村 政春[たけむら・まさはる] (1969-) 生物教育学、分子生物学、複製論。
    カバー装幀:芦澤泰偉・児崎雅淑
    目次・章扉デザイン:中山康子
    本文イラスト:永美ハルオ
    カバー・本文写真:PPS(図1、図18〜21、図23〜24、図30〜32、図40)
    本文図版:さくら工芸社

  • (特集:「感染症」)
    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00523708

  •  本書を読めば,私たちが持っている〈ウイルスに対する構え方〉が変化するだろう。〈感染症の原因〉〈諸悪の根源〉のようなウイルスのイメージは,ウイルスの一面しか知らないことから引き出されていることを教えてくれた。

     そもそも,私たちのまわりにはじつに多くのウイルスが存在しているらしい。本書の紹介によると「天然の水の中に,1mLあたりおよそ2億5000万個のウイルスがいる場合がある(海水中には約500万個から1500万個)」という。これは大変だ。がしかし,著者は,視点を変えるとこの数はたいしたことがないとも言っている。たとえば,人間の血液中にある赤血球の数は,1mLあたり40億個も含まれているらしい。「これに比べれば,海水中のウイルスの量など微々たるものだ」となる。

     ウイルスの型わけなども分かりやすく説明してくれている。なるほど,ウイルスの世界にもこんな分類ができるんだなとかしこくなった気がする。今話題のコロナウイルスは,RNAウイルス→1本鎖RNA→コロナ(脊椎動物が宿主)→コロナ→(SARS,新型コロナ)となる。インフルエンザは,RNAウイルス→1本鎖RNA→オルスミクソ(脊椎動物が宿主)→インフルエンザ→インフルエンザ。
     鳥インフルエンザとかトンコレラなどといって騒いでいる時期もあったけど,そもそもウイルスは,もともと細菌・植物・昆虫・脊椎動物など,いろんな宿主に感染しているんだと知っていれば,「それがなぜ人間に…」と考えることもできる。そうすれば,これまでいなかった場所にクマが出てくる現象とつながってくるような気してくる。そもそも,人間の生活を省みる必要はないのか…と。

     新型コロナのように,ときにパンデミックを引き起こすウイルスたちは,人間の細胞の中に入り,細胞が持っているコピー機能を使って自らのコピーを作り瞬く間に増殖する。こうなってくると,ウイルスは「やっつける相手」としか感じられないし,そのときはそれでいいのだとは思う。

     しかし,こういう流行をきっかけに,いったいウイルスとは何なのか。なぜ,生物が持っているDNAやRNAを持っているのか。そもそも,生物の細胞の中のDNAやRNAとどこが違うのか…いろいろと気になってくるのも仕方ない。そして,その振る舞いを見るにつけ,生命の基本の部分にウイルスがいるのではないかとも思えてくる。
     この辺りに興味がある人は,是非,本書を手に取って読んで欲しい。
     ところどころ,ユーモアのある表現もあって,難解な内容を説明しているわりにはとっつきやすいと思う。
     

  • まずこのご時世ウイルスが人工に膾炙しているわりに、自分がほとんどウイルスについて知らなかったのでこの本を手に取った。内容は、生物学を全く知らない人には読みづらいかもしれないが非常に面白いものだった。
    ウイルスの構造、生活環、多様性や生物との違いなどしっかり学ぶと似て非なるものが多々あり非常に興味深く感じた。個人的に学びとなったのは、哺乳類の胎盤はもともとウイルス由来の遺伝子によって作られるものであること、ウイルスの起源の仮説、多細胞生物の本当の姿の考察、また食品添加物にウイルスが利用されていることなどである。ウイルスを悪者のようには思えなくなりそうだ。

  • 新型コロナの影響?で、ウイルスに関する本を読むようになりました。
    単なる病原体

  • ウイルスについて何も知らなかったのでいろんな新発見があっておもしろかった。そもそもウイルスって分類すると生物じゃないのね。そんなことも知らなかった。私たち真核生物の細胞の中にある細胞核って、もしかしたら太古に感染したウイルスかも?っとかいう説にもドキドキする。恐ろしいことに、この本読んでたらウイルスに感染して風邪をひいてしまった。まるで呪いのビデオのような感染コードがどこかに隠されています。ウイルス恐るべし。

  • 核酸(DNAあるいはRNA)を持つが細胞膜は持たない。自己複製能を持つが、単独では生きていけない。ウイルスは「限りなく生物に近い物質」と見なされているそうだ。しかしウイルスが生物か否かは定義上の問題であって、本質的な問題ではないと思う。生命の起源が自己複製能を持った有機物だったとすると、それはまだ現代の定義で生物と呼べるものではなかったであろう。結局、生物は無生物から進化してきたのだ。そして生物進化のかなり初期の段階で支流となったウイルスは、その寄生性から生物進化に大きな影響を与えながら、受けながら、今に至るのだろう。

    プロローグ  発見された巨大ウイルス
    第一章 生物に限りなく近い物質
    第二章 ウイルスの生活環
    第三章 ウイルスはどう病気を起こすのか
    第四章 ウイルスは生物進化に関わったのか
    第五章 ウイルスの起源
    第六章 巨大ウイルスの波紋
    第七章 ウイルスによる核形成仮説
    エピローグ 結局、ウイルスとは何なのか

  • 面白かった。ウイルスに関しての入門書的な。それぞれのテーマに深入りはせずに、網羅した感じ。しかし最後には、最新のトピックであると思われる、細胞核ウイルス起源説ウイルスについて触れられる。どうやら著者もその仮説の提唱に関わった第一人者である、との記述もある。

    ウイルスは生命ではなく、物質であるが、核酸を持っていたり非常に複雑な動きをするために、単なる物質とも言えないというモヤモヤがあったが、ウイルスはどうやら生命(の少なくとも一部)の起源となったようだ、という話が出てくる。これは非常に興味深い。これからどう流れていくのか、ことの次第によっては、ご先祖様が空気中に溢れている、と認識する日がくるのかもしれない。

  • 進化にもかかわるウイルス

  • 巨大ウイルスの発見で、ウイルス研究は新段階を迎えた。ウイルスとはどんな形をし、どんな種類があり、どんな働きをしているのか。

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著者プロフィール

武村政春(たけむら・まさはる)
東京理科大学教授。
巨大ウイルスの生態と進化にオタク的興味をもつ。
真核生物の起源にも多大なる興味。
現在は筋肉(筋トレは趣味ではなく、そのための単なる方法に過ぎない)にも大いなる興味をもっている。
もともとの専門は生化学とか分子生物学とか。
2001年細胞核ウイルス起源説を提唱。
2019年メドゥーサウイルスを発見。
出身は三重県津市。
1998年名古屋大学大学院医学研究科修了。
博士(医学)。

「2022年 『ウイルスの進化史を考える ~「巨大ウイルス」研究者がエヴィデンスを基に妄想ばなしを語ってみた~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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