新しいウイルス入門 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578011

感想・レビュー・書評

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  • ウイルスの基本的な構造・生活環、ウイルスによって病気が起こる仕組みから、ウイルスの起源と生物進化との関わりについての最先端の研究の知見まで、薄いわりに内容のぎゅっとつまった本。DNAとRNAの違いやセントラルドグマなど、基本的な話から始めてくれるので、初心者にもおすすめ。

    「ウイルスは生物ではない!」なんて思っていたが、いよいよそんなことも言ってられなくなってきた。ホットで興味深い話題がたくさん!もっと詳しく知りたい。

    ・ノロウイルスの感染と血液型には関連がある?
    ・タバコモザイクウイルスの内部の細長い空間を使ってナノマシンをつくる試み
    ・私たちヒトゲノムのおよそ半分に、ウイルス由来の塩基配列がある!
    ・有胎盤類の胎盤形成に関わる遺伝子が、かつてレトロウイルスだったときのエンベロープ形成に関わる遺伝子に由来していた。(内在性レトロウイルス配列)
    ・最小の生物といわれるマイコプラズマを凌駕する大きさ、遺伝子の多さ、複雑さを持つ巨大ウイルス(ミミウイルス)の発見は、生物とウイルスの境界をより曖昧にさせた。
    ・ミミウイルスにくっついて一緒にアメーバに感染するウイルス、ヴァイロファージ
    ・真核生物の核形成は、DNAウイルス由来である?
    ・自身の2つの核のうちひとつを、まるでウイルスのように、ほかの紅藻の細胞に注入して寄生する紅藻がいる!

  • ウイルス学のここ20年分くらいを進化の側から書いたもの。感染症側からじゃないのが面白い。

  • ○人びとを苦しめ、時には死に追いやってしまうウイルス。ところが、その憎むべきウイルスの新しい姿が見直されつつあります。たとえば、ウイルスが、人間の進化の過程、哺乳類(哺乳類の有胎盤類)の胎盤形成に重要な影響を与えたということが最近になって明らかになってきたというのです。生物とウイルスの共生的な関係にも注目。

    ○生物に近いものの生物ではないとされるウイルスについてこう語るのは奇妙なことですが、ウイルスの世界がとても生き生きしているようにみえます。ウイルスが細胞の表面に吸着し、侵入し、自らのコピーを生産する過程をみると、宿主である生物の機能をいかにうまく利用しているかということに驚きます。

    ○とくに、不勉強なぼくには素朴な疑問が山積します。ウイルスはどうして細胞の表面に吸着できるのか。どうしてそんなへんてこな侵入方法があるのか(たとえば、バクテリオファージは吸着してから細胞内に自らのDNAを注入するといいますが、このイラストがまた面白いです。ぶちゅ, p. 53)。なにより、生物の細胞を巧みに「利用」するウイルスの話を読めば、ウイルスがどうしてこのような機能を持つに至ったのかということが気になるのは僕だけではないはずです。

    ○その答えは、結局のところ仮説でしかなくて解明されておらず、さらには巨大ウイルスという異物(比喩的にいえば、身長が12階建てのオフィスビル並みの人が発見されたというようなもの, p. 168)の存在が明らかになり、ウイルスの謎は深まるばかり。

    ○おすすめしたいのは中学生や高校生です。私たちの目に見えないほど小さな世界で、こんな複雑な世界が存在していると知ったら、こんなに楽しいことはないと思います。冗談も混ざっていて面白くもありながら、ウイルスに関する研究の最前線を紹介している欲張りな本だと思います。

  • ウイルスは、細胞に侵入しているときが本来の姿かもしれない、と書いてあり、「なるほど!」
    ウイルスに対する認識が一変しました。

  • ウィルスというと病原体という印象が強いが、ウィルス自身は環境に適応して存在・存続し続けようとしているだけであり、生物との共生関係にあったり、生物の進化に影響を及ぼしたと考えられるウィルスは、生物史や生物の存在にとって重要な役割を担っている、というのが著者の主張の骨子だと思う。
    そういう主張も新鮮ではあるが、ウィルスの構造や増殖の仕組みについての解説が面白かった。つまり、一般向けの本として、ウィルス自体についての基礎知識を与えてくれるという意味で、読んでよかった。特に、ウィルスが細胞に侵入する仕組みや、ウィルスに限らず遺伝子を発現させてタンパク室を作る仕組みは、コンパクトかつ詳しくまとまっていたと思う。
    もう少し生物や生化学について知りたくなった。

  • 『ウイルスと地球生命』(岩波科学ライブラリー)も読みたい。

  • ウイルスは生物ではないということになっているのだが、生物っぽい振る舞いもする。

    近年海水や淡水から光学顕微鏡でも見えるほどの巨大ウイルスが発見された。巨大ウイルスは生物により近い。

    インフルエンザウイルスの病原性の高さ低さは「開裂」という現象による。

    HA(ヘマグルチニン)の開裂は季節性インフルエンザでは上気道や消化管の持つ特殊なたんぱく質分解酵素でしか起こらないが、高病原性トリインフルエンザの場合全身のどんな細胞にも普遍的に存在するたんぱく質分解酵素によって開裂してしまうため全身症状があらわれてしまう。

    ウイルスが生物の進化に及ぼした影響
    胎盤の形成にかかわる遺伝子はウイルス由来。

    ヴァイロファージはウイルスにつくファージ。

    ウイルスによる核形成仮説。

    You Tubeで見られるセントラルドグマの動画は確かに新しいものの方がわかりやすい。

  • 「病原体」としてのウイルスの生活環や増殖の仕組を見た後、近年発見された巨大ウイルスを踏まえて、単なる「病原体」にとどまらないウイルスの役割や起源などの仮説を提示する。ウイルスの種類や仕組み、近年の知見などが軽い筆致で平易に記述された良書。

  • 買うまではあまり期待していなかったけど、期待していたよりも良かった。細胞核ウィルス起源説。

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著者プロフィール

武村政春(たけむら・まさはる)
東京理科大学教授。
巨大ウイルスの生態と進化にオタク的興味をもつ。
真核生物の起源にも多大なる興味。
現在は筋肉(筋トレは趣味ではなく、そのための単なる方法に過ぎない)にも大いなる興味をもっている。
もともとの専門は生化学とか分子生物学とか。
2001年細胞核ウイルス起源説を提唱。
2019年メドゥーサウイルスを発見。
出身は三重県津市。
1998年名古屋大学大学院医学研究科修了。
博士(医学)。

「2022年 『ウイルスの進化史を考える ~「巨大ウイルス」研究者がエヴィデンスを基に妄想ばなしを語ってみた~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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