- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062578110
作品紹介・あらすじ
栄養学の成立までには多くのドラマがあった。偏見と無理解に苦しみながら勇敢に戦った天才研究者たちのビタミン発見ほか偉業の歴史!
感想・レビュー・書評
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「食物に有毒な物質が含まれていれば病気になることは誰でも容易に理解できるが、食物中にごく微量の物質が欠けていても病気になることを人々に納得させる困難さは、現代のわれわれの想像をはるかに超えるものであった。」
栄養学の成立に至るまでの、関連分野も含めた学者達の苦闘の歴史が綴られている。
ノーベル賞が慎重になったのは、後に誤りと判明した理論に早々と受賞させてしまったケースが続いた事への反省だった、とか、
実践の学問として栄養学を化学から分離独立させようという動きが、世界に先駆けて日本で起こっていた、など、
色々と興味深い話が載っていた。
中でも自説を盲目的に信奉し、証拠が出ても他説を認めなかったり、意図的に無視したりなど、学者達のある意味人間らしいエピソードが満載で面白かった。
しかし、コッホやパスツールが病原菌を発見し感染症を次々と駆逐していった時代の熱狂は、どれ程のものだったのだろうか。
今では想像するしかないが、それは悪者を特定したという快感だったり、未知の領域を征服していく高揚感、また日本においては周回遅れの日本医学を世界レベルに引き上げたいという焦りも加わって、一大潮流となっていたのだと思う。
脚気細菌説に固執し、日露戦争で多大な犠牲を出す元凶となった森鴎外ら陸軍医官達に著者は厳しい評価を下しているが、彼らを単純に愚かだと嘲笑する気になれないのは、その思考回路に一定のシンパシーを感じてしまうからでもある。
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《教員オススメ本》
通常の配架場所:教員おすすめ図書コーナー(1階)
請求記号 408//B59//1811
【選書理由・おすすめコメント】
教科書に出てくる栄養素や体の仕組みが、いつ、どのように発見され、解明されてきたのかを知ることができる一冊です。研究者たちの命をかけた研究によって確立されてきた栄養学の歴史に目を向けることで、勉強がより一層面白くなると思います。(医療栄養・君羅好史先生先生) -
進化を極めたおどろきの臓器は、実は体外だった!年間1トンもの食物を消化・吸収し、たえず病原菌にさらされる「内なる外」の「腸」能力。
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第1章 栄養学の黎明期
第2章 「消化と吸収」をめぐる論争
第3章 病原菌なき難病
第4章 ビタミン発見をめぐるドラマ
第5章 エネルギー代謝解明をめぐるドラマ
第6章 栄養学と社会とのつながり -
いつも思うことだが人類の科学結果は素っ気ないこともあるが、その発見の歴史はいろいろな紆余曲折があり興味深い。
本書は、栄養学(一部は生化学となるが)の歴史を追いながら、今では当たり前になっていることがどのようにして発見・研究されたかわかる中で、意味づけがわかってくると思う。
内容は、1章が熱関係も含めた自然科学、2章が3大栄養素、3.4章がビタミンの発見史、5章が生化学としてクエン酸回路に至るまでの発見史(著者の専門に近いらしい)、6章が第二次世界大戦後の給食開始などのエピソードである。
試験のためだけだともったいないので、栄養素や仕組みを覚える前に本書のように歴史を知ったうえで学ぶと、頭に入りやすいのではないかと思った。