- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062645690
感想・レビュー・書評
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身の回りのあらゆるものが「消滅」してゆく島の物語。
読みながらジョージ・オーウェルの『一九八四年』を思い出しましたが、『一九八四年』と違ってこの物語の主人公の「わたし」はいきなり訪れる「消滅」を諦め受け入れていて、不満を抱いていない様子。「わたし」がR氏を匿ったように、記憶を失わない少数の人を「記憶狩り」から守ろうとする人はあっても、「消滅」に対する島民の反乱のような大きな動きもなく、社会的・政治的なニオイが全くしないとても静かな物語。
薔薇の消滅のシーンが象徴的ですが、「失う」ことの悲しみが美しく描かれているという意味で、耽美的な印象を受けました。
小説家の「わたし」が書く、言葉が話せなくなった別の「わたし」の物語が作中で同時進行しますが、どちらの物語も一人称で語られるのが印象的。言い換えれば、どちらも一人称で語るほかない物語、という気がしました。客観的な視点で語ることが難しいかなーと。
「わたし」が匿っていた、記憶を失くさないR氏が一人称で語ったらどんな物語になるだろう。と少し思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
つまらない本、悪い本だとは思わないし、読んでて退屈したわけでもないのだけれど、個人的に受け付けない本だった。
要するに、この小説のキモであるところの『消滅』という要素が、どうにも自分の中で腑に落ちず(実際、作中で『消滅』がどういうものなのかはかなりふわふわしている)、そこを了承させてもらえなかったのが大きいと思う。
もうそうするとこの小説の世界の住人になれないので、いろいろと小説のあらというか、不徹底なところが目についてしまう。ふわふわした幻想的な作品なのかと思いきや、ずいぶん読者をハラハラさせるエンタメに近い展開を持ってきたり、あからさまにナチスとユダヤ人の関係を示唆したり、この小説の目指しているところが僕には最後まで掴めなかった。残念。 -
今年の「ブッカー国際賞」の候補6作品に小川洋子さんの「密やかな結晶」が候補に入った、というニュースを読んで。
取っつきと着想は面白いと思ったんだが、、、。 -
あまりよくわからなかった。
文章はとても落ち着いていて、きれいだった。 -
博士の愛した数式が良すぎてこれは個人的に期待外れ。
ストーリーは面白いけど設定に無理がある気がする。
温かいような寂しいような不思議な気持ちになる。 -
小川洋子さんは好きな作家さんだが、これはそんなに好きじゃなかった。何と言うか、淡々とし過ぎていて静かで悲しい。
何かが消滅していく島で暮らす小説家の女性の話。そもそも『消滅』がキーワードなのだから晴れやかになるような内容じゃないことは明らかなのだが、それにしても "そういう終わり方なのかぁ・・・" とちょっと落ち込んでしまうような、私には後味があまり良くない話だった。 -
小川さんが間違えると、こうなってしまう。。残念。
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気の抜けたコーラ的な読後感。
文体や日常生活の描写は相変わらず素敵なんだが、主人公が消失に対して拒否感をもってないからか、怖くない。
小川洋子は「恐怖の美しさ」みたいのが好きなんだがなあ。
でもほのぼのしてる部分もあるんで、まったりしたい時は呼んでいいのかも。 -
おじいさんの描写などは秀逸だけれど、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドの世界観とかぶっていると思った。