火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735285

感想・レビュー・書評

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  • 坂上田村麻呂らへんの時代、朝廷が蝦夷の侵攻を始めた頃の物語。反逆者アテルイの物語。燃えがる蝦夷の歴史のはじまり。


     蝦夷の歴史の火種が黄金だったというところがね。金は人を変えてしまうのだ。朝廷が悪いというわけではない。その朝廷に阿った蝦夷の輩が蝦夷のバランスを崩していく。
     あくまで蝦夷で燃え上がった炎は、自分たちのうちから燃え出したものなんだな。

     しかし、戦闘のシーンは燃える展開で楽しいな。朝廷軍が敗れるのは小気味いい。

     あと日本人は昔から水攻めが好きだな。

     というか、水害が一番人にダメージを与えるのかもしれない。そう思った次第です。

  • ものすごく時間のかかってしまった読書。
    時は平安遷都の少し前。奈良に都があったころ。

    着々と地方を制定して勢力を拡大していた朝廷からも放っておかれていた辺境の土地。みちのく。
    そこに金山が発見されたことから、俄然朝廷の動きが慌ただしくなる。
    金に興味のない蝦夷たちは、放っておいてくれさえしたらよかったのだが、金も土地も全てを支配したがる朝廷と、対峙しなければならないことになってしまう。

    圧倒的な物量を誇る朝廷の大軍に対して、小競り合い程度の争いしかできない蝦夷たち。
    しかし部族ごとにバラバラに戦っていては、いつかは朝廷軍に飲みこまれてしまう。
    いくつもの部族を束ねたのは、まだ若いアテルイだった。

    歴史の結果はもうわかっているので、この戦いがどのように行われ、決着がついたのかを読むのはちょっとつらい。
    何しろアテルイはいい子なのだ。
    敵も味方も少ない犠牲ですますことは出来ないかと知恵を絞る。(実際に絞るのは副将の母礼)

    朝廷軍を翻弄するために行われるゲリラ戦。
    これはちょっと地形がわからないと読んでいてつらい。
    というわけで、国土地理院のホームページから地理院地図を開いて、北上川に沿って(作中は日高見川)地名と地形を確認。
    その上に空中写真を重ねて透過率50%で見ると、森や山は開発されているとしても割と戦術がわかりやすく、何よりなかなか楽しいので、すっかり読書の方がおろそかになってしまったのだ。

    倒叙ミステリのように、『なにをどうして』を楽しむのが歴史小説。
    坂上田村麻呂が出てくるまでは、朝廷軍の裏をかく蝦夷たちの闘いを楽しむことにした。

    ただ、金銭的な大部分を負担してくれた物部二風という人物。
    蘇我氏に敗れて朝廷に追われてきた物部氏という設定だけど、この時点では蘇我氏はもう朝廷にはいないし、物部氏がお金を持っているということは、蝦夷相手ではない金儲けをしているはずで、朝廷相手に戦う(背後に隠れているとはいえ)理由がちょっと弱いかな。

    下巻はつらい内容になりそうだけど、坂上田村麻呂がいい人そうなので、なんとか悲劇は最小限に抑えてほしいと思う。

  • 古代史のしかも蝦夷討伐なんて、どれほどの文献が残っているのかよくわからないけれど、時代考証とかどうなっているのか…と思いながら読んだ。すごくマッチョな価値観が透けてみえて、ちょっと引いてしまった。

  • 阿弖流為の生き様死に様に号泣してしまった…

  • 読んで良かった。

  • 20150920読了

  • これはアツい!!アツいぞ!!

    時は宝亀十一年(780年)、陸奥(みちのく)の蝦夷(えみし)たちが一丸となり、朝廷軍と戦った。その頃のお話。
    「蝦夷とはなんであるか。それを朝廷と蝦夷の双方に示すお覚悟かと」(p.26)
    「朝廷とは無縁の……対等の国になるでありましょう。」(p.30)
    「黄金や土地を守るだけの戦さであるなら俺も首を横に振る。しかし、蝦夷の心を守る戦さとなればこの身を捧げてもいい」(阿弖流為・胆沢)
    「朝廷軍は蝦夷を人と思うておるまい。それに対して我らは戦っている。なにも求めておらぬ。人として扱うなら従いもしよう」(飛良手・胆沢)
    「諦めさせるには五十年もかかる。敵は陸奥の黄金を断じて捨てはすまい。その間、いかに負けぬ戦さを重ねるかが我らの役目だ。喧嘩ではない。これからが知恵の見せ所ぞ。」(母礼・黒石)
    「互いに果てたときは、あの世で兄弟の契りを結ぼう。だが……まだ死ぬな。」(諸絞・和賀)
    「寄せ集めの朝廷軍になど負けはしない。蝦夷の強さはこの仲間の結束にこそある。」(p399)

    週刊少年ジャンプと大河ドラマの良いとこ取りをしたようなアツさと力強さとテンポの良さで、とにかく心がアツく燃える!!
    上巻は、歴史で習うワード「坂上田村麻呂、蝦夷討伐」の前夜編、と言ったところ。
    下巻も更にどきどき!

  • 宮沢賢治の生まれ育った町・岩手を含む東北地方に住む蝦夷たちの物語。
    自然が雄大だなぁ、と思う。

    歴史物は戦闘シーンが想像しにくくて読み飛ばしちゃうことがあったんだけど、これはすごく丁寧に書いてくれてるからじっくり読んでしまった。

    阿弖流為、母礼を始めとする蝦夷たちの友情は温かくて、阿弖流為と佳那、飛良手と滝名の恋愛は微笑ましくて、人間模様も素敵に描かれている。

    坂上田村麻呂の名前は(お、出てきましたな)って感じで登場してて、これからどうなるかは知ってても下巻が楽しみになる。

    こんな美しい東北に地震と津波があってから、そろそろ4年になるのだなぁ。

  • 人としての 尊厳のために 朝廷軍と戦う 阿弖流為たち 蝦夷のみなさん!!

    セリフがいちいちカッコいいです。下巻が楽しみ(*´ω`*)

    しかし 名前が難しかった!

  • 下巻に記載

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著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞、2000年『火怨』で吉川英治文学賞を受賞する。他の著書に『炎立つ』(全5巻)、『天を衝く』(全3巻)などがある。

「2009年 『To Tempt Heaven』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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