涙堂 琴女癸酉日記 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 271
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062750165

作品紹介・あらすじ

日本橋通油町(とおりあぶらちょう)を舞台の珠玉の6篇!

同心だった夫・高岡靫負(ゆきえ)はなぜ斬られたのか?蟠(わだかま)る疑問を胸に妻の琴は、侍を捨てて浮世絵師となった息子・賀太郎と日本橋通油町で同居を始める。幼なじみで医師の清順や汁粉屋の伊十と親しみ、移ろう江戸の風物に目を向けて筆を執るうちに、夫の死の謎が解けてきて……。名手が紡ぐ絶妙の連作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 武家物・市井物・人情物・ミステリー要素とおり混ざっていて、それでも読みやすいという作品。宇江佐真理さん、やはり素晴らしいです。

  •  高岡琴、北町奉行所の同心の妻として過ごし、夫の死後は通油町に居を移し、町家の暮しになじんだ。享年66。そんな琴の生涯を、宇江佐真理さんがあたたかい眼差しで描いた秀作です。「涙堂」、連作6話、2005.8発行。

  • 夫を斬殺されてしまった琴、末息子と長屋で一緒に暮らす。
    お武家の出身なのに、市井の人達と交わるうちにすっかり町人暮らしも板についてきた。
    夫が死ななければならなかった理由がわかり、下手人も裁きをうけ、末息子も所帯を持つ。
    琴の身の回りに起こる人情話が綴られる。
    この著者の作品は常に安定している。
    江戸のお話を読んでいるうちに、教科書で教わらなかった歴史が見えてくる。

  • 母親ってのは苦労が絶えないのよね。武家に生まれながらも絵師になった息子。その息子と同居するため長屋へ越してきたいわば奥様。武家の女性と庶民の視線と思いがうまい具合に混ぜ合わされて絶妙な塩梅。長屋で生活し、息子を心配しながら、突然殺されてしまったご主人の謎を家族総出で解いて行く。息子たちを気遣いながらも、妻として真相は知りたい。その板挟みな感情がうまく表現されていて、引込まれました。ミステリーというよりはそこは宇江佐さん、人情ほろり多め小説。なんでこうもその長屋にいるような気分が味わえるのかな。ステキだな。

  • 2016.11.13
    浮世絵師になった末子ははたち。20歳
    それ以外は同心だのなんだののお堅い仕事。武家らしく過ごす琴の変化は、夫が刀で殺害されたから。
    町人の町で暮らして人のつながりと時の流れがゆるやかに心を癒していく様子。
    なんだか琴になりきっていた私。
    悪巧みを暴いたのに、理不尽に泣く。
    悔しさを我慢するなか、報いを受けた張本人。伊十の言葉を噛みしめる琴。
    こつこつと真面目に生きていくことが、幸せな営みだと、あらためて気づいた。

  • 時代ものなんだけど、そう感じさせないところもあってよかった。

  • 日本橋通油町という地名を舞台にして60歳になろうとする後家・琴、その次男・浮世絵師の賀太郎を中心とする人情物です。琴と幼馴染の紙問屋・伝兵衛、医師・清順、汁粉屋・伊十、近所の民蔵夫妻たちのやりとりが楽しく、特に終盤の伊十の病死の場面ではしっとりした情緒も感じます。そして同心であった琴の夫の死の謎解き(賀太郎、長男・同心・健乃丞、3人の婿たちが真相解明に協力)。賀太郎の恋人・お冴の気風、清順の次女・若の派手な夫婦喧嘩、民蔵の下町言葉なども江戸の下町風物の美しさを引き立てています。主人公のお琴を始め、登場人物がどれも魅力的な人たちです。

  • 文庫本を図書館で見つけたので再読。
    すらりと読める連作短編集。
    通油町という味のある美しい町名を持つ場所を舞台に賑やかな住民が次々と登場する市井ものではあるが、主人公である琴の、夫の死の謎が物語に絡んでくるのでミステリでもある。
    宇江佐さんの物語は登場人物たちの会話が魅力的。

  • L
    琴、どこにでもいる武家の女房の姿なんだろうね。いや、物分り良すぎ?伊十の告白もたんたんと受け止めたじろぎもしない琴。伊十の気持ちをくんで再読したら面白いかも。やっぱり最後は生涯のまとめ。すっきりするような聞きたくないような。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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