- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062750165
作品紹介・あらすじ
日本橋通油町(とおりあぶらちょう)を舞台の珠玉の6篇!
同心だった夫・高岡靫負(ゆきえ)はなぜ斬られたのか?蟠(わだかま)る疑問を胸に妻の琴は、侍を捨てて浮世絵師となった息子・賀太郎と日本橋通油町で同居を始める。幼なじみで医師の清順や汁粉屋の伊十と親しみ、移ろう江戸の風物に目を向けて筆を執るうちに、夫の死の謎が解けてきて……。名手が紡ぐ絶妙の連作短篇集。
感想・レビュー・書評
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武家物・市井物・人情物・ミステリー要素とおり混ざっていて、それでも読みやすいという作品。宇江佐真理さん、やはり素晴らしいです。
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夫を斬殺されてしまった琴、末息子と長屋で一緒に暮らす。
お武家の出身なのに、市井の人達と交わるうちにすっかり町人暮らしも板についてきた。
夫が死ななければならなかった理由がわかり、下手人も裁きをうけ、末息子も所帯を持つ。
琴の身の回りに起こる人情話が綴られる。
この著者の作品は常に安定している。
江戸のお話を読んでいるうちに、教科書で教わらなかった歴史が見えてくる。 -
母親ってのは苦労が絶えないのよね。武家に生まれながらも絵師になった息子。その息子と同居するため長屋へ越してきたいわば奥様。武家の女性と庶民の視線と思いがうまい具合に混ぜ合わされて絶妙な塩梅。長屋で生活し、息子を心配しながら、突然殺されてしまったご主人の謎を家族総出で解いて行く。息子たちを気遣いながらも、妻として真相は知りたい。その板挟みな感情がうまく表現されていて、引込まれました。ミステリーというよりはそこは宇江佐さん、人情ほろり多め小説。なんでこうもその長屋にいるような気分が味わえるのかな。ステキだな。
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2016.11.13
浮世絵師になった末子ははたち。20歳
それ以外は同心だのなんだののお堅い仕事。武家らしく過ごす琴の変化は、夫が刀で殺害されたから。
町人の町で暮らして人のつながりと時の流れがゆるやかに心を癒していく様子。
なんだか琴になりきっていた私。
悪巧みを暴いたのに、理不尽に泣く。
悔しさを我慢するなか、報いを受けた張本人。伊十の言葉を噛みしめる琴。
こつこつと真面目に生きていくことが、幸せな営みだと、あらためて気づいた。 -
時代ものなんだけど、そう感じさせないところもあってよかった。
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文庫本を図書館で見つけたので再読。
すらりと読める連作短編集。
通油町という味のある美しい町名を持つ場所を舞台に賑やかな住民が次々と登場する市井ものではあるが、主人公である琴の、夫の死の謎が物語に絡んでくるのでミステリでもある。
宇江佐さんの物語は登場人物たちの会話が魅力的。 -
L
琴、どこにでもいる武家の女房の姿なんだろうね。いや、物分り良すぎ?伊十の告白もたんたんと受け止めたじろぎもしない琴。伊十の気持ちをくんで再読したら面白いかも。やっぱり最後は生涯のまとめ。すっきりするような聞きたくないような。