マドンナ (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062752633

感想・レビュー・書評

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  • 奥田英朗氏の描く家族と職場は
    喜怒哀楽も葛藤も衝突も瓦解も
    何もかもひっくるめて描かれているのが
    いっそ小気味よい。

    サラリーマンの不条理に
    ぐぅっと胸が苦しくなることもあれば
    妻の反駁に逆にスッとすることもあり。

    この社会の中で
    常識の枠組みから逸脱せぬように
    生きていこうとすれば直面するあらゆることが
    …つまりは半世紀以上生きてきた私が
    これまでに経験してきたことや
    現在進行形で直面している全てのことが
    この短編集を読めば
    一気に駆け抜けられるわけである。

    それなのに なぜか生きることに
    勇気を持てた。元気づけられた。

    ありがとう。

  • 口当たりが良くて、外れがない。そんな現代小説を読みたいなあ、と思ったので。
    奥田英朗さんのサラリーマン男性の哀感の喜劇集。となれば、大外れはありません。鉄板。

    そして、期待通りですね。
    「ガール」という短編集に似ています。ただし今回は、「オジサンたち」が主人公。

    そして、表題作を筆頭に、さすがの出来ですね。
    肩がこらずに読めて、アハハもクスリもあるけれど、苦みも絶望もちらっとあります。

    そして、会社の昭和な社風に何かと疲れている人は、共感や納得含めて面白いと思います。

    男性やらオジサンやら、という生態研究で言うと、女性が読んでも面白いのでは?(笑)

    ※一方で、ほぼほぼ狙いで「40代大きな会社の会社員、妻子持ち」というのが主人公なんですね。
    こまごましたズレはありますが、一応自分もそのものズバリ。
    そう考えると、会社と言う構造自体は確かに似ている気もするけれど、まあ、現状、不満を言ったらバチが当たるなあ、と思ったりしました…。

    大変な人は、もっと大変なんでしょうね。当たり前ですが。


    備忘録。

    ●「マドンナ」
    40台前半の課長さん。部下の若い女に片想いしちゃって、さあ大変。
    その上、奥さんにはバレバレで、どうにもみっともない。
    部下の男性も同じ女性に惚れていて、もうしっちゃかめっちゃか…。最後はめでたく失恋。
    文字通り、ほろ苦い「男はつらいよ・妻子ある課長さん編」という、くすくす笑える表題作。


    ●「ダンス」
    40台前半の課長さん。どうやらかなり昭和体育会な会社。
    部長は超日本型のつきあい至上主義。
    社内イベントの運動会で、どこまで部長におもねるか。
    部長に尻尾を振らないマイペースな同期社員と、「ダンサーになりたい」と言い出す高校生の息子がダブって見える。
    自由に生きてこなかった人は、自由に生きている人を憎む、みたいな、ある種のおとぎ話。


    ●「総務は女房」
    40台前半の課長さん。大きな商社で、営業の最前線でバリバリ活躍していた。
    出世コースのレールとして、一度、総務系の課の課長に。
    腰掛のつもりでいたけれど、細かいセコイ不正、出入り業者との癒着を目にして、改革に立ち上がる。
    同時に、一方で専業主婦を務めてきた奥さんには、何かと性格上の短所を指摘され…。
    徐々に、良いか悪いかはともかく、華やかならざる舞台で長く働いている立場の感情を理解するようになる。

    ●「ボス」
    40台前半の課長さん。次は部長だと思っていたら、なんと女性部長がやってくる。
    その女性部長が、仕事が出来る。結婚もして、子供もいる。
    昭和的だった社風を変えていく。社員旅行がなくなる。宴会が減る。残業が減る。若手と女子社員が喜ぶ。
    体育会系でやってきたのに、どうにも納得がいかない…。いろいろ妨害、嫌がらせをするけれど…。

    ●「パティオ」
    町おこし的に、商業施設に人を呼ぶ企画をしている主人公。
    人が少ないパティオでいつも読書している毅然とした老人男性が妙に気になる。
    群馬には母に先立たれて独りで父が暮らしている。
    老いた父への難しい感情と、だぶってみえるパティオの老人。
    同情するのも失礼だけど、交流してみたくなってしまう。

  • 40代ではないけど、読み終わってなんだかスッとした。
    特にパティオは良かったな(´-`)

  •  読んでも来週には忘れているはずの軽い小説。もう少し前の年齢なら、どきりとするだろうと思う場面と言葉が満載だ。嫌みが無く、無駄がなく、リズムがあり上手い。「いじめ」を扱った朝日の新聞小説は最後が?だったが、この短編の方が「!」。
     先週日曜の新聞書評で購入。各編ともドラマづくりの常道、おっと思う怒りや悲しみの山場が上手。「マドンナ」と「ボス」が面白かった。

  • 15年前の話だが、今も昔も40代のサラリーマンの苦労は同じ。40代のサラリーマンとして非常に共感出来た。

  • うーん表題作「マドンナ」、いろいろわかりすぎて赤面。誰だって人のこと好きになるよね。ただ妻側からの告白にはドキっとした。中年の葛藤に満ちた中編ばかり。ただみんな、悩みが罪が無いんだよね。

  • 奥田英朗の描くサラリーマン心理は、笑えると共に我が身を振り返るきっかけとなる。

    例えば表題作のように、気になる女性社員が現れたときに上司・同僚としていかに振る舞うか?ということ等、自分にも起こることとして考えさせられた。

  • サラリーマンの日常を描く短編集。かわいい部下やパワハラ上司、女上司など悩みは多いが、そこそこ楽しく生きていける。読みやすい一冊。

  • 社会人の事情の一部を垣間見た。

  • 作者が男性だなんて、信じられない!
    大人女子のテンパりや妬みやら、リアルな心の内があらわにされてます!
    それなのに、読んだ後は女子である自分に
    少し優しくなれる物語(^o^)

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著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2021年 『邪魔(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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