新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754019

感想・レビュー・書評

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  • 長宗我部盛親の物語。

    関ケ原では当初東軍に味方する予定も、使者が西軍の関所だったかな?を通ることができず、
    結局西軍に味方することになります。

    で、所領を没収されて一介の牢人になるわけですが、
    父元親と似て内省的な性格でとにかく自問自答が多い。
    「自分はそもそも大名に向いていなかったのではないか?」とか、
    林豪という坊さんに色々言われて、また考えます。

    それで夏の陣で大坂方に立ち、最後死力をつくして戦うことができ、物語は終わりました・・・

    これといった出来事がすくなく盛親の自問自答がメインなので、盛り上がりには欠けますね。
    読むなら「夏草の賦」に続けてがいいでしょうね。
    なんだかうまく書けませんが・・・

  • 長宗我部盛親。長宗我部の四男であり、土佐の英雄である父元親の影で、もしかして心ならずも、土佐藩主となり、時代の流れに呑まれて、一介の牢人となる。
    おもしろくもない人生であったろう。市井にある我々庶民と最も近い武将であったかもしれない。

  • 20190712

  • 2019/6/8読了。
    司馬遼太郎初期の作品。史実に基づいてはいるが、架空の人物が多く登場する等フィクション的な要素も多く、司馬作品には珍しいか?個人的に司馬作品ではフィクションよりも、深く時代考証されたリアルな話の方が好きなので、星4と評価。

  • 16/10/10読了

  • 1961年に発表された小説だそうです。2016年現在から振り返ると、なんと55年前...。
    歴史小説、時代小説、司馬遼太郎さんは、古くならなくてトクですね。

    文庫本1冊、500頁くらいの小説。
    主人公は長宗我部盛親さん、という人です。
    戦国時代に、四国の覇者となった長宗我部元親という人がいまして、その人の跡取り。息子さんです。
    ざっくり言うと、関ヶ原の直前に独裁者だった親父さんが亡くなってしまいまして、若くして土佐一国の領主になりました。
    だけど、お家騒動をばたばたしているうちに、関ヶ原の戦いで家康側に着くチャンスを逃してしまい。
    消去法でなんとなく石田三成一派に参加。
    戦闘に参加できないまま消化不良で関ヶ原の戦いが終わって、なんだかぐちゃぐちゃしているうちに負け組扱い。
    言ってみれば大企業の2代目独裁社長だったのに、すべて取り上げられて京都の郊外に「永年蟄居」。まあつまり終身刑。
    もんもんと10年以上、寺子屋の師匠などをして暮らして、大阪の陣がやってきます。
    徳川時代になって、リストラされちゃった「戦国野郎」たちが何十万と日本国中にいました。
    そういった「負け組になっちゃった、戦争の犬たち」が、最期の花を咲かそうと、大阪城に集まって家康を迎え撃つ。
    主人公の盛親さんも大阪城に入り、小戦闘や中規模戦闘で、ようやっと会心の勝利。
    なんだけど...結局最後は落城、恐らく討死。

    ...というのが大まかな流れです。

    読み易い、面白いです。
    司馬遼太郎さんの長編小説の系譜で言うと、

    「竜馬がゆく」「燃えよ剣」以前、初期に属します。
    初期の司馬さんらしい愉しさがあって、中盤で「監視者でもある女性との共同生活」というサスペンスフルな味わいの部分がコクがありました。なんだかヒッチコックみたいで。

    以下、ほんとに個人的なメモ。

    ##################

    個人的な、勝手な区分けですが、以下のように司馬さんの長編小説は分類しています。

    ①初期1959~1962「竜馬がゆく」「燃えよ剣」以前
    ===「梟の城」「風神の門」など。歴史を俯瞰する味わいよりも、忍者活劇や男女の色事描写も濃いめ。長くても文庫上下巻くらい。
    面白いと言えば面白いけれど、黄金期や円熟晩期の小説を好きになってしまうと、やや単純で物足りない。

    ②黄金期1963~1972「竜馬がゆく」「燃えよ剣」から「坂の上の雲」まで
    ===初期の娯楽性がえぐみが抜けてくる。歴史の俯瞰性や「司馬史観」と言われる切り取り方が前面に。源平、戦国、幕末の物語を語りつくす絶頂期。
    「竜馬がゆく」「燃えよ剣」の両金字塔を始め、「国盗り物語」「最後の将軍」「新史太閤記」「義経」「世に棲む日々」「花神」「関ヶ原」「城塞」「功名が辻」など、濃淡あっても外れ無し。
    NHK大河ドラマ原作モノも、この辺に集中。

    ③円熟晩期1973~1987「坂の上の雲」以降
    ===娯楽性がかなり後退。作品数、量産体制も一気に後退。長編モノの場合の、娯楽密度はかなり希薄に。「淡々とした」「淡い」という味わいのものが多くなる。
    個人的には「空海の風景」「ひとびとの跫音」なんかは絶品だと思います。でも「菜の花の沖」なんかは...面白くないと思います。
    (「項羽と劉邦」はこの時期の長編では、例外的に娯楽密度も濃厚な大傑作。中国史が舞台だから新鮮だったのか?)


    ################

    備忘メモとして、見どころと言うか読ませどころを。

    ●幼なじみとして育った家臣の桑名弥次兵衛との交情。
    とっても仲が良かったのだけど、「土佐の長宗我部解散」のときに、弥次兵衛さんは一族郎党の生活のために、主君について行けずに「藤堂藩」に再就職します。
    そして長い年月を経て、大阪の陣ではなんと敵味方に。
    直接対決せぬことを祈っていましたが、最期の最後の大戦闘で、目前の的になってしまう。
    弥次兵衛さんは、結局、自殺的に討死してしまう。
    このふたりの、いわゆる「男の友情ものがたり」が全体を貫きます。

    ●何と言ってもこの小説の異様な白眉は、お咲という女と、加東田という男。
    舞台は長い長い蟄居時代。
    どういうことかというと、京都の徳川役人の監視下で、「生きていることは許されている」というだけなんですね。
    牢屋に入っては居ないから、多少の外出は自由。
    でも、周辺の住民もみんな、京都の役人とつながっているから、自由があるようで、あまりない。なにかあれば、密告される。密告されれば、冤罪でも死罪になりかねない。
    稼ぎも無いから、暮らしもきつい。土佐から随行した家来2名とほそぼそ暮らす。
    そこに、お咲という女が、紹介でやってくる。
    このお咲が、ともあれ、京都の徳川役人からのスパイであることが分かる。
    そして、愛人というか、妻になってしまう。
    無下に断れない訳です。役人と繋がっているから。
    そして歳月とともに。
    このお咲が、とんでもない女で。
    もともと身分の低い娘なのに、居直ってくる。
    もう、役人と繋がっていることをあまり隠さない。それをちらつかせて恫喝する。脅迫する。
    それでいて、盛親の事実上の妻である。愛情などはない。でもお咲はかなり好色。
    盛親の家来ふたり、世が世なら家老クラスの年上の男たちに、下着を洗わせたりする。
    そして、徐々に、このお咲には裏に加東田という男がいる。徳川役人に雇われている、下等武士。すっぱ、らっぱ、忍びの者のたぐい。
    お咲は、この加東田の愛人で、加東田の女で、加東田の言いなり女であることが判ってくる。

    長宗我部盛親の立場は弱い。
    だんだん、頭に乗って、加東田も、盛親の住まいに出入するようになる。
    なんとも倒錯した異様な人間関係が、一見穏当な暮らしのなかに、ぐにぐにと入ってくる。

    この「お咲と加東田」のくだりは、なんだかそこだけ独立した読み物のように、異常な男女関係、権力関係のエンターテイメントの様相。
    気持ち悪くて面白い。

    最終的には、大阪城に入ることにした盛親が、ずばっと切り殺して溜飲が下ります。

    ##############

  • 長宗我部盛親のやりきれなさ。時代に遅れて登場する。

  • 長宗我部盛親とはどのような運命をたどった武将であったのか……そこがよく理解できる小説だった。
    関ヶ原後、隠遁とした浪人生活を送っていた武将たちは、皆、同じ気持ちで大阪に馳せ参じたのであろう。その中でも一国の主であったのは盛親だけだった。左衛門佐信繁(真田幸村)も、関ヶ原当時は父の安房守昌幸の時代であったため一国の主ではなかった。そう考えると土佐二十二万石の主であった長宗我部盛親という武将の生き様をみてみるのも楽しくなる。

  • 長曽我部盛親の話。

  • 長宗我部盛親の小説。可否・是非ではなく賭けるのが男だ!と。萌える。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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