プラネタリウムのふたご (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062755252

感想・レビュー・書評

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  • これどうやって終わるんだろう?と後半のかなり後の方まで思っていた。
    出来事というほどのことは起こらず、淡々と進んでいく話で、全体に静かで詩的なトーンで綺麗だけど、、、と思っていたら、いきなりそんな!

    ふたごの再会をみたかった。
    再会できていたら、互いの手品を、投影を、どう見ただろうか。
    酔って大きな玉に入って眠ってしまったとき、二度と会えないなんて、思わなかっただろう。
    いろんなことが、つながっていた。
    あたたかいけど、さみしい気持ちになる話だった。

  • ごめんなさい。終始話の内容が掴めなかった、、

    映像化すると面白いのだろうか。

    途中「い」の抜けたところがあったけどあれはなんだろう。

  • 童話のような、現実的な話のような、不思議な作品だった。

    栓抜きには幸せになってほしい。

  • 昔話のようなファンタジーのような世界で、銀髪の双子の成長を見守るお話。
    未熟で、破天荒な双子の行動に逐一ハラハラさせられ、一体どうなるんだろうと心配でページをめくらされました。
    読後は良い話だったと思う反面、もちろん展開が都合良すぎる点が多いです。でもあくまで童話だから、"騙されないと世界はかさっかさになってしまう"からきっと騙された方がいいんだなーと作者にしてやられたような気持ちになりました。

  •  村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』をもっと童話チックにした作品。だれかと一緒にだまされ同じ夢を見ることが、いかに人生を豊かでおもしろいものにするか、ということが手を変え品を変え実演される。手品に、まじない、言い伝え、それからもちろん小説も。目の見えない老女が家出した亭主の名をかたって書いた自分宛ての手紙を、その内実を察しながらも素知らぬふりして朗読をつづけるタットルや、「泣き男」がプラネタリウムに映してみせた見せかけの星に魅了される村の人たちや、タットル扮する熊をいつまでたっても撃ち逃してしまう猟師たちや、テンペルになりきったタットルに騙される「栓ぬき」とおなじように、一読者として私も存分にだまされ、そして楽しんだ。

  • プラネタリウムのようにゆっくりと回る世界で、優しい嘘、ときに必要な嘘と、それに騙されてやる才覚のある人達の優しいお話だと思った。
    人の名前がふたご以外出てこないのも、不思議な感じがして面白かった。

  • 20190828
    星の見えない村のプラネタリウムで拾われた双子。大きく別れた道の先で、二人がついた優しい嘘。
    世の中のいろいろなことに、裏やら種やらがあったりするものだし、ほとんどの人がそれを知っているから「騙される」のも才能。善意に気持ちよく騙されることが、人生を豊かにするということか。

  • 2/5はふたごの日
    だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。
    拾われたふたごの物語。

  • プラネタリウムの解説員である「泣き男」は、村で水死した女があとに残した双子を引き取って育てることになる。
    双子には、太陽の周りを三十三年周期で回っているテンペルタットル彗星から、テンペル、タットルと名が付けられる。

    勝ち気で活発なテンペルは、村にやってきたサーカスの一座についていき、やがて世界的な手品師として、旅から旅の暮らしを送るようになる。
    対する穏やかなタットルは、村に残り、郵便配達員として、また父の仕事を手伝ったりして暮らしている。
    中身は対照的でも見かけがそっくりなこの双子は、「熊」に関わってそれぞれの運命を歩んでいく。

    いしいさんの作品には、いろいろなものが詰まっている。
    身体の苦しみ、心の痛み、思いやりや知恵。
    ここで描かれる世界は決して理想的なものではなく、雑駁で残酷なものも含まれているけれど、どこか温かい。
    『麦踏みクーツェ』よりも、本作の方が好きかもしれない。

  • プラネタリウムに置いて行かれたふたご。テンペルタットル彗星の解説中に泣いたことから、テンペルとタットルというなまえで呼ばれるようになる。銀色の髪をした美しいふたご。
    紙製品の工場が動き続ける村では、もやや煙で星が見えない。
    ふたごは解説員「泣き男」のもとでプラネタリウムや星、神話に親しみながら育つ。
    あるとき、魔術師テオ一座が村にやってきたことからふたごは離れ離れになる。タットルは郵便配達をしながら星を語り、テンペルは手品師へと。

    「麦ふみクーツェ」以来の、いしいしんじ作品でした。
    クーツェを読んだのも思い出せないくらい昔のことで、いしい作品をほぼ知らない状態での読書でした。
    優しい文章は気持ちを暖かくさせる。でもその優しさは、シリアスな展開では不思議な感覚にさせました。
    登場人物に名前がない(ふたごとテオを除いて)、時代や場所の背景がはっきりと描かれていない分、私の想像が世界を作っていくので楽しかった。


    作品の中には、ふたごも村の人も、一座の人も、人を「だます」シーンがある。「だます」というとちょっと聞こえが悪いけれど、悪い意味ではなく、誰かを思っての行動だった。

    村に新しい工場ができることになり、それまで村や人々にとって畏怖や畏敬の対象だった北の山が崩されることに。何十年も熊が出ていない山で、毎年狩りの時期に行う儀式。なんのためだったのだろう、と肩を落とす狩人。しかし北の山に熊が出たことによって、再び村は盛り上がる。
    でも実はその熊、タットルだった。
    山を開かせないようにという思いでした行動なのだと思う。(撃たれないか撃たれないかとハラハラ読んでた。)
    しかし村の人たちは、熊はタットルが正体だと知っていた。知ったうえで作戦をねり、山へとのぼっていた。
    これはお互いにだましあっていたってことなんだろう。
    でもそれでいい、と村人は思っていたのだろう。
    毎年毎年、儀式的に行ってきた自分たちの行為、村を思ってのタットルの行動。嘘とか、本当とか、そんなことではなくて、誰かを喜ばせたいという気持ちがそうさせたんだろう。

    そしてお話の最後には、みんなが大きな「嘘」をつくことになる。それでも一人の男の子を救った。
    喜ばせたい、幸せになってほしいという気持ちが生んだことなのだろう。

    個人的には、死と星が結びつかなかったことに不思議な安心を感じた。(これは私の個人的な死生観?)
    氷山の氷から、ゆっくり解けだして水になる。水になったらすべての海とつながりをもち、雲になってどこかに降りそそぐ。
    そうやってもっと広い世界へとつながりを持つのかもしれない。

    思えば、プラネタリウムの中でも人をだますことになるのかなぁ、と。
    天井に広がっているのはにせものの空で、にせものの星。時間も操作できるので、にせものの時間の中にいる。そのなかで、本物とおなじように見せる。
    星座に描かれた神話は、実は出典がごちゃごちゃになっていたりして、生まれてから長い年月と人の営みを経て変化してきたもの。だからはっきりとした正解がない。でもそれを、きちんとお話をする。
    小さい地球上ではわからない天体の動きや、その科学的なものを、空間や時間を操作して(にせものの世界のなかで)お話をする。
    でもそれは、誰かを喜ばせることのできる。ちょっとした手品なのだ、と教えてもらったような気がした。

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著者プロフィール

いしい しんじ:作家。1966年、大阪生まれ。京都大学文学部卒業。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲二文学賞、12年『ある一日』で織田作之助賞、16年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。そのほか『トリツカレ男』『ぶらんこ乗り』『ポーの話』『海と山のピアノ』『げんじものがたり』など著書多数。趣味はレコード、蓄音機、歌舞伎、茶道、落語。

「2024年 『マリアさま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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