凍りのくじら (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062762007

感想・レビュー・書評

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  • 辻村深月さんの作品を読んだのはこれが初めてです。前々から辻村さんの作品を読みたいと思っていて、講談社文庫の「この順番で読めば辻村ワールドがより楽しめる!」という帯の最初にこの作品が書かれていたので、読むことにしました。

    序盤・中盤くらいまでは仄暗い印象ですが、ドラえもんの道具が随所に出てくることと別所の存在があり重苦しくはないです。理帆子が「すこし・ナントカ」で人を称するくだりは読んでいて楽しく、もし自分や自分の家族、友人を同じように称するならどんなふうにしよう?などとつい考えてしまいました。まだ通しで再読はしていないのですが、理帆子のお母さんの写真集のところは何回も読みました。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、読むたびに泣いてしまいます。

    ラストは冒頭にあるように「暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす」ような終わり方になっています。物語の途中までの仄暗い印象にまで光を当てるような、そんな終わり方です。

    ドラえもんは基本設定とごく有名な道具くらいしか知らないのですが、読んでみたくなりました。

  • 久しぶりの辻村作品。
    理帆子に共感してしまうところが多かった。わたしも高校時代、特定の群れを作らず、相手を分析し、見下していたのかもしれない。この作品を読んで気づかされた。部活に勤しみ仲間がいる子達が羨ましかった。だから、理帆子のさみしさが少しだけ、理解できた。
    若尾がいつまでも気にかかる気持ちもよくわかる。頭と心はつながっているようで、全く違う動きをする。なんだかやりきれないけど、エピローグでやっと報われたような気がした。二人の関係性がとてもうらやましい。最後は心が安らいだので、☆4つです。

  • "人間っていうのは、頭の良さに伴って思考する能力を持てば持つ程、孤独にならざるを得ない(p294)"

    この本を読んで最初に頭に浮かんだのが、9歳からの付き合いの友達。当時から頭が良いとは思ってたけど、それから三十年以上経っても彼女より頭のいい人には巡り合っていない。

    鋭い観察力と洞察力を持ち、豊富な語彙で正確に、鋭く物事を表現する。普通疲れたり面倒になったりで思考停止する中、彼女は思考すること、分析することがやめられない。心を誤魔化せない。自分なりの答えが見つかるまで。
    そこが理帆子と似ているのかも。

    だからか、理帆子に対してはあとがきにあるようなネガティブな印象を持つことは無かった。疲れる生き方してるな、とは思ったけれど。

    でも、結局、人として付き合っていく為に必要なのは、小難しくて正確な言葉でなく「心の共通語」なんだろう。物語の最後、今まで見下していたはずの人達のことを、実は自分は素直に心身一体で生きてる彼らに気後れしていたのだ、彼らのことを好きなのだ、と理帆子が自覚する場面。個人的には、きっと理帆子の中では彼らと「心の共通語」が通じてたのをちゃんと感じとっていたのではと思う。

    私がその友達とずっと付き合ってるのも同じ理由だ。これからもそうだろう。

    若尾が壊れていく様はかなりホラーで衝撃。理帆子との会話のすれ違い具合ももはやホラーだ。自分を直視できずに他を傷付ける、私には共感も同情もできない存在だった。根本的な所で少しでも自分自身を助けたいと思ってる人じゃないと誰も助けられないと思う。彼は自身の本質から都合良く逃げすぎた。

    ドラえもんもまた読みたい。改めて考えると、ドラえもんの道具には夢の様な利点の裏に必ずリスクもあり、それがなかなかに深い。四次元ポケットの中には哲学もあるのですね。

    早い段階でネタバレ(別所の存在)、物語の細部にはツッコミ入れたい所もあるけど、考えさせられる、記憶に残る本だった。

  • 4月29日〜5月3日
    すごく暖かい作品だな〜。クライマックスは本当に良かった。泣ける終わり方だよなー。この人の作品は本当に暖かい。読み終わると胸がポカポカする。ドラえもんあんまり詳しくないけど、少し気になる存在になったな。ちなみに別所さんはすごく良い男だと思う。私は好きなタイプだなw

  • 主人公=辻村さんのどこか冷めた目線が好き。他の作品と同様、トリックが隠されている話だったけど、これは比較的分かりやすかったなあ。でも途中で分かっても、とても温かい話だったので読後感がいいです。ドラえもん、読みたくなった。

  • 残り 1/3 ぐらいから
    よくもまあこんなに泣けるもんだと自分で呆れるぐらい
    とにかく涙が止まりませんでした。
    これまでに読んだ辻村作品は3作品。
    そのうち2作品で号泣を味わっているので
    4作品目は落ち着いて読んでやろうという妙な意地の甲斐も虚しく(笑)

    主人公はものすごい読書家で
    周りにいる人みんなをどこか下に見ながらも
    そつなくコミュニケーションを図れる、冷めた高校二年生の女の子です。
    失踪した父親の影響で『ドラえもん』をこよなく愛していて
    各章のタイトルもすべてひみつ道具の名前ですし
    懐かしのドラえもんエピソードがどんどん飛び出してきます。
    藤子・F・不二雄世代にはたまらない趣向。

    でもこの作品の魅力は
    そういうエンターテイン性を遥かに超えたところにあるんですよ。
    読む人によっては
    どの登場人物も嘘臭く見えるかもしれません。
    それぐらいにキャラクターが徹底しているんです。
    でもあたしにはそれが却ってものすごいリアルで。
    描かれる表情も動きも放つ言葉も
    「ああ、こういう人ならこうするだろうな」って読める気がするからこそ
    予想通りの反応がないと妙に気になって
    なのにすぐにはその違和感の正体が掴めなくて。
    あとから
    あれはそういう意味だったのか!とようやく解かって
    悔しい思いをしたり、見方ががらりと変わったりするところも
    現実の人間関係にとても似ていると思いました。

    あたしには好きな作家さんが数多くいますが
    辻村さんほど人間の心理を見事に捉えていると感じさせる作家さんには
    もう出会えないような気さえしています。

    人間が好きなら
    どうぞ読んでみてください。
    スーパーヒーローは出てきません。
    でもすごくすごく愛しい気持ちにさせる人ばかりです。
    この作品のジャンルはSF。
    『澄み切ったファンタジー』。

  • 油断していた。辻村深月さんのお名前は知っていましたが、別作の書き出しでなんとなく苦手意識を持ってしまい、今まで敬遠していました。知人からドラちゃんネタが散りばめられているという話を聞き、すぐさま購入。が、やはりなんとくとっつきにくくて、二年ほど積ん読。そして、読み始めから一夜明けて、今ここにずびずびと鼻を鳴らしながら感想を綴っています。気が向いたときに手に取って良かった!穏やかな晴れから、風が吹き、曇天に閉ざされて、嵐が来て、虹に呼ばれて透き通る青が再び顔を覗かせる。そんなお話でした。この本と出会えたことが幸せであるし、この感覚があるから読書は辞められないと痛感いたしました。また読みたい!ちなみに、わたしは夢見る機が欲しいです。現実に起こるとちょっと怖いから、夢の中ではいろんな世界を楽しみたい。

  • 初めて読んだ辻村深月さんの作品。できあがった写真集の母親のメッセージに涙が止まらなかった。ドラえもんが観たくなった。

  • 最後に泣かされました。別所の正体がわかった上で、もう一度読み返さなければ。本を読みすぎると現実からの感動が少ないとの箇所にちょっぴり同感。SF(少し・何々)と人を捉えるのが面白い。

  • 繋がりたい。
    みんなと。
    でも、いつもsukoshi fuzai。

    そんな心が光によってみんなと繋がる。
    不調和音が綺麗な和音となり響き出す。

    胸が、喉が、苦しくなり、暖かな涙がでる。

    sukoshi fushigiな世界。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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