永遠の0 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

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  • 零戦に乗った男の人生と考えを、同僚、部下、上司、妻、様々な観点から捉えていく小説。

    いまの日本企業においても大切な示唆があると思う上に、戦争のことは知っていなければならない点において、いい本。

    感銘を受けた示唆は…

    1.「生き抜く」というひとつの信念を貫いたオトコであっても、捉える人や立場によっては、賛否両論は必ず生まれるという点。

    2. 「生きる」「死ぬ」を真剣に考え抜き、自らで納得させ、行動してきた人達がいたからこそ、今の日本があるという点

    3.信念を貫くことが何を意味し、どんなハードルがあり、それが本当の信念なのか、ゆがんだ信念なのか、理解するのが難しいことがわかる点

    4.日本組織の成り立ちと弊害

  • 宮部さんは小説の登場人物に過ぎませんが、彼と同じように、あの時代を戦った一人一人にそれぞれの人生があり、愛する人や帰りを待つ人がいたのだろうと思うと、胸が張り裂けるようでした。つらい現実を知るのが恐く、日本の歴史から目を背けていた自分を恥ずかしく思いました。考えを改める機会を与えてくれたこの本に感謝しています。

  • 久しぶりに星4つをつけました。

    戦争で亡くなった実の祖父の足跡を求めて、かつての祖父の戦友たちを訪ねて歩く姉弟の話。

    中盤を過ぎた辺りから、読むたびに涙を堪えるのが困難になってきました。
    電車の中で読む本じゃない。

    「生きたい」「生きて欲しい」そんな言葉を口にすることも許されなかった軍において、それを口にし、限界まで実践した男の話。
    生への執着が軍部でタブーだったのは、それがいかに叶え難い願いであるかをみんな知っていて、その思いを抱きながら現実に対峙するのがどんなに辛いことかわかっていたからかもしれない、と思いました。

    「命に変えても守る」というのはとてもポピュラーな日本語表現だけど、それは、「自分も守って相手も守る」を諦めている表現だと思います。
    不可能に思えるほど難しいから、不可能だということにしてどちらかをとる。
    自己犠牲よりさらに高次にある選択肢は、選び取るのは本当に難しいし、勇気がいる。
    それを、選んで闘った男の話。

    ふたりに本当の祖父の存在を語ったときのお祖父さんの気持ちを考えると、また涙が出ます。
    記憶を共有してきた妻が亡くなった時、誰かに知っていてほしくてたまらなかったんだろうなぁ…と。


    ただ、戦争賛美の方向にはいってほしくないなと思う。
    軍部の否定も不条理もたくさん描かれているけれど、だからこそ、「あの作戦さえ成功していれば勝てていたかもしれない」「戦士は立派だった」そんな文言は、文字通り受け取られれば恐ろしい言葉だと思う。

    もし日本兵がより美しい作戦を実行していたら、もし判断の誤りがなく勝利していれば、現実はベターなのでしょうか?
    …死ななくてすんだ日本人の数だけ、アメリカ人が亡くなっていただけです。

    空の、一対一の真剣勝負の下では、降り注ぐ爆撃になす術もなく死んでいった人もいます。

    極限での人の輝きは確かにはっとするほど美しいけれど、代償の大きすぎる美ではなく、人を幸せにすることで、今自分がどれだけ美しい人間であれるかを考えたい。

    主人公の選択は、祖父の人生に比べて見劣りすることも些少であることも決してない。
    現代が過去よりくすんでいることもない。「今の若者は」って言うから、若者は自尊心を失っていくんだと思う。
    平和を維持してる今の人たちの方が美しいと思う。

    彼らが渇望をふつふつと滾らせていた平和を、守る強さが美しいと思う。

  • 震えた。
    感動したのか、悲しかったのか、理由はわからない。
    戦争を題材にした小説なのに、泥臭くなく、清く美しいと思った。

    人間一人一人が生きた証、思いが、克明に描かれている。

    どんな言葉を紡いで感想を書けば良いのか、今の未熟な私にはわからない。

    ただ、一つだけ言えるのならば、
    読んで良かった。
    この本に出会えて良かった。

    素直にそう思えます。

  • 著者の心の叫びが聞こえてくるようです。

    太平洋戦争を時系列で追うなかで、徐々に明らかになっていく一人の戦闘機乗りの人間性と想い。戦争とは、命を奪い合うとは何なのか。そもそも「命」とは何なのか。問いかけられながら読み進める程に、そこから伝わる熱く、悲しい、そしてやりきれない感情のさざなみに絶え間なく心がゆらされます。



    「死ぬのはいつでもできる。生きる為に努力をすべきだ。」


    しかし、その努力することすら叶わない人々が今もいます。なによりも尊いはずの「命」が晒される不条理。場所や形を変えて今も存在するその現実から目を逸すことは私たちには許されないのかもしれません。


    「感動的」という言葉では飾りきれないほどの、美しすぎる作品です。

  • 日本人なら読め!です。
    百田さんの本は起承転結がハッキリしていて好み。しかもどれも読み易いのが凄い。エンタメのなんたるかという理解が高く、どう表現したら伝わるかを知り尽くした書きぶりだと思う。小学生でも飽きずに読めるだろう。どれもスッキリする。初めて靖国神社に行った。無知は罪。毎夏読みたい。

  • ミーハーですが、TVの某番組で紹介されていたので
    図書館ではなく、久しぶりに本屋さんにて購入。

    全くの予備知識がなかったので
    正直、戦争の話だと分かった時は「うわ、どうしようかな」と読むのをためらいました。

    情けない話ですが、私は戦争ものの本や映画が苦手で
    今までまともに見たことがなかったのです。

    けれど、せっかく買ったし…と読み始めました。

    戦時中どころか、戦後すら知らない時代に生まれた私が
    あの太平洋戦争をあれこれ論議することはできません。
    あれだけの大きな戦争だったのですから
    様々な意見があって当たり前だし
    一体何が真実で、何が真実ではないのか。
    ある人にとっては正義でも、ある人にとっては完全な悪であることもあっただろうと思います。
    そんな時代のことを、今の私たちがああだこうだ言う資格など
    あるはずがないと思っていたし
    何より、戦争のあまりの残酷さに、直視できないでいました。

    けれど、この本を読んで
    それはただの逃げであり、平和な世の中に生まれた私達だからこそ
    あの戦争を知らなくてはいけないと強く感じました。

    宮部久蔵という人物は、優しくて、強くて
    うまく言葉に表すことができませんが
    本を読み進めるうちに、どんどん惹かれていきました。
    いつの間にか、宮部久蔵にどっぷり感情移入してしまい
    後半は泣きながら読んでいました。

    「感動した」とか「悲しい」とか、
    涙の理由は明確ではないのですが、何故か涙が止まらず
    本を読み終えた後も10分くらい泣き続けました。
    こんなに泣き続けた本は、初めてかもしれません。
    本当に沢山の事を考えさせられた本でした。

    今ある、「当たり前」と思われている生活が
    どれだけ幸せなことか、改めて感じました。
    隣ですやすやと寝ている息子の寝顔が
    本当にたまらなく愛おしく、また涙があふれました。

    今はもう天国にいってしまった祖父達に逢いたくてしかたありません。
    ありきたりですが、今の私があるのは両親や、そのまた両親が
    必死で生きてきてくれた結果なんだと、感謝の気持ちでいっぱいです。


    いつも図書館で本を借りる私が
    何故か買ったしまったのも、何か縁を感じます。
    今の私が、読むべき本だったのだと思います。

    戦争用語があり、かなりのボリュームなので
    普段本を読まない人には、少々読みづらいかもしれませんが
    日本人なら、絶対に一度は読んで欲しい一冊です。

  • FBをしていなければ、こんな大切な本を見過ごすところでした。
    売れているのはよく知っていました。書店に平積みになって派手なポップや推薦文で飾り立てているのを見ると、かえって辟易してその場を通り過ぎる天邪鬼な自分。
    でも、FB友達が手放しで称賛しているのだけは無視できませんでした。そして手にした初めての百田作品。感動しました。
    本書で大きなテーマとなっている「特攻隊」については、高校時代から購読している、やや右寄りの雑誌「SAPIO」でたまに特集を組んでいて、割と予備知識はある方だったと思います。特攻隊員の遺書も読んだことがあります。靖国神社も参拝し、英霊の御霊に哀悼の誠を捧げました。
    それでも本書の感動は変わりません。いえ、特攻隊員の遺書を胸を熱くしながら読んだ経験があるだけに、その感動はひとしおだったかもしれません。
    以下、感じたことを脈絡なく書き綴ります。
    読み進めながら、まず胸躍らせたのは、戦闘機乗りのカッコよさ。これはもう男なら逃れられない魅力なのではないでしょうか。かつて世界最高の戦闘機と言われた零戦をまるで手足のように操り、敵機を葬り去るシーンには何度も快哉を叫びました。
    しかし、戦況が悪化すると、軍事にはド素人の自分でも目を疑うようなバカげた作戦が軍上層部によって次々と立案され、実行に移されていきます。
    人間爆弾「桜花」、人間魚雷「回天」…。
    およそ人を人とも思わない軍上層部には激しい怒りを覚えました。自らの出世のために、みすみす好機を逸する場面も出てきます。では、彼らは無能の徒なのでしょうか。そんなことはありません、れっきとしたエリートです。
    主人公の姉・慶子が語ります。
    「そう。つまり試験の優等生がそのまま出世していくのよ。今の官僚と同じね。あとは大きなミスさえしなければ出世していく。極論かもしれないけど、ペーパーテストによる優等生って、マニュアルにはものすごく強い反面、マニュアルにない状況には脆い部分があると思うのよ。それともう一つ、自分の考えが間違っていると思わないこと」
    たびたび指摘されることかもしれませんが、説得力があります。
    そして、何より許せないのは、彼ら高級エリートたちの中には、戦後も責任を取っていない者が大勢いることです。
    翻って前線で戦った戦闘機乗りの何と清々しいこと。
    特に感動したシーンの中に、戦後、米国で開催された「第二次世界大戦航空ショー」で、かつて戦火を交えた日米両国の戦闘機乗りが再会したシーンがあります。お互いを称え合う場面は深い感動を呼び起こさずにはいられません。
    何だか戦争を賛美しているように受け取られる方もあるかもしれませんが、それは私の本意ではありません。私は「平和ボケ」「一国平和主義」と罵られても、平和な社会を希求します。
    あの戦争で、特攻で散って行った方たちの思いも同様だと推察します。
    実は昨年から今年にかけて戦争経験者2人と会い、取材しました。
    一人は海軍工廠というところに配属され、後にあのトラック島で任務に従事していました。もう一人は海軍の通信員です。
    2人からは貴重な証言をいくつも聴きましたが、それをいちいち書くことはここではしません。私が強調したいのは、2人とも「戦争は二度としてはいけない」とはっきり口にしたことです。
    翻って今の政治状況、世相はどうでしょう。好戦的なムードが日に日に強まっていると感じるのは自分だけでしょうか。「普通の国」になるということは、戦争ができる国になることと同義です。
    一方で、ためにするような議論ばかりしている左翼にもくみしません。身体を賭すような真剣な言葉を、彼らの口から聴いたことがありません。
    ですが、今の好戦的な政府よりは、実害がないだけまだましかもしれません。
    いみじくも、その元海軍通信員は言いました。
    「今の政権を見ていると、戦争を知らない人たちばかりなだけに危なっかしい」
    勘違いしてもらっては困ります。元海軍通信員は筋金入りの保守派です。
    私も彼の意見に同意します。
    話がやや逸れました。
    戦前には勇敢に戦った兵士たちを「英雄」と持て囃し、戦後は「職業軍人」などと軽蔑交じりの呼称で呼ぶ人たちの姿には、失望を覚えました。国のために戦った人たちを蔑むすべての人たちを、私は軽蔑します。
    英霊に哀悼の誠を捧げるとともに、国のために戦った男たち、銃後を守った女たちに深い感謝の意を表し、不戦の誓いを新たにした読書体験でした。

  • 今まで読んできた本で1番考えさせられたし、今普通に生きてる事に改めて感謝できた。最後は泣きながら読みました。高校生ですが、教科書で戦争について勉強するよりこの1冊で学べると思います。この本に出会えて感謝。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「教科書で戦争について勉強するより」
      そうですよね、、、教科書は「国」と言う大きな組織を維持するために、チェックされた本だから、真実や、人の...
      「教科書で戦争について勉強するより」
      そうですよね、、、教科書は「国」と言う大きな組織を維持するために、チェックされた本だから、真実や、人の「心」に迫るのは難しい。。。
      2013/04/26
  • すごい本だと思った。色んな人に勧めたい。
    どんな人間でも必ず、その後ろには両親、最愛の妻や子ども、大切な何かがあるということを実感させられた。人間一人の命は、重い。

    改めて、戦争で亡くなったひいじいちゃん、戦後四人の娘を一人で立派に育てた、ひいばあちゃんのお墓参りをしたいと思った。
    戦争は絶対に忘れてはいけない。

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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