- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062770798
感想・レビュー・書評
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今日、1人の独裁者が選挙で選ばれた。この作品では、しかし、その独裁者でさえ「システムの中の一つ」でしかないと述べている。
「自分たちのはめ込まれているシステムが複雑化して、さらにその効果が巨大になると、人からは全体を想像する力が見事に消える。仮にその、「巨大になった効果」が酷いことだとしよう。数百万人の人間をガス室で殺すような行為だとしよう。その場合、細分化された仕事を任された人間から消えるのは?」
「何だい?」
「『良心』だ」
「まさに、アドルフ・アイヒマンか、それが」岡本猛がストローで氷をまた、かき回し始めた。
「じゃあ、その仕組みを作った奴が、一番悪い奴だ」私は単純に言い切る。
「機械化を始めた奴が?誰だよそれは。それに仕組みを作った奴だって、たぶん部品の一つだ。動かしているのは、人というよりは目に見えない何かだ」(上巻P278-P279)
なんだかだんだんと伊坂幸太郎が芥川のように思えてきた。頭がよくて、社会の本質を見据えているのに、社会を斜(しゃ)に構えて書くことしかできなかった、そして自殺した人物。
この作品の中でも芥川の言葉が印象深く引用されている。
「危険思想とは、常識を実行に移そうとする思想である」
ところで、芥川の場合、「危険思想」とは「社会主義思想」のことであった。果たして伊坂の場合、どうなのか。「人というより目に見えない何かだ」というのが、私にはマルクスの「人間疎外論」のように思えて仕方ないのであるが。
そして「アリは賢くない。しかし、アリのコロニーは賢い」という「国家」というものに、斜(はす)から捉えた小説になった。
いつもの伊坂に比べて、伏線として使われる「名言」が嫌にひつこく使われていて、「切れが悪いな」と思っていたら、どうやら漫画週刊誌の「モーニング」に連載されていたらしい。その読者用に書かれたのだと思い、納得した。結果、同時期に作られた「コールデンスランバー」のような傑作とはなっていないが、「伊坂らしい」作品になった。 -
村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を思い出した。
ソフィスティケートされた社会では、投げた小石が誰にぶつかるか分からない。それは自分に跳ね返ってくるかもしれない。
作品のテーマはそんな感じ。
伊坂作品を久々に読みましたが、作品のテンポ感を「そうそう、こんな感じだった」と思い出しながら楽しみました。
もうちょっと重さが欲しいかな。 -
思わず一気読み。
先の読めない展開、深く考えさせられるテーマ、緊迫した状況下でも思わず笑ってしまうような登場人物たちの軽妙でユーモア溢れる発言や思考など、どれをとっても傑作でした -
前編が気になる所で終わっていたモダンタイムス、やっと後編を読み終えました。
いやー繋がる繋がる。
前編のあちこちに散りばめられていた謎の言葉とか意味深な言葉とか「それも伏線だったんだ!?」と唸ってしまうような言葉までどんどん繋がっていくこの感じが大好きです。
あと佳代子さんカッコよすぎたよね!?!?
結局何の仕事をしているのかとかどんな人生を歩んできたのかとかは全く分からなかったけれどカッコよさに惚れてしまいそうになった……何だかんだいいつつもお似合いの夫婦だったし。
全部読み終わって改めて考えてみるとこの話はゴールデンスランバーをブラッシュアップような感じだったのかなーと。
ゴールデンスランバーの時は全く戦う術がなく尻尾すら見えなかった巨大なシステム、それが今回はほんの少しだけ見えたような気がしていて。
けれどやっぱりそのシステムに戦いを挑んだところで人は無力で。
そこから更に挑もう、戦おう、立ち上がろうとすることも立派なのだろうけれど、私は主人公の選択も正しいと思う。
そして漢字は違うとはいえ同じ名前の登場人物にあんな結末を用意するなんて……先生は一体どんな気持ちであの文章を書いていたのか少し気になる。
実は私は小説を読みながら気になる言葉とか意味の分からない言葉なんかを片っ端から検索して回ってるんですが、この話に出てくるあのキーワードだけは怖くて検索が出来ませんでした。
フィクションと分かっててもやはりあれは怖い。
私のような読み方をする人間にとってはある種ホラーでもあった……「えっ今まで調べてきた中にやばい言葉とかなかったよね?」と本気で心配になった。
まぁこういうタイプは少数派なんだろうけれど。
そしてその検索の過程でこの話には結末が違う別バージョンがあるということを聞いたので、そっちではどんな結末になるのかも読んでみたいなーと思いつつ。
運良くその本に巡り会えるといいのですが。
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大きな社会の流れの中でどう生きるか。が本作のテーマ
国や会社が決めたことだからと思考停止し、法律や仕事に黙って従い続けることは本当に正しいことなのか。
伊坂さんの作品は様々な主義主張をもつキャラクターが出てくるが、全てに共通するのは個々人が確固たる意思を持っていること。
周りと違ってもいい、自分はどう感じどう行動するかを常に問い続けること。と言うメッセージ性を強く感じた。
『ルールには本当に大事なことは書いていない』
『人間は大いなる全体の目的のためではなく小さな個人的な目的のために生きている』 -
読みやすい。けど、内容は普通だった。
生きてる中でふと、疑問に思うことを伊坂節で書いてるような感じかな。 -
勇気は実家に置いてきた
恐妻家の件伊坂幸太郎っぽい
泰然自若
画期的とは言ったもん勝ち
ネットで1番難しい事は何だか知ってるか
女の子のメールアドレスを聞き出すこと
正しい情報を得ること
チェンジ 真打を出せ
小説にとって大事な部分は映像化された瞬間にことごとく抜け落ちていく
話の核となる部分を抜き取って贅肉を削ぎ落とす
あらすじを残るが基本的にはその小説の個性は消える
人生は要約できない
井坂好太郎
モダン・タイムス
独裁者
p.104『駅馬車』 p.109『クロウ』 『デッドラインは午前二時』
傍目八目
大事なルールほど、
法律では決まっていないのよ。
法律で決められる「やさしさ」
っていうのはない。
決められてしまえば、
もう、それは、やさしさでもない。
ルールとして決められないこともあるのだ