光待つ場所へ (講談社文庫)

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著者 : 辻村深月
  • 講談社 (2013年9月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776493

光待つ場所へ (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 帯は、
    「この道がずっと続けばいいと思うこともある。
     ここから早く抜け出したいと思うこともある。

     待ってて。
     きっと扉は開くから。」

    五つの短篇集です。
    もう何年も前に「スロウハイツ~」とか「凍りのくじら」とか読んだので
    記憶がおぼろげでした。苦笑

    でも、本当にインパクトの強かった作品たちは
    今でも「おおぉ!」としっかり覚えており、
    なんだか昔の戦友やクラスメイトに久々に会った感じで
    うれしかったです。
    「なんか…この人知ってるぞ…名前(作品名)までは思い出せないけど」
    なんて時は、道端で偶然会った友達みたいでした。笑

    みんな温度や熱量はバラバラでも
    日常に突き動かされて必死にジタバタしてました。
    それがいいんです。

    何年も前に会ったみんなは、それぞれのスピードでしっかり自分の物語を歩いていました。

    私はもう30を迎えておとなになって、
    高校生が登場する物語を当事者として読めなくなったけど。
    それでも、この抱いた感情たちは間違ってなかったんだって思わせてくれます。

    夜中に突然、衝動的に
    走って走って、息が切れて苦しくて、呼吸が乱れて、
    足が止まって、
    思わず見上げた空がきらきらしてるような感じです。
    そのきらきらを、体中に吸い込むような。

    「友達って定義にはいろいろあるだろうけど、
     友達が成功したときにそれを素直に喜べるのが、
     俺にとっての友達だ」

    「好かれるっていうのはハイリスクだ」

    はっとするような言葉やピースがちりばめられています。
    作品のなかから自分にぴったりのピースを見つける作業。

    あとがきは朝井リョウさん。贅沢!

    他の作品たちも読み返したくなりました。

  • 霧にかかっているような、人が内面に抱える感情を、どうしてここまで簡単に文字にして吐き出すことができるのだろう。自分自身でもうまく言葉に出来ない感情を代弁してくれるかのような著者の作品にいつも魅入ってしまう。


    短編集ですが、本作の中で物語がつながっていたり、他の作品と繋がっていたりして、短編集が苦手な私でも惹き込まれました。長く続く道の先にある出口なのか、分岐点なのか。いずれにせよそこにたどり着いたことを歓迎するような光に包まれた物語のラストが各編とも心地よかった。

  • ・しあわせのこみち
    冷たい校舎の時間はとまるの、清水あやめが主人公の話。自分は天才だから、普通の人のやる恋愛だとかはしなてもいいんだと思いながらも本当は、普通の人がしてることがどこか羨ましいってところが元々人間らしくて好きだった人物だったので好きな話でした!
    めっちゃ綺麗にまとまってるし、ちょっとキラキラしすぎ!?って感じる人もいるのかもしれないけど、これはこれで素敵だなと私は思ったかなぁ
    情景が思い浮かんで素敵。勝手に東大イメージしてたけど、もちろんそうだよね?笑
    しかし、天才には天才の悩みがあるんだなぁ(笑)

    ・チハラトーコの物語
    スロウハイツの神様は1番好きな辻村作品だけど、チハラトーコはあまり好きじゃなくて、きっとチハラトーコを好きじゃない人は沢山いるからこそ辻村深月はこの作品を書いたのだろうなぁと思った。
    スロウハイツを読んでる時は、環のこと大好きだったけど、チハラトーコの物語を読むと、あれ?この人ってまっすぐすぎて正面から見れないタイプの人間かもって思ってしまった(笑)
    これを読むとチハラトーコにチハラトーコなりの心情があって、少し方向は間違ってるかもしれないけど一生懸命生きているのが伝わってくる作品でした。

    ・樹氷の街
    松永郁也はずっと気になってたというか、もっと物語の中心に出てこないかなって思ってたから私にとっては嬉しい作品!私は知らなかったけど、本当に樹氷の街っていう合唱曲はあるのね。前奏のピアノがとても素敵だったので聴いたことない人は是非。「ぼくのメジャースプーン」のぼくとふみちゃんはこの作品にも出てくるわけだけど、少しずつ愛着が湧いてきちゃった(笑)名前探しの放課後とは違って、ふみちゃん側の目線も描かれててそこがよかったかな。
    そしてまた理帆子がでてきて、どんだけ理帆子のこと好きなんだ!と思うけど、なんか理帆子と郁也が一緒に住んでるって話読んでホッとした(笑)

    ・冷たい光の通学路
    チサトって誰だっけ?って全然思い出せなくて、調べて分かるっていう残念度(笑)
    「冷たい校舎の時間はとまる」ファンにはサービスストーリーだったみたいね。本当にファンサ!ってくらいの短さでびっくりしちゃった。

    今回は、辻村深月の好きな「実は…!」みたいな話が少なかったけどこれはこれで素敵な作品でした!

  • 自分の中で「凍りのくじら」と同列で好きかも。一遍一遍に出てくる感情。その感情を自分の中で整理出来ていなかった頃を思い出す。他人からの評価と異なる事に苦悶した日々。そして汚れてて綺麗なのが人間だと悟り共存出来ている今…。関連がある本に出てくる人物のその後の外伝的な短編小説だが、そうと思わずに読んで十分おもしろかった。むしろどれに出た人かとか気にしてたら半減してたかも。短編苦手やけど、そこそこの長さがあり苦ではなかった。もっかい「凍りのくじら」読みたくなった。

  • ほどよい分量と読後感でそこそこ楽しめた。ただし、6作中、チハラトーコの物語は秀逸だった。
    トーコを軸に三十路近い3人の女性が、自分を変えられず、さりとてそんな自分を愛してる姿がえがかれ、今の自分でいいんだと背中を押してくれているようで、この短編の分量でよくぞここまで書いてくれたと感心した。
    逆に樹氷の街は陳腐で着地を決めて無理やり綺麗にまとめた感があって、あまり好きではなかった。
    次は長編でこの作家を感じてみたい。

  • 辻村作品を読むと、既読のものでももう一度読み直したくなる。

    今までの作品のスピンオフ短編集の様な。
    最後の“樹氷の街”が素晴らしく良かった。
    僕のメジャースプーンの二人、好きだなぁ。
    賢くて優しくてホッコリする。

    辻村さんにはいつかガッツリと音楽の作品を書いて欲しい。
    音楽と辻村深月、凄く合うと思うのは私だけでしょうか。

  • いままでに発表された物語のスピンオフにあたる物語。
    いつも思うのだけれど、辻村さんの物語には何かチクッと刺さるものがある。
    それはときに痛みを伴ったり、哀しみを思い起こさせたり、思わず頷いてしまったりと様々なのだけれど。
    何が感情を揺らすのかはわからない。
    ただ読んでいると、普段は忘れているような些細な心の中にある波がほんの少し大きくなるような・・・そんな気がする。
    「樹氷の街」という短編が一番のお気に入りだ。
    見た目だけでは人はわからない。
    まして無責任な噂では、その人の人となりなどわかるはずもない。
    知り合って、話をして、同じときを過ごしても、それでもわからないことだらけだ。
    一瞬の表情や思わず口にしたひと言で、ほんの少しだけ相手への理解が進む。
    でも、その理解も結局のところ氷山の一角でしかない。
    自分が見て感じたその一角を好ましいと思えるかどうか。
    きっとそこが友達になれるかどうかの分かれ道になるのだろう。
    辻村さんの描く物語には強引な辻褄あわせがない。
    ごく自然に日常の生活が描かれ、そこにある小さな出来事の積み重ねがエピソードに繋がり、物語を紡んでいく。
    辻村さんの物語が好きなのは、そんなところが気にいっているからなのかもしれない。

  • 「自分は万能でも天才でも何でもない」と気づき、傷つき、悩みながらも、前を向いて進んでいく若者たちの物語。

    若いっていいな。

  • 懐かしいひとたちに出逢えた。
    辻村作品を読み終わった後の読後感は、いつも爽やかで透明感に満ちている気がする。

    日々は、繋がっていく。世界は、広がっていく。

    朝井リョウの解説が、私の辻村作品に対する想いを的確に言い表していて、脱帽でした。

    「あのときのあの子が、きちんと、生き続けている。あの人の過去が、あの人の未来に、こんな影響を及ぼしていたことを知る。全く別の世界が舞台だと思っていた物語同士が、あるとき突然、手を繋ぐ。辻村作品は、読むたびに、その地平が広がっていくのだ。」

  • 他の長編小説のスピンオフ作品。いかにも辻村深月がやりそうな構成(いい意味で)。
    この本を読もうと思っている人は「冷たい校舎の時は止まる」「ぼくのメジャースプーン」「凍りのくじら」「名前探しの放課後」あたりは読んでからの方がいいです。通称辻村トラップというらしいですが…
    こういう手法をとる作品は多くなってきたな。山本幸久もユルく関連させてるし、コミックだと松本零士とか、スパーロボット大戦や、大御所マーベルユニバースやジャスティスリーグもん…。作品と作品が交互に重なるネタってワクワクして好きなんだが、あまり内輪ネタやマイナーネタをやるとついていけない人もたくさん出てくるだろうなと、いらん心配もしてしまう。

    そういうスピンオフ(続編)的な楽しみもいいんだけど、この本の楽しみ方は、解説で朝井りょうさんも書いてる通り、「自分の厨二病」的な心のかさぶたを剥す快感…にあると思う。各短編に出てくる連中の言動に自分を照らし合わせ、慢心やいきがりのある自分の心に塩を塗って消毒する。
    少々痛みも伴うが読了後はなんだかすっきりしている。ややMっ気交じりの爽快感が気持ち良い。

    「俺ってカッコわる」って思ってる人、大丈夫、他の人もみんなカッコ悪いんである。
    「あいつらカッコわる」って思ってる人、慢心するな、お前も十分カッコ悪いんである。
    人間だれしもカッコ悪いんだから、そのカッコ悪いことを引きずりつつも、どう生き方軌道修正していくか…それせんとアカンなぁ。

    そんなことに思いを巡らせてしまう、中年青春殺しの1冊である。

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