知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 2027
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880480

感想・レビュー・書評

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  • 前作同様、言語の限界、予測の限界、思考の限界を各界の代表でのシンポジウムという形でわかりやすく説明。
    大きくはファイヤーベント、ポパーとウィトゲンシュタインの考え方を説明している。ただただ筆者の博学と読者への配慮に脱帽。

  • 新書の真髄は手軽さと気安さにある。新書で、『純粋理性批判』や『存在と時間』の様な、韜晦な議論を展開するのは愚の骨頂。自分の頭の中を整理したい時や、門外漢が割と手軽にある分野のパースペクティブを得るために新書は存在している。その意味で、新書の出来は中身と同じくらい、あるいはそれ以上に、著者の取捨選択、エディットのセンスが問われる。そういう観点からこの本を評価すれば、もう満点に近い。なかでも、文章全体が仮想のパネルディスカッション形式をわざわざ取っているのが、全体の議論を綺麗に纏めるのに役立っている。もともと門外漢など立ち入ることが不可能な複雑な問題の概略を手際良く纏めてくれている。おそらく、著者にとってはこのパネルディスカッション形式で文章を書くことは、普通の評論で書くよりも一層の骨折りと工夫が必要だったはずだが、その骨折りのために、我々読者の頭の中に小難しい議論がすんなり入っている。

    元々西洋哲学は、プラトン=ソクラテスの対話編から始まっているから、パネルディスカッション形式も含めた「対話」の中で哲学が浮かび上がってくる、というのは伝統的なスタイルなのかもしれない。なんにせよ、良く出来た本。大学教養レベルの学生さんに、『理性の限界』と合わせて、新たな新書の定番として早いうちに読んでおいて欲しく思う。

  • 理性の方は読んでいないのだが、もっとも良かったのは簡明にヴィトゲンシュタインの「多くの哲学の問題は言葉の問題」=「語りえぬものには沈黙せねばならない」という考えを整理できたこと。また、どこかで見たことは有ったが忘れていたソーカルの「知の欺瞞」を確認できたこと。

    思うに哲学とは、世界の真理を明らかにしようとする学問ではなく、難しい言葉を使って常人には理解できないことを今自分は語っているという知的優越感を味わうためのサービスである。

    確かにそういうニーズは人には存在するし、それを満たすサービスが存在するのも頷ける。

    但し、何か問題を解決するための学問では決してない、娯楽であると思って向き合った方がずっと賢いと思う。

  • 前作に引き続き哲学に対して「サッパリ」と入っていける名著。相変わらず様々な分野の学者が登場しては個性的な議論を繰り広げてくれる、しかもそれがなんだかリアルさがあってまた面白い。今回は方法論的虚無主義者の影が薄いなぁと思ってたらしっかりと最後に出てきました。
    今回、特に印象的だったのは「帰納法の自己矛盾」と宇宙の存在論の二つです。夜寝る前に誰もが考えた経験のあるような話を、専門性を保ちつつ平易で分かりやすく議論していく様は著者の学者としての力量に加え小説家的な力量を強く感じます。
    カジュアルに、しかしじっくりと哲学を楽しみたい人にお勧めの一冊です。

  • 間違いなく面白い。本当にわかりやすく書かれてある。こういうのは大学の一般教育でやると受けるのでは。もう一度学生に戻りたくなった一冊。

  • 言語の限界・予測の限界・思考の限界について、
    シンポジウムの参加者の対話を通して語られています。

    読んで内容が理解できないのって、
    自分の頭が追いついてないか、内容が独りよがりなのか、
    どちらかだと思うが、明らかに前者だった。

    初めて、哲学というものがどういうものか触れた気がする。
    様々なアプローチから、わからないことを考えていく学問なんだね。

    それぞれの限界とは、人間がどこまでいけるのか、
    という限りない挑戦であり、可能性の探求なんだと思った。
    この本を読んで、果てしなく、まだまだ考えることがいっぱいだと思った。

    現実を見ることもものすごく大切。

    だけど、

    果てしなく深い知性の限界まで、
    知的好奇心の赴くままに、
    もぐってみるのも楽しいですね♪

  • こっちは神が作った人間の、思考の限界についての話です

  • ファイヤアーベントは偉大なり。

  • 「無限の苦しみを感じて生きていく知的生物を生み出す終わりのない宇宙を永遠に消失させるために、私たちは知的になりいつの日か宇宙を完全に消失させる方法を見つけなければならない」というハルトマンの考えに妙に共感してしまった。
     限りなく悲観的であるけれど、ある意味でこの上なく大きな挑戦で、どこかワクワクしてしまう発想でもある。宇宙を社会的な制度に置き換えて考えてみると非常に理性的で建設的な考え方でもある。
     私はこの本の中でいろいろな考え方について体系的に学んでいくことができたが、最も驚嘆したのは一番最後に出てきたこの発想だった。
     最後の方で出てきた形而上学による3種類の神の存在証明もハルトマンに次いでハッとさせられた考え方だった(特に2番目の「存在論的証明」)。
     そう考えると、さまざまな考え方をさらっと紹介しているように思えるこの本も、実は1つのストーリーを構築するように設計されているのではないかとすら感じた。

     

  • 「理性の限界」よりはおもしろいかな。宇宙の「人間原理」については考える事多し。人間なしの世界、物質、宇宙とは何なのか。バークリー流には到底ついていけないが、かといって人間なしの世界の在り様は想像できない。

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著者プロフィール

國學院大學教授。1959年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。専門は論理学、科学哲学。著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『フォン・ノイマンの哲学』『ゲーデルの哲学』『20世紀論争史』『自己分析論』『反オカルト論』『愛の論理学』『東大生の論理』『小林秀雄の哲学』『哲学ディベート』『ノイマン・ゲーデル・チューリング』『科学哲学のすすめ』など、多数。

「2022年 『実践・哲学ディベート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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