いまを生きるための思想キーワード (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881340

感想・レビュー・書評

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  • QOL(Quality of Life)とSOL(Sanctity of Life:生命の神聖さ)の対立は、自由の中核である自己決定を尊重する考え方と、キリスト教の教えを忠実に生きようとする考え方のいずれもが強く根付いている、アメリカの道徳文化の特徴を凝縮しているように思われる。

    【動物化】p102
    アレクサンドル・コジェーヴ「動物化論」:「人間」の欲望は、「他者の欲望」を欲望する、他者志向的な性質を持つ。
    Cf. ヘーゲル「承認」
    ポスト「人間」の二つの可能性としての「動物(eg. American way of life)vs. スノビズム(日本の能楽、茶道、華道、武士道etc)

    【スローターダイクの「人間性=教養Humanitas」】p109
    言葉の魔力によって人間という元々残虐な性質を持った動物を飼い慣らし、ポリス(=政治的共同体)という枠の中で禁欲化させる術。

    【イマジナリーな領域への権利】p169
    アメリカのポストモダン系法哲学者ドゥルシラ・コーネル「イマジナリーな領域への権利 right to the imaginary domain」:「自己決定」のための基礎としての「自己」自身を再想像する(メタ)権利である。

  • 「無論、各人の経験の仕方によって共感に偏りが出る恐れはあるが、経験が豊富になるにつれ、特定の立場に囚われる度合いが少なくなり、より非党派的=公平(impartial)な見方ができるようになる。」

    正義、善、承認、労働、共感、暴力の項が、私には面白く感じられた。
    特に、労働では、「報酬を得るための労働」と「承認を得るための労働」について分かりやすく書かれており、考えが少し深くなった気がする。

  • 資料ID:C0033234
    配架場所: 本館2F新書書架

  • [2013-1-13]
    kindleで1回目読了。とても面白かった。
    詳細はkindleのメモ参照。
    特に面白かった章は「所有」と「動物化」。

    1. 「所有」
    ・ロックの[労働→所有論]
    =労働による加工。これによる「固有性の注入」が「所有」の根拠。
    →もっとも固有化作用の限界はどこ?どこまでの「固有化」が所有を根拠づける?というノージックの疑問。

    ←これを土地を例に検討。定住して生活する農耕民族と移住を続けて生活する狩猟民族とに土地所有権の帰属に違いがでてくるのでは?

    ←本書ではロックの[労働=所有]は農業のための土地所有を前提としているとする。
    =「定住」を前提とすると、最初に開墾した者に同じ土地を耕作させ続けることがその「農業共同体」にとって都合がよい。
    ⇒都合がよいかどうか、これが「権利」の帰属の決定要因。

    ■再読する本
    ⇒「新民法体系」の物権法(加藤雅信)p321以下参照。
    ※入会権も。


    2. 「動物化」
    ・自由主義の勝利=「歴史(大きな物語)の終焉」
    →理想の消失=ポストモダンの現状
    →ヘーゲルにいう承認のための「闘争」の消失=「人間の本質」の喪失

    ・コジェーヴによる「ポスト人間」の2つの可能性
    ①動物化するアメリカ人
    ②スノビズムを追及する日本人(形式美・様式美の追求)

    ■再読する本
    ⇒「物語消滅論」(大塚英志)
    ⇒「動物化するポストモダン」(東浩紀)

  • あとがきにもありましたが、とても仲正さんらしいキーワード集。一番最後の「人間」の項目が特に印象的。

  • 帯には「高校生にもわかる」とありますが、旧制高校の間違いだと思います。入門書としてはどうなんでしょう。歯ごたえあります。21の政治哲学・倫理学系の術語(述
    語ではない)集です。承認、所有、共感、自己責任など、面白い。

  • 現代思想を語る上で重要となるキーワードを著者が説明するという切り口の書。正義、労働、責任など一冊でまとめきれるはずのないキーワードを歴史、語源から読み解き、現代と照らし合わせている。
    こういったテーマを広く知る上では適したものであるのでは…。

  •  「私」が安心して「主体」として振る舞えるようになるためには、「私」から見て、立派な自立した「主体」であるような他者たちから、対等な立場で「承認」される必要がある。その他者もまた他の”他者”からの承認を必要とするはずである。つまり相互に(無限に)承認し合う関係が成立していることによって、「私たち」は安定的に「主体」たり得るのである。
     自己の個性・自由・歴史性を意識する「人間」の欲望は、「他者の欲望」を欲望する。①他人が欲しがるものを「私」も欲しがる。②他者の欲望を「私」の思うようにコントロールする。③欲望する主体としての「私」を(同じように欲望する主体である)他人に認めさせる。―③相手に認められたいから、①同じものが欲しいし、②相手の欲望を自分の方に向かせようとするわけである。ヘーゲルは、この③を「承認」と呼んでいる。

  • 仲正先生の本、久しぶりに読みました。

    おもしろすぎて頭が変になりそうでした。


    帯には

    高校生もわかる「思想」入門

    なんて書いてあるんですが、
    こんなの高校生のときに読んでたら、頭破裂していた気がしますよ僕は。
    それは良いことかもしれないし、悪いことかもしれないし、そこは分からないんだけども。


    政治やメディアの場でなぜかよく使われるようになっている、哲学・思想用語を取り上げ、
    学術上の意味や文脈を自身の考えを織り交ぜながら解説していきます。

    その「仲正先生の考えを織り交ぜながら」の部分がだいぶ乱暴です。いい意味で。
    一つの項を読み終わって、そのキーワードに対する理解が頭の中ですっきりするなんてことはなくて、
    むしろ頭をざわざわにしていってくれるんです。
    こわい。たのしい。


    メディアに触れてるとホントに良く見る言葉ばかりですし、
    誰しも関係ある(ようにメディアで強烈に見せる)キーワードなので(いや実際みんな関係あるんですけどね)、
    どれか一つでも関心ある人はその項だけでも読んでみるとなかなか面白いと思います。


    例えば自分が何かしらのwebサービスに携わり、
    それを通じてメッセージを発するとき、
    そのメッセージがどんな意味を持っているのか、持ちうるのか、
    うまくコントロールはできないにしても、
    せめて敏感でいたいな、とは思っています。
    (webサービスじゃなくてもそうですが)


    あとがきで、言及してますが、
    「カリスマ」「セカイ系」「リア充」など他の候補たちの術語集もものすごく読んでみたい。
    続編に期待したいんですが、出ないかなあ。


    扱われているキーワード
    「正義」「善」「承認」「労働」「所有」「共感」「責任」「自由意志」「自己決定/自己責任」「「心の問題」」「ケア」「QOL」「動物化」「歴史(=大きな物語)の終焉」「二項対立」「決断主義」「暴力」「アーキテクチャ」「カルト」「イマジナリーな領域への権利」「「人間」」

  • リベラル(自由主義的)な立場の人は、いかに自分にとって正しく思えることでも、他人の心の中のこと、価値観にまで干渉することは避けようとする。
    リベラル系の政治哲学、倫理学では通常、正義の根底にあると想定される共感の問題はあまり表に出てこない。
    自殺を禁じるキリスト教の教えとの関係で、安楽死、尊厳死に反対する人が多いアメリカでは、安楽死らを容認することにつながるQOLに反対する意見も多い。
    近年、社会学や法哲学、文芸批評の分野で社会的規制の手段としてのアーキテクチャーの有用性とそこに秘められた危険が話題になっている。

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著者プロフィール

哲学者、金沢大学法学類教授。
1963年、広島県呉市に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科地域文化専攻研究博士課程修了(学術博士)。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。難解な哲学害を分かりやすく読み解くことに定評がある。
著書に、『危機の詩学─へルダリン、存在と言語』(作品社)、『歴史と正義』(御 茶の水書房)、『今こそア ーレントを読み直す』(講談社現代新書)、『集中講義! 日本の現代思想』(N‌H‌K出版)、『ヘーゲルを越えるヘーゲル』(講談社現代新書)など多数。
訳書に、ハンナ・アーレント『完訳 カント政治哲学講義録』(明月堂書店)など多数。

「2021年 『哲学JAM[白版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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