作品紹介・あらすじ
チベット、ナクチュ。外界から隔離された特別居住区。ハギリは「人工生体技術に関するシンポジウム」に出席するため、警護のウグイとアネバネと共にチベットを訪れ、その地では今も人間の子供が生まれていることを知る。生殖による人口増加が、限りなくゼロになった今、何故彼らは人を産むことができるのか?
圧倒的な未来ヴィジョンに高揚する、知性が紡ぐ生命の物語。
感想・レビュー・書評
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チベット、ナクチュ。外界から隔離された特別居住区。ハギリは「人工生体技術に関するシンポジウム」に出席するため、警護のウグイとアネバネと共にチベットを訪れ、その地では今も人間の子供が生まれていることを知る。生殖による人口増加が、限りなくゼロになった今、何故彼らは人を産むことができるのか?圧倒的な未来ヴィジョンに高揚する、知性が紡ぐ生命の物語。
「BOOKデータベース」より
一気読み.
舞台はチベットへ.続きが気になる.
このシリーズでもマガタシキ博士が.
起こりそうな未来に胸がざわざわする.
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森作品最大の魅力は、キャラクタでも意味なしジョークでもなく、読者を突き放す冷徹な筆致だと思っています。ドMには堪らない、あの説明してくれない感じね←
いや、私めっちゃ真賀田四季信者だし、犀川先生×萌絵ちゃん推しですけど←←
そんなドSな森先生が講談社タイガからリリースを始めた最新シリーズ「Wシリーズ」って、そんな旧来のファン層のドツボにジャストミート(古)してきたキャラと世界観だと思うんです。
何が最高って、トータルリコールっぽいことしてるのに、何か全然大事に巻き込まれてる感を出さない主人公ハギリのクールすぎる語り口ですよ。
彼のことを、未来版の犀川先生と私は勝手に位置付けています。犀川先生なら、きっともうちょっと不謹慎な意味なしジョーク言ってくれると思うけど←
前作でも命を狙われても一貫してクールでしたが、今作も武装集団から逃れるという、中々ストレスフルな展開なのに、ハギリ先生といい彼を守るボディガード達といい、まあ取り乱しません。
徹頭徹尾、クールです。
バイオレンスな展開してるのに、本作からは硝煙や血の匂いはしません。
好き!!!!←←←
もうちょっと位、ドンパチ感とかワーキャー感あった方が、今シリーズが森作品デビューな方には優しいと思うんですが、そんな擬音語や擬態語出てきたら、私がガッカリなんで良しとします!
キャラ語りは、きりがないのでこれ位にして。
世界観感想いきます。
人類がその叡智でもって不老不死というテーマをある程度達成した時、その副作用のように突如、「子供が生まれない」という危機に直面した近未来が舞台です。
人類という種が初めて直面した「種の存続の危機」がどうして発生したのかという謎に対して、ハギリと少数の博士たちが出したアンサが、これもまた超絶にクール。
そのクールなアンサを「あ、それすごい、なるほどね、ふーん」って、めっさ簡単に受容するとこ、すっごい好き…(痺)。
ネタバレになるのでこれ以上は避けますが、こういうとこが超絶にクールなんです(2回目)。
あー…これこれ、私が森作品に求めてるのこれだよォ…(泣)。森先生の懐具合なんて、正直全然興味ないからこういうのもっとくださいよォ…(暴言)。
人間が移動すること(旅・観光)に価値を見出さなくなり、
人間と「人間のようなもの」の区別がなくなり、
人類存続の危機によって戦争が無くなり、
やがて文明が緩やかに停滞していく、
そんな近未来の描写が、非常にファンタジックかつリアリスティックに描かれています。無さそうで有りそうな未来。
そして、某シリーズを彷彿とさせる「ある場所」の登場は、既刊の某シリーズを読んでいる森ファンには堪りません。もうこのシリーズ、森ファンへのファンサービスなんじゃないかしら。
そして、ラストに登場する「彼女」がハギリに見せた風景の衝撃。
彼女は人類をどこに導こうとしているのでしょう。
かつて妃真加島で、Fというキーをトリガーに仕掛けた彼女が、彼女の技術を応用して生み出したウォーカロンに仕掛けた色の魔法の意図は一体何なんでしょう。
うーん…
好き!!!!←
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Audibleで読みました。
この作品について語れそうな言葉がほとんど見当たらない。シリーズもので続くんだ。というひとまずの感想に加えて、Fシリーズからも繋がっているんだ。という、広大な森ワールドが、バッと眼前にひらけた感があって驚きと、ワクワク。単純。
そして、Wシリーズはもはや攻殻機動隊を見ているような気分になる。もちろんそれは大好物なやつなんですが、話のスピード感に負けて、大事なことを見落としてしまいそう。2度読みすると発見があるかな。
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タイトルが秀逸。
子供を産む人間がまだ残っているナクチュで起きる色々。
「人類のインテリジェンスの時間的限界とはどの程度か、精神はどれくらいまで崩壊せずに耐えられるのか、という問題だ。」
作者に対してすごいなぁと思うのは、人が長寿を得、代わりに子が成せなくなった社会。
人に近しい機械ウォーカロンとの識別。
こういった大きなテーマの中で見えなくなりがちな本質?のようなものを、しっかりつらまえている所だ。
この一文は、ポンと置かれた一文だったけれど、ものすごくゾッとする深みを持っている。
最後に、マガタ博士との再会?を果たすのだが、そこでも、人間が「間違えた」道を戻るにはどうすれば良いか、という台詞を呟く。
私たちは一時の過ちは犯すけれども、取り返しのつかない失敗などしないように思っている。
失敗は、時間さえかければチャラになる、と。
果たしてそうなのか?という疑問の石が置かれたように思った。
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Wシリーズ第2弾。
森博嗣ファンはきっと、タイトルからテンションあがる。
買った当初は別の本を読んでたし、なんとなーく、しばらく放置してたんですが、読み始めるとはやかった!
説明し難いが、引き込まれるものが森博嗣作品にはある。(ただし、万人受けはしないだろうけど……。)そして彼の思考が好きです。会議とか嫌がるハギリが冒頭にでてきたときは森さんっぽい(笑)と思いました。そーゆーとこが好き。物理的移動の煩わしさとか共感できる。
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Wシリーズ、第2弾。
このシリーズ、好き。
ハギリとウグイ、このやり取りが好きだ。
シキブ くん
名字はムラサキ。
さすがです。
こういうとこが好きなんだよなぁ。
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連作物とは知らず、この2冊目から読み始めたけれど問題なし。文章が理知的で会話の雰囲気などもなかなか良かった。
人工栽培によって半永久的な生を手にした人類は、子供が生まれないという問題に直面していた。しかし、チベットのナクチェ地区という場所では今でも子供が生まれているという。
学会でチベットに訪れたハギリ博士は、この問題に絡むクーデターに巻き込まれていく…
ウォーカロンという存在と「魔法の色を知っているか?」という言葉。子供が生まれない理由。「すべてがFになる」のマガタシキ。
謎がどんどん広がっていく。この先が気になります。
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森博嗣は、一体いつから、どこまで構想を立てた上で小説を書いていたのだろう。
前の話でマガタ・シキって名前まで出てきてたっけね? 今回は出てきました。ウォーカロンの反乱、になるのかなぁ?
人工細胞のおかげで寿命が限りなく長くなって、そのかわり子供が生まれなくなっている世界。唯一子供が自然に生まれている特区。この特区、神殿のあるとこ、百年密室のところ? 女王とかでてこない? 冷凍されてなかったっけ、あそこのひとたち。されてたよね、確か。
S&Mシリーズがあって、女王シリーズがあって、それからこれ、ってことなんだろうなぁ。
途中で分かったけど、淡々としているハギリ博士の様子とかも、もはや愛情を理解できていないからなんだね。子供を産めない、作れないとなると、親子の情とかも理解できないしなぁ。でもじゃあハギリ博士は誰から生まれたの? 自分の親のことは覚えてないんだろうか。恋人とか、夫婦とか、そういうものは、ああでも、前作で夫婦が出てきたよなぁ。やっぱり科学者だからなのかなぁ。思考が合理的すぎる。
子供を産める民族(というにはまとまりがない気はする)を求めてのテロに巻き込まれた博士たち、みたいな、バイオレンスというか、動きは激しい系だったかな、と。語りが淡々としてるからさらっと読んじゃうけど。
一番ぞっとした部分は、ヴォッシュ博士が問われた魔法の色で、「赤、黒、緑、白」と答えたところ。これがなんのキィになってかは分からない。結局、彼らを止めるためのコードはそれではなかったわけだし。ただ、講談社ノベルスのシリーズでそろそろ中ダレしてきてんなぁ、ってときに出た「赤緑黒白」は久しぶりに面白い森ミステリだった、っていう印象だった気がするのよ。内容忘れてるけど。だからさぁなんかもう、で、どこを読んでおけばいいの? って気分。
抜粋。ほぼほぼラストに出てきた文。これはほんと、ちゃんと物語を読んだ上で(たぶんS&Mや女王シリーズも読んだ上で)読むべき一文なんだろうなとは思った。
「人間は、どこで間違えたのでしょうか?」
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『死ぬことがなければ、生まれなくても良いのか』
Wシリーズ2作目。終わりの有無が尊厳に与える影響、ひいては、機能としてのrequirementの帰結を描く。生物と無生物の違いについては、S&Mの初期から触れられていたと記憶しているけれど、このような確度から描写されるとまた新鮮で、こみ上げてくるものがある。それにしても、ハギリとウグイの関係は、ミチルとロイディの関係と対比させると、より魅力的に映る気がする。
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真賀田四季シリーズは未読だし、SFは想像力が足らんので敬遠しがちだけどこれはホントに近未来でありそうで面白い。永遠の命を求め愛情を持たないアンドロイドに近付こうとする人と感情や繁殖機能を持たせようとするアンドロイドとの共存はうまくいくのか。
著者プロフィール
工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。
「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」
森博嗣の作品
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