- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062940344
作品紹介・あらすじ
いつか誰かが泣かないですむように、今は君のために物語を綴ろう。
僕は小説の主人公になり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。
物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。彼女の言う“小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!
感想・レビュー・書評
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主人公は売れない高校生作家の千谷一也(ちたにいちや)と一也の高校に転入してきた人気作家の小余綾詩凪(こゆるぎしいな)。
一也の父はやはり売れない作家でしたが、他界していて、入院中の妹の雛子がいます。
一也は雛子の入院費の足しに小説を書いているという事情があります。
一也は詩凪になぜか共作を持ち掛けられます。
詩凪がプロット担当で、一也が文章を書くことになります。
書いていくうえで、二人はことごとく対立しながら話し合いを進めます。
詩凪のつくった主人公のことを一也は、まるでダメな自分のことのように感じてしまい「僕が主人公の物語。僕に物語はなくていい。誰も読みたがらない」と言い拒否し続けます。
以下ネタバレですので、お気をつけください。
詩凪は「自分の作品のテーマを理解せずに読み手の心を震わせることなんてできないでしょう」と言います。
「君は成功者だ。勝利者なのだ」
「ねえ、あなたは、本当に、なんのために小説を書いてるの?」
「僕は、読み捨てられる小説でいいから売れたかった。彼女の言っていることは理想ばかりだ」
そして、一也と詩凪は共作を一時止めてしまいますが、一也は詩凪がこの一年、一作も本を出版していないことに初めて気づきます。
詩凪の秘密に気づいた一也は、再び詩凪と共に作業することを選びます。
「物語には嘘ばかりが書かれている」
「小説はきっと願いだと思う」
「違うんだ。そもそも小説っていうのは泣かないために読むんだ」
「明日からの自分が、もう涙を流さないでいいように、小説を読むんだ」
「わたしの物語をどこかで読んでくれた誰かが、もう悲しい思いで泣かなくていいように、そう願いを託しながら小説を書いているの」
そしてついに一也は書き上げます。
一也はその次に必ず詩凪のための物語を書きます。
一也のデビュー作は主人公が、傷ついたヒロインを助ける話でした。
高校生作家の物語ではありますが、小説とは何かということを、新鮮な気持ちで考えさせられる物語でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
相沢沙呼さんのミステリー以外を読んでみたくて。
中学生にして、文芸新人賞を受賞し、小説家デビューを果たした高校生・千谷。彼は、大して売れない小説家だった父親を亡くし、病気の妹の為にも、経済的に小説家として成功が必要だったが、売上は伸びない。自分の作風さえ認められなくなっていた。
そこへ編集者から、人気女子高生作家・詩凪との共作の誘いを受ける。彼女も、バッシングに心病んでいた。
小説を紡ぐ高校生達の苦悩。
小説は、現実に立ち向かう力とする詩凪。
誰の中にも物語があると言う者。
ぶつかり合いながら、二人は合作で次のステージへ上がるんです。
皆んな、苦しんで創作してるんだよってわかってもらえると良いね。 -
「小説を書くこと」と
「小説を読むこと」は違う
「小説を読むのが好きな人」なら
楽しめる内容だと思う。
どの作者も最初は、初めから万人のために書くわけではなく、誰かのために書き始めるのだろう。
情熱の火で暗闇を照らして、
自分を信じて前に進むしかない。
どこかに、誰か伝わる人がいると
信じてひたすら進むしかない。
情熱の火が消えたら
暗闇の先も見えず、何もできない。
好きなモノを「嫌い」にしないと
やりようがない気持ちってのが
痛い程わかる…
自信がなくなり、成功している方法に飛びつく、自分を見失う。
小説家としてデビューしたものの
ネット上のレビューで酷評
売上部数も伸び悩む状態
物語が書けなくなってしまった主人公は、その火が消えてしまっているところから始まる。
そして、同時期にデビューした天才作家であり頭脳明晰、誰からも好かれる顔を持つが美少女作家と出会い、二人で作品を創ることになり…
「ボーイミーツガールモノ」で
「作家モノ」と分類することができる。
主人公視点の描写は男子高校生のアレ
でヒロインに「卑猥」と叱られても仕方のない感じでしたけど、小説への想いは二人ともとてつもなく熱い。
プロの作家として見てきた「現実」と物語がもたらす力を信じる「理想」がぶつかり合いながら、前に進んでいく
二人の熱量に、「小説を書きたい人」なら、読むのが苦しい、辛い…
でも、更に心の火がもっと燃えるかもしれない。そんな物語。
・苦労して書いた作品も、その数分の一の時間で読んだ読者の評価に左右されてしまう。
普段、このレビューもそうですが
好き勝手書かせてもらってます。
その弊害にも触れるし、出版業界の問題にも触れる。押さえるところはちゃんと押さえていて素晴らしい。
同じ講談社タイガの「絶対小説」
の混沌ぶりも「創作の想いの爆発」という印象を受けたけど、この作品も二人とも想いが破裂し合いつつ、新たな希望を膨らませてラストに向かって行くのが苦しいけど心地良かった。
九ノ里は、いい奴…
成瀬ちゃんも、いい子…
主人公の妹は、痛いオタク… -
初めての相沢沙呼作品でしたが、相沢さんの作品というのはこんな感じなのでしょうか?
わたしには合わなかったようです。
主人公の高校生作家、千谷一也のウジウジさが後半まで続くので、なかなか読み進められませんでした。
映画にもなっているようなので、読まれる方の好みで人気のある作品なんでしょうね。
いいな〜と感じた登場人物は九ノ里ですね。 -
学生作家の2人が小説を合作するという設定が好き。作家の気持ち、小説を書くことへの向き合い方などが描かれているのも面白かった。
主人公が悩んでる期間が長かったのが残念。まぁ悩みの部分が作者としては一番伝えたいところだったんだろうなとは思った。 -
う~ん、これは少し、構成で損しているのではないかと思いました。
青春ものということもあるかもしれないが、文体が時折、軽い感じになるのが気になる上に、とにかく負のオーラを纏った主人公に感情移入出来ない。
と思ったら、急にヒロインと意気投合みたいな感じで、第三話を読み終えた時点で、読むの止めようかなと本気で思いました。
しかし、第四話に入ってからの急展開で、雰囲気がガラリと変わり、軽い文体もほぼ無くなり、物語の世界に一気に入り込めました。
ちなみに、私は「小余綾詩凪」が「千谷一也」に文庫本を叩き込むシーンにグッときたのですが、この時点では、まだ小余綾の真相を知らなかったので、それも含めれば、また違った感動を得ることになります。
そして、この作品で印象的だったのは、小説を書くことと、自分自身を好きになることや認めてあげることが、繋がっていること。もちろん、小説を書くことの出来る素晴らしさや大変さも実感したのですが、誰の中にも伝えたいことや想いがあること。そこには、辛いことや苦しいことや、しょうもないこと、何でも含めていいんだよ。他人が何と言おうが、あなたの中から湧き出してくるもの、全てがあなた自身の物語として認めていいんだよ。と言われているようで、自己肯定の大切さを感じました。
なので、出来れば、最後まで読んでほしいと思います。
それから、主人公の一也の序盤の感情移入のしづらさは、作中作なのかもしれません。物語の中で一也が、自分みたいな主人公の物語なんて、誰も読みたくないだろうと言っていたことに対して、相沢さんが意図的にやっているのかも。
もちろん、小説の素敵なところが、この作品に書いてあることだけではないとも思いますが、やはり、青春を謳歌している方々には、共感出来る点が多いのではないか、とは思います。
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「辛くて、辛くて、たまらない……。わたし、今まで、小説って楽しいから書くものなんだと思っていました。どんな作家も、書くのが楽しくって仕方なくて、だからあんなにも楽しい物語が生まれているんだって。教えてください。千谷先輩。物語って、どんなふうに生まれるんでしょう──」
売れない高校生作家と美少女人気作家のふたりが、一冊の合作を作ろうとする物語。
タイトルとあらすじだけ見て、「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 -Time to Pray-(時雨沢恵一)」みたいな話かなと思いましたが違いすぎた。
これは、魂の叫びだ。
全編が、子どもたちの慟哭で出来ているような、そういう小説だ。
映像化作品特集から、凄く熱い感想をhttps://booklog.jp/users/heavycandy/archives/1/4062940345拝見して、読んでみました。ありがとうございます。
主人公は売れない作品を書き続けることに疲れて、でも物語を書きたくて、何度も何度も倒れ、立ち上がり、泣き言を言う。ウダウダして前に進めない主人公を読みたいだろうか?そう問いかける主人公を読む我々はまさに今、ウダウダして前に進めない物語を読んでいる。
それが辛くて幾度も本を閉じてしまう。
読者はもちろん、彼が最後には書けるだろうと思っている。だからページを捲ることが出来る。
ある程度本を、特にヤングアダルトジャンルの本を読んでいる人は「売れ筋」の小説が定形化して似通ったものになっていることはよく分かっていると思うけど、それ以外の本も是非売れて、欲しいなと…思うのです。
小説の神様って、なんでしょうね。 -
一也と詩凪の掛け合いが、見ていて微笑ましかったです。スランプに陥る作家、千谷一夜の作品をファンとしていつまでも待ち続けてくれる編集の河埜さんと一也の妹、雛子ちゃんの存在が温かかった。
ラストで一也が気づく、「小説とは、◯◯だと思う」のセリフにグッと来ました。シリーズの続きも読んでいきたいです。 -
小説を書く人は、何故書いたのか、何故書いているのか、そして何故これからも書くのか…? 主人公たちが紆余曲折、試行錯誤を延々と繰り返しているようですが、そういうプロセスの苦悶に苛まれずに書くことはできないのだということなのですね。書き上がった小説が本になったのか、売れたのかは書いてありませんが、そういう結果はどうでもよくて、ただ、小説を書き上げ、これからも書き続けていくということでいいのでしょう。