- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065131251
作品紹介・あらすじ
大切なのは、「どう」学べば他人と比べて成績を上げられるかではない。
「何を」学べばあなたが生きていくのに意味があるかだ。
――あなたの「勉強観」が、この1冊で変わる!
学力の個人差における遺伝の影響は50%。しかし、これは決して残酷な現実ではありません。皆さんの遺伝的素質を花開かせるために、教育があり、学習があるのです。
教育とは決して他人よりもよい成績をとろうと競い合うためでなく、また自分自身の楽しみを追求するためでもなく、むしろ他の人たちと知識を通じてつながりあうためにある。その意味で、ヒトは進化的に、生物学的に、教育で生きる動物なのです。
さあ、あなたはこれからどこに向かって、何を学習し続けていきますか? いま学校で勉強している学生の皆さん、そして昔勉強で悩んだことがあるすべての大人の皆さんに、生物学の視点から「勉強する意味」をお伝えします。
<本書の構成>
序章 教育は何のためにあるのか?
第1部 教育の進化学
第1章 動物と「学習」
第2章 人間は教育する動物である
第2部 教育の遺伝学
第3章 個人差と遺伝の関係
第4章 能力と学習
第3部 教育の脳科学
第5章 知識をつかさどる脳
感想・レビュー・書評
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この本は、分かったつもりになっている事、あるいは、肌感覚として理解している事を、しっかりとした言説で言語化し、スッキリさせてくれた。
先ず目を引いたのは、人間の3大欲求についての考察。性欲、食欲とあと一つ。睡眠、排泄はそうだが、別に何か獲得が必要な外部に向けた欲の類ではない。この本では、それを学習欲としようと。生きるための知識、経験を得ること。そして、それを同じ種である人間に伝え、共有する。ここに、教育の本質があるようだ。幼児ですら、利他的に振る舞ったり、見つけたものを〝教える“行動を取る。
これが人間の形質ならば、自粛警察や論破の理屈なども分かってくる。人間のもつ社会性にはルール、つまり、知識や規範の共通化が必要であり、その適用について、人は本能的な側面を持つことから、教育が効力をもつ。学校教育に限らず、世の中のルール全てについてだ。先の自粛警察は、この本能に従い、他者への想像が欠如した形で、押し付けを行う。論破は、ルールの解釈を巡る勝ち負けの決着だ。それは、あなたの感想ですよねでは済まさず、必死に反論する事がしばしば。
こういう考え方を知ると、人間をまた違う角度で見てしまう。承認欲求、支配欲、ルールへの固執、宗教、哲学。社会性を生むための学習欲が、形を変え、もしかすると、人間社会における対立の根源の一部になっているかも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いや、最も興味のある内容だし、おもしろいはずなのです。けれど、読んでいると寝てしまっている。その繰り返し。電車の中で立って読んでいればいいのですが、座るとほとんどダメです。そんな中、眠気が吹っ飛んだのは最終章の少し手前、「個人差と教育環境」という節です。引用します。「何らかの望ましい素質のある人には自由な環境を与え、素質のない人には手厚い教育的な手助けが継続的に必要」「仮にあなたが数学や語学の才能があって、ふつうにしていても周りの人たちよりもそのことに強い関心が向いてしまったり、自分からどんどん学びたいことが出てきてしまうようなら、役に立ちそうもない先生の指導など無視するか、自由にさせてくれる先生の下で、自らの関心に従って学習を進めたほうがいい、しかし才能が乏しくて、自分から進んでやる気にならなかったり、やってもどうしてもわかるようにならないとしたら、厳しい先生や上手な先生の導きに従ったほうがいい」「憂慮する必要があるとしたら、才能があるのに、それを自由に伸ばすのを妨げる教え方に無理やり従わせようとする先生や学校の下にいる人、あるいは才能がなさそうという理由からよい教育を受けることを放棄させられている人です。」ふだんから感じていたことが的確に表現されています。生徒ひとりひとりをしっかり見て、それぞれにあった指導をしていく必要があるということでしょう。こちら側の指導のしやすさから、全員に同じ課題を与えるということも慎まなければなりません。また、前半には、学業成績について、遺伝が50%、環境が30%、本人の努力で何とかなるのは20%程度という記述もあります。努力が続けられるかどうかも遺伝だったりする可能性がありますから、なんともやるせない結果です。我々ができることは、本人が努力しやすい、よりよい環境を与えてあげるということなのでしょう。子どもたちのもっている遺伝的な素質を見抜くことも必要になるでしょう。そのためにも、つねに子どもたちと向き合っていたいものです。
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[出典]
「「逆張り」の研究」 綿野恵太 -
教育と遺伝の関係はタブーという風潮もある中、明確に影響すると示しており、学ぶところが多かった。特に一般知能説と多重知能説の違いを学べたことは大きな実りだった。
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個体学習と社会学習の説明を読んで、すごくすっきりした。
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・“一人ひとりが遺伝的差異のある独自の存在“であることを出発点に、格差や差別を解消していくという考え方に強く共感。
・遺伝子研究が進み、精神疾患との関係から心理学への適用は見受けられていたが、具体的な教育方法、学習環境の整備への応用に距離を感じていたところ、この谷を埋める研究の可能性を感じさせる一冊。
・遺伝による一人ひとりの差異をきちんと見つめ、“どう”学べば人よりよい成績を上げられるかではなく、“なにを”学べばあなたが生きていくのに意味があるか、に目的をシフトさせていくことが必要だろう。これを考えることこそがキャリア教育にほかならない。