銀河鉄道の父 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065183816

感想・レビュー・書評

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  • お父さんもがんばった。

  • 賢治の父政次郎を中心とした家族の中の宮沢賢治。これだけの愛情を注がれて成長し模索する賢治。これまでの漠とした宮沢賢治のイメージからはなれより身近な感じがした。妹を失う賢治、子を失う親。辛いことがたくさんあったであろう父親の晩年を思う。

  • 宮沢賢治の父の視点から語られる作品。

    作家としての賢治ではなく、賢治という人間が育った背景が綴られていました。

    父の政次郎が物凄い親父だなと。明治の頃の家長としての毅然とした考え方と、大正の父親として家族に何ができるかを考える事ができた立派な人だったんだなと感じました。中々自分の体験していない事を認めたり信じたりする事は難しいですからね…

    作家として早熟型で無かったのは父親の抑制もあったのかも知れませんが、そもそもこの父親無しにしては賢治が作家になれたとは思えませんでした。

    そして印象的な台詞も幾つか

    ・賢治が作家としての道を歩み始める際に政次郎がイチに語った
    「最初の一歩が大事」
    という旨の言葉

    ・病状に伏せ、机に向き合う事を諦めかけた賢治に
    「寝ていても人は前を向ける」
    と語った言葉

    自分もいつか父親になる事があれば読み返したいなと思えた一冊でした。

  • 文字通り宮沢賢治の父政次郎から見た宮沢家の物語。
    とにかく子煩悩な父親だったのが意外でした。自ら賢治の看病をしたり、常に賢治のことを第一に考え資金を提供したりと少々過保護なのではと思うところもありますが。。。ここまで子を愛せる政次郎がまぶしいです。
    政次郎の目で語られるので賢治以外の妹、弟の様子も垣間見えて興味深い作品です。

    また、昭和な考えが何かと上書きされる昨今で、大正世代の生活の様子や価値観がなんだか新鮮に感じました。それでも女性が社会に出るようになっていく様子はどの時代も同じなのかと親近感すらわきます

  • 親の愛情は宇宙よりも広い。
    自分が親になることがあれば、もう一度読んでみたいな。

  • 実は宮沢賢治先生の本は読んだことがなかったけど、ずっと気になってた。子供の頃、銀河鉄道の夜を読もうとして、少し怖いのとよくわからなくて苦手意識ができ、大人になってもそれが抜けなかった。その克服として気になった本を読んでみた。
    先生の親父さん、なんとも愛らしいキャラ。厳しいけど子供が大好き。その葛藤する姿に深い優しさを感じ、それで読みやすかったと思う。
    この時代まだまだ「人生50年」とか言われていて短い。一生や日々の生活が人にとってとても重い。大事にするために、仕事も勉強も厳しく決めて導いてあげる必要があったのかなと。いまは「人生100年」。自由が増えた代わりに一生や日々の生活が軽くなってるんじゃない?なんちゃって。とはいえ、自分は、大事だからと頭ごなしや厳しく言われるの大嫌いだ。だから、自由な雰囲気はいいなと思うし、もっと素直に優しさを出していければいいのになとも思う。
    あと、やっぱり覚悟を決めた表現者の残す作品はその人の何かが宿るんだろうなぁ。前に読んだ「楽園のカンヴァス」でも、ルソーの気迫が作品に移るような描写に引き込まれたけど、今回も同じような感動があった。
    芸術家の作品、ほんとポジティブだ。

  • 素晴らしい小説だった。親子愛を描いた本として傑作だと思う。この小説での父・政次郎は、宮沢賢治という、人とは一風変わった個性と真摯に向き合う、人間味あふれる父親として描写されている。実際の父親がどのような人であったかは、資料がないために、はっきりとはわかっていないらしいが、いつの時代でも、このような父親のもとで育つ子供は幸せだと思う。賢治の最愛の妹・トシが亡くなる場面であったり、その約10年後に賢治が亡くなる場面は、残された人たちの気持ちを考えると、とても辛かった。

  • もうめちゃくちゃ最高でした。
    宮沢賢治のお父さんの話という前情報にもならない情報だけで読んだが、このお父さんが本当に愛情深く宮沢賢治を大事にしていたのが伝わった。
    宮沢賢治のお父さんは息子である宮沢賢治の事を「凧のようだった」と。こちらがしっかり握ってやらないと、どこへ行くか分からなかったと言っていたように宮沢賢治に振り回されながらも家族の絆、葛藤などがぐっと胸に焼き付きました。これを機に改めて宮沢賢治の作品に再度触れてみるとより深く感じることが出来た。
    本当におすすめです。

  • まるで宮沢家を見てきたのかなと思うくらい、そして今後の実在人物の印象がぬり変わってしまうくらいに強く心に残りました。特に後半は、感情の波が何度も押し寄せてきてとても大変でした。読んでいる間の生活は、この作品に「今面白い本を読んでいる」という充足感ももらいました。手にとれて良かったです。

  • 当時の理想とされる、厳格で威厳のある大黒柱像から外れていることに葛藤を覚えつつも、息子を守りたい、なんとか幸せになってほしいと願い支え続ける政次郎の父親像に感動。

    同時に、父のようになりたくてもなれず、普通の大人としてさえ仕事ができない賢治の自己嫌悪。その中でも、父の支えがあったから人生終盤で物語に行きつき、宮沢賢治の作品が生まれて今も読まれている。偉人も周りの人に支えられて偉人となっていることをしみじみと思う。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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