二人がいた食卓

著者 :
  • 講談社
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065218747

作品紹介・あらすじ

良かれと思ったことが、押しつけがましさに。理想を追い求めるあまり、頑なになる。相手への気遣いが、裏目に出る。一番わかってほしい相手に限って自分の努力が伝わらない……。そんな夫婦関係の迷宮に迷いこんだ泉と旺介、きっかけはまさか、食の好みの違い……!
ドリア、生姜焼き、ハンバーグ、キッシュ……出てくる料理は、「食の検定」1級を持つ著者だからこそ表現できる、読むだけで美味しそうなものばかり。だからこそ、夫婦のすれ違いのきっかけとして、鋭く鮮やかな物悲しさを湛えています。
おいしさは恋で栄養は愛? 家族として、好きを越えた関係を築いていく覚悟を持てるのか。泉と旺介、二人の選択とは。

感想・レビュー・書評

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  • 食卓といえば、向き合う人のいる温かな家庭を思い浮かべるのだが…。

    これは、読み進めるほど辛くなっていく。
    苦しくなっていく。
    何故か胸の締め付けられるような…。
    とにかくしんどいのだ。
    しかし、どうなるのか確認せずにはいられない…
    心理戦、まさに心理戦だった。

    どちらの味方⁇と聞かれても…難しい。

    夫の体調を管理するべく、完璧な料理を朝晩作り続ける妻。
    だんだんとその料理を口にするのも苦痛になってくる夫。

    食べ物に関することは、大事なことだが
    何事もほどほど、とか良い塩梅というのもあって然りで…。

    自分が思うにジャンクなものほど美味しく感じたりもするし、あっさり茶漬けでもいいし。

    とにかく執着もなければこだわりもないので、手抜き料理もしばしばある。

    以前、同僚から「食」という文字は人を良くするって書くやん、だから大切やでって言ってたけどその人の持参してたお弁当は、白ごはんの上に鰯の甘露煮がのってた。種類は無いが栄養はある。

    ただイベントの時、みんなのお昼ごはんをまとめて買って来てくれたのが、デパ地下の一口サイズのおにぎりやサンドイッチなどでサッとつまめて見栄え良く種類も豊富でサイコーに美味しい品々だった。

    誰にとってもちょうど良い食事ってのはなかなか難しいのかもしれない。

  • 新婚さんの楽しい食卓の話と思いきや、
    読み進めるうちに少しのズレが出てきて嫌な予感しかしなくなった。

    お互いの思いやりが小さなすれ違いを生み、
    途中から読むのが辛くなるぐらい悲しくなって…

    夫婦、または家族の食卓の理想って何だろう?と
    思わず考えてしまうストーリー。
    主婦にとっては共感する部分が多いと思う。

  • 食をきっかけに、夫婦それぞれの求めるもののギャップが顕在化していく話。
    とにかく美味しそうな料理の描写が殺伐としたストーリーに添えられており、かなり胃にくる。色んな意味で。

    あらすじに「良かれと思ったことが、押し付けに」と書いてあり、たしかに多少独善的なところが泉にはあるけれどこれはそんなに異常なことなの…?と思った。
    そもそもコレステロール値引っかかってんじゃん…とか、いい歳した男がファミレス舌でゴネてる方が無理なんだけど…とか個人的には気になってしまうんだけど、それらは本質的な問題じゃないんだろうな。でも、なんだろうな、とにかく腹立つなこの男……。
    「美味しいもので相手の口を塞いでんでしょ、ほら?美味しいだろ?文句ないだろ?って」的な嫌味を不倫相手が吹っかけてくる超絶胸糞シーン、いや言いたいことのニュアンスは分かるし、ああ…そこが軋轢生んでたのね……ってのは分かるんだけど、いや!!!!美味しいと自分が感じてんなら文句ねえだろ!!!何なんだお前は??!!!という気持ちが先行してしまってどうしてもあと一歩飲み込めなかった。

    とはいえ、人間関係というものは自分がどれだけ滅私奉公しようが世間的基準で正しく努力しようがそれがそのまま互いの関係値に反映されるわけではない。ということが往々にしてある。理不尽に思えるし、そもそも自分の努力は世間的には正しくても二人の関係を良好に保つのには適切ではなかったのかもしれない。
    そういう難しさをありありと見せつけられたように感じた。身に覚えがある話だから泉の肩を持ってしまうのだろうか、いや、いや!否!それを差っ引いてもこの男大嫌いだ……。何だ社内結婚社内不倫ってイカれてんのかこいつ……。

    思いやりとは、正しさとは何なのか。殴りつけられながら考えさせられるような作品だった。

  • 苦しさがすごい。

    よく「食べることは生きること」と言うけれど、相手の「食べること」の否定が、夫婦としての相手そのものの否定になってしまったというか。
    食事に対する食い違いがお互いをどんどん苦しめ、追い詰めていって、それ以外の部分で相手に惹かれたり救われたりしていても、修復できなくなってしまった話だった。

    いい人が多かったし、主人公の父に対する旺介のシーンと、義父母の30年の話、北極から来た人の話、「おいしいは味じゃない。食べたいものを食べるから」の話、魚屋の身贔屓の話など、じーんとしたりハッとさせられるエピソードも多かったけど、それだけで問題が解決するわけじゃないところがリアルだった。そしてよけいに苦しい。

  • 料理が好きでない私から見たら、泉さんはすごい奥さん。相手の健康を思って、良かれと思って作っていた料理が相手を苦しめていた。読んでで、気の毒になる話だった。もう少しお互い話をして、歩み寄れたら良かったのにと思うばかりだった。泉さんに幸あれ。

  • 料理を媒介にして結婚した男女の、早すぎる破局を描いた作品。うーん、なんというか、2人の言動がまったく理解できないまま読了した。仕事も、家庭も、出来る妻を“演じる”泉には違和感しかない。言いなりだったはずの夫・旺介が起こした“謀反”も、本当の理由は明かされないままだ。当事者たちはわかっているのかというと、お互いに話を逸らしたり逃げたりするだけで向かい合おうとしない。結局、この2人は何がしたかったの? ストレスだけが残る読書だった。

  • 自分の理想を実現したい気持ちはわかるな。

    でも、そんなことは滅多に実現しないんだよね。
    で、その時になってから、もうもとには戻らない事を痛感するんだよね。
    そうは知りつつ、適切な折り合いがつけられないのが人生って事ですかね。

  • 文章が読みにくい。
    なんだろう、てにをはが間違ってるわけではないけど、うーん、修飾語の使い方なのか、読点の使い方なのか・・・
    スッと文章が入ってこない。疲れる。

    内容は、夫婦のすれ違いだけど、まぁどっちもどっちだね。
    こんな妻は疲れるだろうなぁ、と妻の立場からも思う(笑)

  • 人それぞれこだわりがあるのは当然だが、他人に理解されようとするのはどうかと思う。ましてや、「夫婦間の食のこだわり」って、こだわるべきことか自分には、少し重く感じた。結局、食べることはその人そのものが現れ、その食が合わないということは、その人が合わないということかなと思った。
    食べることが好きな自分には、残念な本でした。

  • 真綿で首を絞めるというのはこういうことか。
    すれ違いの話ではあるんですが、普通のすれ違いと違って、主人公が夫のことを対等な人として見ていなかったのが別れの根本的な原因であるように思います。徹頭徹尾、自分の正解にこだわって相手の希望をほぼ聞かないことが麻生サチのエピソードから分かって恐ろしかったです。外堀の埋め方も、日常的に正論で逃げ道が潰されていたところもぞっとしました。夫はそんな風に表面を取り繕われて、自分の心情は妻を含めてだれも知らないなんて孤独だったんだろうな。

    行間を変に深読みしただけかも知れませんが、個人的に夫は、お互いダメなところも愛し合っていけたらいいなと考えているタイプだと思うので、読んでいて辛いシーンがいくつもありました。主人公の、目の前の人より、理想の目の前の人を求めてしまう気持ちは痛いほどよく分かるけど。

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著者プロフィール

東京生まれ。1996年、脚本家デビュー。1999年、テレビドラマ「入道雲は白 夏の空は青」で第16回ATP賞ドラマ部門最優秀賞を受賞。2013年、『給食のおにいさん』で小説家としてデビュー。同作はシリーズ化されている。他著に、『キッチン・ブルー』『イメコン』『バー極楽』など。

「2020年 『二人がいた食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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