憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203530

感想・レビュー・書評

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  • 妄信的に護憲派な人も批判しながら、9条がいかに珍品かを語る。異常であり、奇跡でもある。
    先の大戦、戦争を肯定した側を異常者として切らずに、なぜ肯定したのかを考える。宮沢賢治。そうしないと、同じ失敗を繰り返す。そうしても繰り返すかもしれないけど。

  • 実に、日本国憲法とは、一瞬の奇蹟であった。それは無邪気なまでに理想社会の具現を目指したアメリカ人と、敗戦からようやく立ち上がり二度と戦争を起こすまいと固く決意した日本人との、奇蹟の合作というべきものだったのだ。しかし今、日本国憲法、特に九条は次第にその輝きを奪われつつあるように見える。この奇蹟をいかにして遺すべきか、いかにして次世代に伝えていくべきか。お笑い芸人の意地にかけて、芸の中でそれを表現しようとする太田と、その方法論を歴史から引き出そうとする中沢の、稀に見る熱い対論。宮沢賢治を手がかりに交わされた二人の議論の行き着く先は…。

  • 本の存在は気になってたけど、なんとなく避けてたもの。爆笑問題は好きだけど、その本ってどうなのよ、みたいな変な身構えがあったりして。でも、読んでみて恐れ入りました。ニュース番組やらで色々意見するってだけでもかなりの知識が必要なのは自明だし、更にはそこにトンチも働かせようとなると、そら並大抵では無理ですわな。憲法第九条の堅持も含めて、暴走内閣の抑止効果を強く期待します。

  • 爆笑問題の太田氏と文化人類学者の中沢氏が憲法九条について語り合った内容の議事録。2006年という今とはやや状況の異なる時代に書かれたものだが、刺激的。宮沢賢治や落語、武士道を引き合いに出して九条にアプローチしているのは面白い。我々含む「戦後の日本人」は、戦前の思想を危険思想としてタブーにしてきたきらいがある。見たらそこに戻ってしまうんじゃないかという恐怖で蓋をし、未だに見ないようにしている部分。その蓋を恐怖に負けずに開ける作業が、九条を語る上で必要ではないか。
    本編とはずれるが、感受性は失われたものとの対話から生まれるっていう文言も、読んでハッとした。同時代に生きてるということは、似た様な思想を持っていることに違いないからね。もっと本を読まねばと思った一冊。短いので軽く読めます。

  • 田中光の言動はテレビで見る限りまったく同意できないものだったが、意外なことに九条に関してはリベラルな意見をしっかり持っていたので驚いた。宮沢賢治と田中智学、石原莞爾の関係から平和憲法を語るとは。実によく本を読んでいるし、深く考えている。TVでのコメントはやはり芸人としての立場をわきまえた悪ぶりだったようです。中沢新一の解説が非常にバランスが良く、九条の理解が深まったのは収穫だった。2006年の発行だが今、まさに読むべき状況になってしまった。

  • 太田光・・・あまり好きではなかったけど、この本を読んで考えが変わりました。ものすごくしっかり物事を考えている人だということが分かりました。同世代の人間として、ちょっとたのもしい気がしました。日本の憲法について、とくに九条についてはもっとしっかり学ばなければいけない。外国のことをよく知らないから、日本の憲法の、とくに九条の特異さが見えてこなかった。なぜ世界遺産にとまで言っているのかがとても分かりやすく説明されている。それだけ失ってはいけないものだったのだ。国家を一つの生命体だと考えると、自分と他者を見分けて、外から入る異物を取り除かなければいけない(免疫機構)・・・これが戦争へと発展することもある。しかし日本は、どんな場合にも戦争という手段(免疫)を放棄している。こんなことをしているのは母体だけだ。そう、女性にとって異物である胎児を9ヶ月に渡って体内に維持し続ける。それを排除しない。これはすごいことなのだろう。日本という国は、そういう意味で母親の優しさと強さを併せ持った国といえるのかもしれない。アメリカ人が作ったのかどうかは別として、日本人はこの憲法を守り続けるべきなのだろうと思う。

  • 近々衆議員選挙がありますね。憲法解釈も安倍政権の重要課題の一つですし、改めてこの本は読み直されるべき本です。戦後60年の節目、小泉政権の時も同様に憲法解釈に関する議論があったこと、そこから今日に至る議論の進展を問い直す意味でも。

    とは言え、私自身、先程中沢新一・波多野一郎『イカの哲学』を先に読みブクログレビューした後、そういえば……と思い本棚を整理してたらあったので読んだという話(笑)『イカの哲学』を理解する意味でも、こっちを先に読んでおけば良かったですね。『イカの哲学』を先にブクログでレビューした時は、都合が良いように波多野一郎を持ち出しただけじゃないかと中沢氏を批判しましたが、『憲法9条を世界遺産に』からの話の繋がりとしての平和論であったことも納得です。こっちには社会主義、共産主義に関する言及もあります。

    とは言え、私自身の立場としては、「憲法9条を世界遺産に!」という主張、平和憲法は特異な存在として日本人に君臨し、国家が守る法としては確かに無茶ぶりであるでもだからこそ守るべき!という論には、サムい感じを受けます。

    もうすぐ戦後70年を迎える今や問題なのは、平和憲法を守るという体裁のもと隠されたり、解決が困難になったり、実生活にまで不安の影を落としつつもどうすることも出来なかったりで、山積に山積しきった問題。すなわち、主権国家としての日本の立場なんだと思います。おそらく、戦後60年の段階ではまだ「余裕を持って、お笑いにしつつ」扱えたのだと思います。今は誰もが内心「笑ってる場合じゃねーよ!」という切羽詰まった、焦った雰囲気を感じます。

    しかし、改憲の立場や安倍政権が、この二人ほど「芸のある」やり方をしたとは思えません。テレビの視聴者に向かって息を巻き議論の熱を上げた太田氏と違い、特定秘密保護法という姑息な手段を使いました。殺されるのも覚悟で話し、討論せず、隠しました。このことは忘れるべきではない。

    かと言って、護憲側にも、太田氏程の芸はない。この本を読んでいてあっちに行きこっちに行きの議論ではありましたが、本の中身はいたって筋が通っている。中沢氏の論調のせいか若干ふわっとはしましたが、それが彼らの持っている憲法9条に対する覚悟を少しも揺るがせるわけではないとは思います。

    さて、今お二人はどういう心境で安倍政権を眺めているのか?

  • 日本国憲法第9条と宮沢賢治との関係が私にとっては初めてのことで驚いたが、宮沢賢治のことを一面的にしか捉えられていなかった私にとってはいい示唆を与えてもらったなと素直に感じているところである。

    太田光さんがおっしゃった
    「この憲法は、アメリカによって押しつけられたもので、日本人自身のものではないというけれど、僕はそう思わない。この憲法は、敗戦後の日本人が自ら選んだ思想であり、生き方なんだと思います」(p56)
    というコトバに、全てが集約されているんじゃないかなと。

    2016.09.06再読

  • 【超速読】テリー・ギリアムの件で対談者が得意になって話してるのは、正直かなり「痛い」と思います。というのも太田さんが愚直なまでに個別の信条にこだわることは、彼の表現(お笑い)を受け手が柔軟に解釈できなくなることにつながるわけで、淀川さんによる「シンドラーのリスト」批判の本質とよく似ている。今でいえば何とか和義?、坂本龍一、松本人志や私生活を丸裸にされる芸人さんのように、発信者の努力の跡や知力の限界がちらつくと、表現したものが独立できなくなる。あの総理になったら、の番組もひどかったですね(^q^)

  • 贈与とは愛なんだ、という中沢新一の話が印象に残った。

    以前、『ケルトの宗教 ドルイディズム』の中にある中沢新一の文章を読み、この人はすごい、と思った。
    それからゲンロンカフェで行われた東浩紀と中沢新一の対談を聴いて、中沢新一にさらに興味を持った。

    たまたま家にあったこの本を手に取ったのには、そういいう経緯がある。

    僕は次に、中沢新一の『カイエ・ソバージュⅠ 人類最古の哲学』を読んだ。
    これらかも、彼の本を読むつもりだ。

    中沢新一は、今の僕が求めている何かを与えてくれるような気がする。

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著者プロフィール

一九六五年埼玉県生まれ。八八年に田中裕二と「爆笑問題」を結成。二〇一〇年初めての小説『マボロシの鳥』を上梓。そのほかの著書に『違和感』『芸人人語』『笑って人類!』などがある。

「2023年 『文明の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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