- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087204445
感想・レビュー・書評
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アイデンティティも時代も国も家庭環境も…。
私はずっと悩み続けてきたし、まだ悩み続ける。
でもそれは決して悪い事ではないし、むしろ糧でしかないと思える。
放棄したり誰かに委ねるのは楽かもしれない。
けれども、と私は思う。
やはりそれは力になるのだ。
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いま漠然と人生に悩んでいます。
筆者がいうには悩み続ける事が死の抑止になり自分の生に意味を持たせる事ができる、と。
傷つくことを恐れて人との関わりを避けて来ましたが、結局は人と繋がることでしか人生を満たすことはできないのですね。。 -
素晴らしい。悩みを解決してくれる本ではないが、悩むことを肯定してくれる。
序章,1章 悩みの背景と解決策
情報化社会やグローバリゼーションによって自他の境界が曖昧になり、アイデンティティが不安定なものになっている。
便利になりすぎたせいで1人でも生きていけるようになり、これが孤立化に繋がっている(合理化の副作用)。
結局のところこれらは他人との相互承認でしか解消することはできない。
2〜4章 悩みのタネ(金、知性、青春)
金:金はしゃーない、資本主義だから。金を蔑みながらも金なしでは生きてはいけない。
知性:知性と合理化を混同していないか?科学は生活を豊かにするが、自分の生きるための知識はむしろ減っている。自分の身の回りのことはわからなくなる一方で、入ってくる情報には際限がない。生きる力をつけることと、入る情報を限定すること、が必要では?
青春:青春とは答えのない問題に悩むこと。多くの大人は途中で考えることをやめてしまうが、この悩みを持ち続けることが大事だ。
5〜7章 悩みを解決しうるもの(宗教、職、愛)
宗教:宗教は元は「個人が信じるもの」ではなく「個人の属する共同体が信じているもの」だった。宗教が共同体と結びつくことで個人の相互承認を満たし、悩みに答えを与えることで悩みから守ってくれていた。宗教の力が弱まったことで人々は答えのない問いに悩むようになった。
職:働くことの究極の意味は、他者からのアテンション、承認の眼差しを得ることにある。専門分化によってこの承認欲求が満たされなくなりつつある。
愛:現代では、純愛とマゾ的性愛が求められ、その中間に消耗品的な愛が満ちている、しかしこれは不毛だ。昔は恋愛が不自由だったからこそ恋愛の意味が見えていたが、現代では自由だからこそ恋愛の意味が見えなくなって、極端な愛を求める声が強くなっている。愛とは相互の問いかけに応えていこうとする意欲のことであり、これがある限り愛のありようは変わろうともそれは愛だ。幸せになることが愛の目的ではない。相互承認。
8章,終章 悩みの価値
人は相当の苦悩にも耐えられるが、意味の喪失には耐えられない。その向かうところは死である。自由になりすぎ、慣習が死への抑止力となり得なくなりつつある今、悩み抜くことでしか生きる意味を見いだせない。そしてつながりを求め続けよ。できれば、悩み抜いた上で、悩みを受け入れて横着な心を持てると尚よし。
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自我のあり方、他人との関係の中で生きていくこと、そのことについて悩み抜く事がテーマとなっており、これらに対して夏目漱石、マックスウェーバーの思想を中心に援用し、問いかけている。
この本ももう発表されてから10年近く経ってしまった。この10年の間に世界の経済観を揺るがすリーマンショックや、日本人の価値観を問うきっかけとなった東日本大震災などが起こり、人のありよう変化しているようにも思う。しかし、この本で問われている問題はもっと根源的、普遍的なものであり、漱石やウェーバーの時代からちっとも古くなっていないと感じる。
特に、青春の章や、なぜ働くのかを問いかけた章については結構グサッときた。
とりあえず漱石読んでみようと思った。読んでなくても全然この本は読めるけど。 -
「悩む力」という本書のタイトルに興味を感じ読んでみた。
ふつう、我々は「できるならば悩みたくない」と感じていると思う。悩むような出来事からはできるだけ避けたいと思う。
しかし、著者は「悩むこと」を推奨する・・・というよりも、悩む先に幸福がある。悩むことを喜びとさえとらえようという、ある意味発想の転換を促す本だろうかと思う。
おそらく、在日であることで、子どものころから得体のしれない偏見などと闘いながら、葛藤の人生を歩んでこられ、そうした中で強い母の姿に励ましをもらいながら、様々に悩み、そして自分なりの方向性を見出されてきたことを本書にまとめられたのではないかと思う。
学者としてマックス・ウェーバーを学び、また日本の文学として漱石を読み、そこに自身との共通点を見出し、共感を得、また現代の世相とウェーバーや漱石の時代との共通点もとらえることができたその体験から、「自我」ということ、「お金」のこと、「働く」ということ、「愛」とは、「死」とは、いうような身の回りにある悩みのテーマについて、読者に自分自身で考えてみるきっかけを与えてくれる本ではないかと思う。
私自身も、「悩む先に幸福がある」とい考え方には共感できる。悩みから逃げるのではなく、真正面から悩み、そこから自分の手で自分を確立していくところに幸福があるというメッセージととらえました。
目次
序章 「幸福論」の終わり
第1章 漱石とウェーバーに何を学ぶか
第2章 どうしてこんなに孤独なのか
第3章 漱石が描いた五つの「悩みのタネ」とは
第4章 漱石の予言は当たったか
第5章 ホンモノはどこにあるか
第6章 私たちはやり直せるか
第7章 神は妄想であるか
第8章 生きる根拠を見いだせるか
終章 それが最後の一日でも、幸せは必ずつかみ取れる -
都立中学の適正検査問題に出題されていたこともあり読んでみた。問題としては抜粋で使用されているが、一冊を小学6年生が理解するのは相当困難だと思われ、都立中学の壁の高さを実感した。
内容的には、夏目漱石とウェーバーの作品を参照しつつ、著者の考えを展開している。
今の時代は、一人一人が真剣に悩むことこそ必要な時代であり、そのためには悩む力を身に付ける必要があると理解した。そして一人一人が自分自身を知り、それぞれが価値観を確立する必要があるのである。
本書では、悩みの対象を、生きることから始まり、自我、お金、情報、宗教、仕事、愛などのテーマ毎に扱っているが、最終的に自分の生きる価値観に帰結すると思われる。
自分もいつも悩んでばかりいて嫌だなあと思っていたが、悩むことこそに意味があると説かれたことで、これからも大いに悩み続けたいと思う。 -
要は、夏目漱石とマックス・ウェーバーの解説の入門書です。
ただ、読み応えはありませんでした。
肩すかしをくらった気がします。
「そりゃあそうだろう。それで?」と思ったところが多々ありました。
それでも、夏目漱石とその著作についての考察は、それなりになされていたので、夏目漱石を読んでみよう、という気にはさせてくれました。
それがあるから、かろうじて★★★☆☆ですね。 -
読後、頭の中が少し整理された気がした。
著者の文章は読みやすく、難解なテーマを柔らかく解説してくれた。
以下要約である。
著者では「悩む力」について述べられている。
今の日本は自由が過ぎて立ち返るものがなく、昔に比べて不幸だということをマックスウェーバー、夏目漱石を引用して分かりやすく解説している。
全体を通して見えることは
人は一人では生きていけない、だからこそ他者と関わりを持ち、そして悩み続ける。
これこそが生きているということに繋がるのだとしている。