東京ロンダリング (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 187
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451481

感想・レビュー・書評

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  • 事故物件をロンダリングする仕事。そんな仕事があるのか!あるのか?ありそうだな?ちょっとホラーな話しなのかな?なんて思いながら読み始めましたがそんなことはなく。
    りさ子が少しずつ自分を取り戻していく、前向きなお話しだと感じました。

  • 再読。

    以前読んだ時、事故物件にたとえば1ヶ月住み、そこを事故物件でないようにする"ロンダリング"という職業が本当にあると思った事を覚えている。一回でも住めばそこは事故物件でなくなるという設定だったみたい。実際はどうなんだろうか?

    ロンダリング(浄化)は事故物件だけでなく、主人公内田りさ子の心もロンダリングしていく。乙女アパートにロンダリングに来て、色々な人との出会いもあり、りさ子に活力が湧いてくる。あと、定食屋"富士屋"の藤本亮の作る美味しいご飯。これもりさ子の傷ついた心をほぐしていったんだと思う。やっぱり、美味しいご飯て大事だな。りさ子と亮、付き合ってしまえばいいのに。
    最後に、訳があって離婚した元夫の義父にりさ子が「お金。お義父様からいただいたお金、ぱーっと使っちゃいました」と電話した時、やっとロンダリングされたんだと思い、ジーンときた。

    原田ひ香さんの本は数冊しか読んでないけど、お節介な元気なおばあちゃんがよく登場すると思った。この作品だと真鍋夫人。こういう人がいると物語にメリハリが出ていいな。おばあちゃんの言葉が心に響いてくる。

    以前、映画やドラマを夏に撮影するとき蝉の鳴き声に悩まされている、と聞いた事がある。夏以外の季節の場面を撮ってると、蝉の鳴き声が聞こえてくるのはおかしいから編集をする、みたいな事だったと思う。どこで聞いたのかも忘れてたけど、この作品で知ったんだという事が分かった。これが再読の面白さだな。再発見があって楽しい。

  • 雰囲気を楽しむ小説だったな、という印象。


    いわゆる事故物件を『ロンダリング』→’浄化’するという仕事に従事する主人公の職業設定そのものは好み。どことなく感じるホラーっぽい空気とか。
    導入部分のただならなさも関心を惹くに十分。

    ただ、物語全体がひどく薄っぺらいように感じた。


    「あんたにはこの仕事は向いてる」(p33)と相場はりさ子を評するが、いったい何をもって向いてると言っているのかがちょっとよくわからない。「私たちの力」(p185)を特別なものとりさ子は主張するが、その具体的な特別感が全然よくわからない。強いて言えば「見栄えがいい」「外見」(ともにp29)を相場は挙げているのだが、それと「なにかを感じるとか、恐いとか、そういうこと」(p33)をキャッチする力とが作中では結びつかないし説明されない。

    また、りさ子再生の一助として食堂「富士屋」での息子との交流や、お手伝いとして働く描写や美味しそうな食事の模様が描かれるが、どれもこれもが中途半端。
    これをやりたいなら『ロンダリング』の設定が要らないのでは?

    おまけに最終盤でのりさ子の豹変について行けなかった。

    もうちょっと要素を絞っても良いのではなかろうか。


    5刷
    2022.7.21

  • 事故物件をロンダリングするためにする仕事。続編を最初に読んでしまったけど、私的には、この本の方が良かった。最後は、りさ子さん、どうなるんだろうと気になる。続編にあったかな?一時期、事故物件に住む人が流行りみたいにいたけど、今はどうなんだろう。☺

  • 事故物件に1ヶ月住むことで、次の入居者に対する説明義務をなくす、物件のロンダリングを仕事とする女性の物語。
    主人公が無感動に、淡々と日々を送る様子が何故か今の気分にしっくりきてしまった。
    住む場所を転々としながら、街や人と出会い、食事をする。
    その中で少しずつ、生きる力や居場所を見出していく過程が良かった。

  • 離婚により何もかも失い、事故物件を「ロンダリング」するバイトをしながらささやかに生きるりさ子。
    無機質な毎日が徐々に人との絆が生まれ、自分の感情や時間を取り戻していく再生のお話。
    最後もいい終わり方だった。

  • 夜中に扉を叩く音。
    外からは男性を必死に呼ぶ女性の声。
    絶対やばいやつやん!
    というところからスタートするこちらの小説は、事故物件に住まい、浄化していくロンダリングという仕事をする女性のお話。
    ロンダリングってなんぞや?
    そんな仕事が本当にあるのか?
    確かに事故物件にしばらく住んでもらって、お客さんに説明する必要がなくなれば不動産も安心かもしれない…。
    しかし、こんな仕事を平然とやっているこの女性はなんなのだ。

    別にミステリーってわけではないけれど、序盤から訳ありな女性、聞いたことはないけれど需要がありそうなのが納得できるロンダリングの仕事内容…ふしぎで引き込まれました。

    途中アパートに移り住んで、そこの大家さんや、とある食堂での人とのつながりが出来始めてからは、主人公に言いたいことをズバリと踏み込んでくれて爽快でした。
    心ここに在らず…という感じで人間味のなかったりか子さんが、少しずつ何かが変わりつつあるのを感じると、とても温かい気持ちになった。

    めちゃくちゃいい小説!とは違うかもしれないけれど、じわーっと染み込んでくるものがあり、個人的にとても気に入った。

  • 「事故物件でも賃料安かったら良くない?」っていうノリの主人公かな、と思ってたら全然違った。

    自分の不貞が原因で夫に三行半を突きつけられ、先立つものもない状態で家を追い出された女性の物語です。三行半は女側からの物だったっけ。まあいいや。


    バックボーンはヘヴィなんだけど、どこか飄々としてる主人公が、魅力的と言うよりは「何だか気になる」存在感で斬新。全然入れ込めないんですよ、この主人公。共感できる部分もあんまりない。だけど、何だか惹きつけられるのどういうわけだろう。

    次々とワケアリ物件に移り住み、ワケアリをワケナシにしていく中で、彼女は様々な人に出会います。
    お節介な大家さん・お節介なご近所さん・なんだかんだ言いつつ世話焼きの不動産屋さん。
    もはや彼女自身が人々にロンダリングされて迎える大団円は、万事オッケー!という爽快感からはほど遠く、最後に明かされるほろ苦い真実が、ビター感増し増し。あゝ……リアル……。

    ビターな中にも、砂糖一杯分の優しさがあったのがすごく嬉しくなる読後感です。


    変死などの起こった物件に一ヶ月だけ住み、また次に移るという奇妙な仕事をするりさ子。心に傷を持ち身一つで東京を転々とする彼女は、人の温かさに触れて少しずつ変わっていく。

  • 星3.5

    「事故物件いかがですか?」を先に読みましたが、
    こちらの長編からのほうが
    良かったかも。

    ※ほんの少しだけ思うました。

  • 一気読みをしてしまうくらい面白かった。
    こんな生き方があるとは思わなかった。

    登場人物それぞれに合った生き方があり、それを信じていた。
    真鍋夫人を押し付けがましく感じたが、読了後は彼女も自分の生き方を信じ、それを貫いているだけなのだと納得した。

    何もないと思っていたりさ子は、最後には自分の生き方を手にできたのだと感じた。
    続きが早く読みたい作品だった。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2005年『リトルプリンセス2号』で、第34回「NHK創作ラジオドラマ大賞」を受賞。07年『はじまらないティータイム』で、第31回「すばる文学賞」受賞。他の著書に、『母親ウエスタン』『復讐屋成海慶介の事件簿』『ラジオ・ガガガ』『幸福レシピ』『一橋桐子(76)の犯罪日記』『ランチ酒』「三人屋」シリーズ等がある。

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