慈雨 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458589

感想・レビュー・書評

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  • 柚月裕子 著

    久しぶりに、ミステリー本を読んだ。
    ミステリーというより警察もの?
    永らく、ミステリーや警察ものから遠ざかっていた が、以前はミステリーものが主流だというくらい好きだったし、警察ものは横山秀夫や若竹七海はよく読んだ(その他諸々)ミステリーの女王たる宮部みゆきについては殆ど、読破した気がする 海外小説に一時、没頭してた時期はミステリー以外読んでなかったような気さえする(笑)
    映画でもミステリーは好きなジャンル。
    何故?ミステリー本をあまり読まなくなってしまったか…?勿論、他に読みたい作品が多くなったこともあるし、それはさておき…
    海外小説のミステリーだとフィクションであるだけでなく、どこか遠くの話であるように客観的に感じて読めてしまえるし、
    ミステリー内容にも古典的な要素を含んでいるので、怖いというだけでなく面白く謎を追っていける

    今回の柚月さんの作品についていえば、
    最近のニュースでも眉間に皺を寄せてしまう憤懣やるかたない気分に陥ってしまうような事件を扱っており、
    遠くにあって身近に感じる内容で気分が落ちる部分が多くあった。
    とは言うものの、この物語りは県警を定年退職した主人公の神場智則が、妻の香代子とともに、四国巡礼(四国全土にまたがる八十八ヶ所を巡る)歩き遍路の旅を描きながら、
    悔恨の事件や冤罪についても、同時進行で進められてゆく物語。

    警察として、人間として見過ごす事の出来ない真実を追及して対峙してゆく物語でもある
    陰鬱な気分のまま、読んだ部分も多いが、途中からは、ラストまで気になって一気に読んでしまいました。

    決して、自分が思い描いたような結末といえなかったのが、残念でもあり
    作品の中の主人公は辛い決断の中で、失ってはいけない真実を見つけ、ある意味肩の荷をおろしたのかもしれないが、読んでいる私の方は、仕方ないと思いつつ、スッキリ着地出来なかったような、モヤっとした気持ちが残ってしまった(;_;)

    ストーリー的には、しっかりした作品であったと思う。

  • 世の中、綺麗事では廻らない。
    自分の中の蟠りを捨てられない人と、流されて生きていく人の違いなのか。
    真実の追求。その正義感は、人生の半ばを過ぎ定年後に人生を振り返る、時間の余裕が出来た人間の、単なる暇つぶしの自己満足ではないのか?それに引き摺られた周りは、区切りも何もない。何とか自分を納得させ、追いついていくだけだ。

    お遍路にも興味がわいた。八十八箇所を巡った後に残るのは?自分の意識、価値観等、何か変わる事はあるのだろうか?そもそも自分の為の巡礼とも限らないか…

    人のために…は自分の衝動を納得させるための体のいいこじつけではないのか?

    眠ったものを起こすことを良しとしない、事勿れ主義の私は腐ってるかも。
    でもこの後起こるであろう膨大な処理の事を考えると…

  • 泣いたー。
    緒方刑事かっこよすぎる!
    というか出てくる人皆いい。
    でも私が香代子だったら、口数の少ない、礼も詫びもほとんど言わない夫にはイライラするだろうな。香代子が奥さんで良かったね神さん。2人の馴れ初めも知りたい。

    冤罪関連の小説をもう一冊読み始めていて、そっちに出てくる刑事にムカムカしていた最中なので、余計に素晴らしく感じた。

  • 16年前、小学生の女の子が殺害され、群馬県の山中で遺体が発見された。DNA鑑定が決め手となり犯人が逮捕され、実刑判決を受けたが、それと酷似した事件が新たに発生してしまいー。

    一人ひとりの警察官の正義が、"警察"という大きな組織に押し潰されてしまうことがある、、、そんなやりきれなさや歯痒さが描かれていました。
    主人公である神場は、後悔の残る一つの事件のことを忘れることができず、警察官を退職した後も葛藤する日々が続きます。
    組織が大きければ大きくなるほど、自分の決意を貫き通すことは難しくなっていくんでしょうね…
    それでも、被害者とその遺族の無念を晴らすために全力で闘ってくれている人たちがいるんだと思うと、凄いなぁって思います。


    あと、神場が妻と一緒に巡っていた四国お遍路の旅が少し楽しそうで、私もいつか挑戦してみたいと思ってしまいました(笑)

  • 面白かった!
    ミステリー+重厚なヒューマンドラマという展開で好きな構成です。

    ストーリとしては、
    刑事を定年退職した神場は、妻とともに四国八十八か所巡礼の旅に出ます。
    旅の途中で知った、地元での少女誘拐殺人事件。
    その事件は16年前に自らが捜査した事件に酷似。
    その時の犯人はいまだ服役中。
    16年前の事件は冤罪だったのか?
    当時の捜査に悔いが残る神場は、悩み苦しみます。

    一方、今回発生した少女誘拐殺人事件では、後輩の刑事の緒方が担当していますが、捜査は難航。
    現場付近で目撃された白の軽ワゴンの行方は?
    犯人はだれなのか?
    16年前の事件は冤罪だったのか?

    刑事としての矜持、使命感がとても熱い

    そして、もう一つの物語が、四国八十八か所巡礼。
    自らの半生を振り返る旅で、語られる過去と家族。妻、娘との関係。
    旅の途中で出会った人々の影響を受け、頑なだった気持ちがほぐれていきます。

    家族を思う気持ち、娘への気持ちがさらに熱い

    ミステリーとしては、正直いまいちでしたが、家族をテーマとした重厚なヒューマンドラマとして仕上がっています。

    娘をもつ父親として、最後は熱いものがこみ上げてきました。

    とってもお勧め!

  • 終盤、電車の中で読んでいなかったら涙を流したかもしれない が、そこまでが長すぎる おもしろかったのは後半の3割程度のみ あの前半のなくても良さそうな巡礼シーンがあったからこその最後の感動なのかどうかはわからない 八十八ヶ所巡礼に興味がない私にとってはすこしツラかった

  • 四国お遍路の旅を、ほんの少し一緒に体験している感覚が、読了の達成感を押し上げます。警察小説の大河に、血脈、運命、夫婦、親子の支流が注ぎ込まれたように感じました。できた妻 香代子をちょっと見習って、夫を労わないと、と今夜は思ってます。

  • 【慈雨】
    ちょうどよい時期に、適当な量だけ降る雨。
    草木の生長に都合のよい雨。
    恵みの雨。


    続きが気になり一気に読了。
    解説も含めて大満足の一冊。

    警察組織の根底を揺るがすかもしれない、しかし許されるべきではない冤罪を解明すべく、現実と真摯に向き合う姿がとても魅力的で、刑事としての信念を持ち、正義を貫く男性の生き様と、彼らを支える女性の強さと優しさに涙した。

    今世で一度はお遍路に挑戦してみたい。

  •  読んで良かった。

     四国お遍路について、知識が深くなった。皆それぞれ、重い荷物を背負いながら生きている。そう実感できた。


     夫婦愛、親子愛、仲間の絆。様々な人間模様に心打たれた。

    「俺はいつも、事件という名の生きた獣と闘ってるつもりだ」このフレーズが心に刺さった。

  • 群馬県警を定年退職した元刑事が妻と一緒に四国巡礼の旅にでる。その間にストーリーが展開される。
    400ページもの長編でやっと読み終わった。
    途中から話に巻き込まれ、どう展開するのか興味をもって読み進んだ。
    ただ同じ話の繰り返しが多くイマイチだった。
    印象に残ったのは
    見て見ぬふりをするという言葉
    自分も過去を振り返り、何度したか
    今でも弱い人間だったなあと悔いる。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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