慈雨 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458589

感想・レビュー・書評

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  • 二人の刑事達が直接担当した幼児誘拐事件、犯人は捕まり16年が経過。その間、これが冤罪ではないか、犯人は別の人間ではないかとという疑問が出るが、上層部に再捜査を止められる。
    二人は刑事としての組織の倫理と個人の倫理の間で苦しみ続ける。
    担当刑事の片方は定年を迎え、もう片方はあと2年を残すところで、そっくりな事件が起こる。

    柚月裕子さんの描く中高年男性の信念や使命、正義感と、最後に辿り着く100%ではないけれど心温まる結末がとても好き。

  • 退職した刑事とその妻のお遍路の旅路と、刑事が抱え続けた悔恨の結末が重なるように紡がれていく。
    解決に至るまでに描かれる人たちの、人としてどう生きるのかという模索、仕事への誇りなど、人間の尊さや慈しみ深さがしみじみ胸に迫った。

    文庫版の解説(書店員の松本大介さん)も面白く、色鮮やかな場面を思い返して「あー」と、声が漏れた。最後の最後、解説まで通しで一気読み。

  • 2022.5.6読了
    警察官を退職した神場は、妻と共に四国へと遍路の旅に出る。
    神場が遍路をするのは、事件の被害者の供養の為だった。彼には未だに夢でうなされる事件がある。
    旅の途中、神場はふと見たテレビである事件が起こった事を知る。それは、彼を悩ませ続ける事件の様相に酷似していた。
    神場はある可能性に思い当たり、陰ながら捜査に参加する事になる。
    その可能性とは…。

    本作では、事件の帳場のジリジリとした焦燥感や、事件が警察官に与える苦痛が色濃く描かれている。手掛かりが掴めなくて身も心も疲弊し、それでも被害者の無念を思えば愚痴を言うことも許されない。ギリギリの所で闘う刑事達に、何か糸口はないのだろうかと自分もジリジリとしたもどかしさを感じながら読み進めた。

    事件を解決できないまま退職し、今なお悩み続ける神場は遍路によって何を感じ、そして救われる事ができるのだろうか。
    神場に寄り添う妻の香代子の優しさが温かく、二人のように素敵な夫婦になりたいと思った。

  • ミステリーというよりはヒューマンドラマ?謎解きにはそんなに重きが置かれておらず、主人公の心の変遷みたいな方がメインの話のように感じた。最終的な結末が描かれないのは柚月さんらしいというか……正直すっきりしない感じはあった。

  • 警察官を定年退職し、妻と共に四国遍路の旅に出た神場。旅先で知った少女誘拐事件は、16年前に自らが捜査にあたった事件に酷似していた。手掛かりのない捜査状況に悩む後輩に協力しながら、神場の胸には過去の事件への悔恨があった。場所を隔て、時を経て、世代をまたぎ、織り成される物語。事件の真相、そして明らかになる事実とは。安易なジャンル分けを許さない芳醇たる味わいのミステリー。

  • 最後の犯人を見つけるまでのところがうまく行き過ぎな感じもあったが、ま、こんなもんでしょうか。。
    お遍路の仕組みや人情深さに、とても魅力を感じた

  • 面白くはあったが、登場人物が皆真っすぐ過ぎて、物語が綺麗すぎる。深みがない。

  • 重いテーマではあるが、人としての温かさや深い思いなどがベースにあり、読んでてしんどくなる作品ではないかなと。
    後半にかけてやや駆け足な展開のような感もありますが。

    でも「おとうしゃん、おきて」のくだりは泣きそうでヤバかった。

  • 淡々と進む
    山場がないので期待したほどではなかったが、今まで興味のなかったお遍路さんに興味が湧いたのでよかったかなと。

    犯人も唐突で、刑事物?日常系?のようななんとなく中途半端な物語でした。

    贖罪の意識を感じつつ読むものなのかな

    冤罪発覚後まで書いてもらいたかった…

  • 事件とは離れたところにいながら回顧録と遠隔操作のような形でストーリー展開する新しい技法。自分は捜査していないのに溢れる臨場感と過去の記憶による葛藤。シリーズ化するのは難しいが続編に期待してしまう。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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