- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087458589
感想・レビュー・書評
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何回も泣きそうになるくらい、濃い内容。冤罪がどうなったかを読者の想像に委ねたみたいだけど、作者としても、どう着地させようか迷ってたのかも。上手い着地ができれば最高の作品になったかもなだけに残念!
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組織の論理に屈し、真相を明らかにできなかった男の悔悟の、再生の物語。読み進めるうちに明らかにされる神馬や香代子、幸知の過去。それぞれの覚悟や絆。うん、これは泣かされた。
人生には、光もあれば闇もある。だが、闇がなければ光のありがたみも分からない...。
題材は足利事件なのかな? -
中古本屋で欲しかった本、とりわけ新刊に近いものを見つけると、やっと会えたねという感じで、とても嬉しい。
警察を定年退職し、妻と二人で四国へお遍路に出た、元刑事の神場。
定年で一区切りつけた中、色々な気持ちを込めた遍路の旅路で、これまでの仕事のことや家族の中での出来事が思い起こされる。
家庭も顧みずに仕事一筋で生きてきた神場と、それでも長年連れ添ってきた妻・香代子の、夫婦の物語として、同じような世代の者には、これがなかなか沁みてくる。
が、旅先で幼児殺害事件のニュースを聞いたところから、過去に自分が担当した同じような事件で残した悔いが蘇る。
その、今でも残る古傷の中身が、進行中の捜査とシンクロしながら徐々に明らかになる筋立ては、ミステリーとしても結構面白い。
と書きながら、神場があれほどの男でありながら、過去の悔いを引きずって、ひとり、ああだこうだと思い悩むのが、なんだかしっくりこないところもあったのだなぁ。
刑事の妻であることを誇りに思っていると言ってくれている妻に対して正直な心情を吐露することが出来ないのは、背負っているものの大きさ故ではあるが、ああまで妻や娘に対して頑なでなくても良いのにね。
奥さんが本当に素晴らしい人であるだけに、仕事しか出来ない男の昔気質の心情がいささかじれったかった。
まあ、私も結婚30年以上経っても、嫁さんの言葉に、そういうことを考えていたんだとか、何を考えているんだとか、私の言葉をそういう風に受け取っていたのかとか、いまだに複雑な心境になる場面も多いけどさ…。 -
柚月裕子の小説を初めて読みました。
定年退職した刑事が関わった16年前の少女誘拐強姦殺人事件の犯人冤罪疑惑に苦しみながら、四国お遍路の旅中に起こった極似の少女誘拐強姦殺人事件。引退した身でありながら元部下の刑事に電話で自分の推理を教授して犯人逮捕に協力するのだが、それは同時に16年前の事件が冤罪であることを教唆することにもなる可能性があった。
主人公の定年退職した刑事神場智則60歳とお遍路に同行している妻香代子58歳の夫婦の絆に感動し、神場の指示を受ける元部下の刑事緒方圭祐32歳の捜査能力と正義感に感服する。
緒方は神場夫婦の娘の恋人でもあるため、神場の関わった事件が冤罪であることの可能性に苦渋しながらも腹をくくる。緒方の上司の県警の捜査1課長の鷲尾訓58歳は神場の2歳年下ではあるが神場の現役所轄時代の上司でもあり16年前の事件に神場と同じく冤罪疑惑に苦しんでいた。神場の推理に鷲尾も同調し、緒方に独自の捜査を命じる。3人が各々の責任と信念に基づき行動し、捜査陣を犯人逮捕に導く。
緊迫した捜査状況、進行状況に緊張し興奮している自分がいる。そして幼少時代の苦難を乗り越えて警察官になった神場の生い立ち、夫婦で地方の駐在勤務から所轄、県警と2人3脚で克服してきた夫婦の歴史、一人娘幸知の秘密、数々の物語が加わり感動の結末を迎える…。
柚月裕子の他の小説も読んで見たくなった。柚月裕子の小説、好きになりそうです。 -
3.5★
ミステリーっぽくなかったかなという感想です。
正義感、家族や同僚の人間関係にウルっとしました
人は様々な苦しみを抱えて生きているのかもしれない…
いろいろと考えさせられる作品でした -
やたら、電車の広告で見かけることが多く、気になってたら、貸してもらったので読んでみた。
ジェンダーレスの時代に、こんな言い方は古いのかもしれないけど、著者が女性であることと年齢からは想像できない感じの文体であり、ストーリーだった。
思ってたのと全然違った。
とにかく堅い。
すごく「王道」の刑事もの。
過去の冤罪(かもしれない)を止めることができなかった贖罪から、お遍路さんの旅に出る。
お遍路さんの基礎知識が何もない私には、地元の人たちとの交流、八十八箇所の廻り方など知らないことが多く興味深かった。
刑事物としては、犯人の特定の仕方など、とくに「まさか!」ということもなく。(っていうか、それならもっと早く見つけられそう)
最終的に、色々解決して欲しかったし、真犯人も爽快に懲らしめてほしかったけど、すーっと終わった感じ。 -
事件解決に向けた刑事さんの執念をこれでもかと書いてある刑事もの小説を読むにつけ、本当にそんな刑事がいるものなんだろうか?と不謹慎だがちょっと疑ってしまう、けしからん自分。いつかは四国巡礼してみたいものだと思った(たぶん行かないだろうけど笑)
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本筋の事件の進行は遅く、
主人公にまつわる数々の思い出話がメインという印象。
本筋の事件も含め、不幸というか嫌な気分にさせられる事案ばかり。
特に幼い子供のいる親にはこたえるものがる。
トリックというか仕掛けは、正直なところ「えぇ・・・」。
今までリアリティのある展開だったのが、
急に「コナンくん」が暴きそうな仕掛けが出てきてガックリ。
探偵が「犯人はあなたです」と指さす推理小説ならまだしも、
「警察の威信が~」「刑事として信じる正義の~」と言ってる傍であのトリックは稚拙というかありえないというか。
それでも、個人的に一番弱い「本当の親子ではない」系のお話しが挿入されていて、
そこはやはり少し目頭が熱くなった。
先が気になる読ませるお話しであったが、
読了後振り返ってみると辛いエピソードがメインで、
言われているような感動はなかった。