谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462494

作品紹介・あらすじ

仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり…。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが…。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「谷崎潤一郎」といえば、明治・大正・昭和の三つの時代に活躍した、『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などの代表作で知られる、文化勲章も受けた日本を代表する文豪のひとりでしたね。(1965年に鬼籍に入られています)

    本書『谷崎潤一郎 犯罪小説集』には、以下の4作品が収録されています。
    ・柳湯の事件(1918年)
    ・途上(1920年)
    ・私(1921年)
    ・白昼鬼語(1918年)

    本書を読んだことで、いわゆる「文豪」と呼ばれた作家たちとミステリー(犯罪小説、推理小説、探偵小説)作品の関係を調べていくと、非常に興味深いことが多く、そういう点でも、本と読書の魅力を改めて感じることが出来ました。

    谷崎潤一郎と本書収録作品のみについていえば、

    ・日本で最初の本格探偵小説といわれる江戸川乱歩の『二銭銅貨』が雑誌「新青年」に掲載されたのは1922年であり、上記の4作品全てがそれ以前に書かれていたということ。
    ・クリスティーの代表作の一つの有名なトリックが、その5年前に『私』で使用されていたこと。
    (そのクリスティー作品を私は読んでいましたので、トリック自体の衝撃はそこまで大きくはなかったのですが)

    の事実には、驚きと共に、谷崎潤一郎という文豪の才能を認識させられました。

    収録作品の感想としては、やはり『途上』が最も面白く読めました。
    (探偵と会社員の二人だけの会話で構成され、追い詰められていく会社員の感情が恐怖へと移り変わっていく様子が見事に描かれており、秀抜だと思います。)
    「やはり」と書いたのは、20年以上も前に『日本文芸推理12選&ONE:エラリークイーン編』を読み、その中に収録されていたからです。
    その当時に感じたプロバビリィティーの犯罪(わずかな可能性も、あらゆる機会を利用することによって、ついに必然に変わってしまうのか?:クイーン)の面白さと衝撃を今回も味わえました。

  • 谷崎潤一郎が実は推理小説、ミステリーらしきものをいくつもしたためており、しかもそれがどれも秀逸らしい、と知り手に取った一冊。
    収録されている4篇ともキャリアの序盤、100年と少し前に書かれたもので、やたらと"気違い"などという言葉が登場し、マイノリティやハンディキャッパー、あるいは女性に対する差別が顕在的かつ余りに露骨だなあ…と、今となっては半ば呆れてしまうところはあるが、読んでいるうちに我知らず、その時代に生きているかのような錯覚に陥る。
    それほどまでに、作品が持つ見えざる膂力は凄まじく、つまり、文章の美しさ、完成度が際立っている。
    プロットの方も、江戸川乱歩が文壇に現れる前の当時では、まだ誰も日本語で読んだことがなかったであろう、革新的かつ実験的なミステリーの構築が試みられており、こんな一面もあったのか、と素直に感嘆する。
    そこに、人間の醜い業とも言えるフェティシズムや、退廃的な印象すら醸し出す耽美主義といった要素が不可分に絡みついてくるところが、いかにも"らしい"ところであり、期待を外すことはない。

  •  文豪が書いた犯罪小説集。プロパビリティの犯罪を扱った「途上」、信用できない語り手を扱った「私」といった、後の探偵小説に繋がる作品という形で面白かった。

  • 江戸川乱歩にも影響を与えた谷崎潤一郎の文学作品。
    何年も前から書かれているはずなのに恐ろしいほど読みやすい、なぜこんな文章が書けてしまうのか。ミステリ、謎、推理が大好きな人もそうでない人も平等に人権を与えてしまう谷崎潤一郎が1番すごいです。

  • 短編4本。

    あらびっくり、な落ちがあったりでしたが
    ちょっと語りが長い。
    説明だけで犯罪内容を終了させているので
    分かりやすいは分かりやすいのですが
    読むのに疲れました。

  • 乱歩が谷崎を日本のエドガー・アラン・ポーと高く評価したのも納得。『私』が書かれたのがクリスティの『アクロイド殺人事件』の5年前というから驚き。まさしく日本のミステリー小説の先駆者と言っていい。

  • 江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」での会話で谷崎潤一郎の「途上」を完全犯罪と言っていたので見てみたがほんとに偶然に偶然を重ねた必然的な事件で驚いた。
    こんな執念深さをもつことに恐怖すら感じた。

  • 短篇4作。現代仮名遣いになっているので読みやすい。純文学のイメージだったので意外な面白さ。

    「柳湯の事件」は幻想風味もあるがドロドロした感触が伝わってくる。
    「途上」探偵がじわじわと追い詰めていく様子がスリリング。
    「私」は信用出来ない語り手。アクロイドより前に書かれたというから驚いた。
    「白昼鬼語」は探偵と助手ものの趣きがあって面白かった。美女の描写にとても力が入っている。
    オチはそうか、となるけれど興味をそそられる謎が散りばめられている。

  • 高校生の時に読んだ「富美子の足」に
    衝撃を受けて以来、久しぶりに谷崎潤一郎作品を読んだ。
    (メインタイトルの「白昼鬼語」は
    そんなオチ?と思ってちょっと消化不良...)

    とにかく女性の描き方に並々ならぬ作者の拘りを感じる。
    女の滑らかさ、白さ、美しさ、など
    人一倍女性に執着してたんだろうなと改めて思った。

  • なんか乱歩っぽいなと思ったら、乱歩が感銘を受けた作家なんですね。 登場人物の心理描写が秀逸で、文章もとても美しくて一気読みでした。 他にも小説集があるようなので読んでみたいと思います。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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