嫉妬の香り (集英社文庫)

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  • 集英社
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感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087476965

感想・レビュー・書評

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  • ものっすごく大人の小説!!!!!

    ある意味起承転結がはっきりしていて

    個人的には起承の部分が退屈で
    転結の部分が面白かった!

    辻仁成さんは、風景描写が本当に好きだなっていうのは

    フランスのとことか、
    最後の再会の場面で感じたもの。

  • この本はもうめちゃくちゃ男と女の心理をうまく描いてる。


    さすが辻仁成。


    改めて、人の心理状態ひとつでこんなにも目まぐるしく変わるか。

    この本は本当に面白い。

  • 辻仁成って、本当に繊細でナイーブで芸術的な感覚を持っているんじゃないかなーとすごく思った。うざいくらいに芸術的。
    そしてすごくロマンチック。そんな印象を受けた。
    表現も今まで心の中にあって、私には表現できなかったことを綺麗に表している。さすが、という感じ。人の愛に関する嫌な部分を表現していて沈む所もあったけど、励まされた感じ

  • 恋人への疑念、不確かな憶測に翻弄され嫉妬する主人公。
    あの男―尊敬する同窓の先輩―政野英二、その妻政野早希、私の恋人ミノリと私。
    均衡が崩れ、4人の歪んだ感情の空間を香りと音楽を交えながら絶妙に描いている。
    主人公「私」目線で展開されるため、相手の心理が読めずに、自然と読者も探りながら読まなければならないのも面白い。

    各節ごとにキーになる文章が挿入されており、それらが考えるきっかけを与えてくれる。


    ――誤解と勘違いについて。
    物事をうっかり間違って思い込んでしまうことからはじまる愛がある。一方意味を取り違えたり、間違った解釈をすることではじまる愛もある。どちらも偶然が深く関与しよく似ているように思えるが、本質で少し異なる。しかし人間はこの二つの作用によって、いつも人生を左右されてしまう、愛や恋を失うのもまたこの二人の妖精の悪戯による場合が多い。


    ――愛と嫉妬はつねに危険な関係にある。嫉妬のない愛などあるのだろうか。人間は嫉妬する動物である。どんな聖人君子も嫉妬をする。子供から老人までみんな嫉妬する生き物なのである。


    ――大人の女が膝を出すとき、男は用心しなければならない。熟した女が、普段隠しているものを見せようとする時、そこには既に大人の駆け引きが生まれている。駆け引きのできない十代の少女のあからさまなひざ小僧とは違い、そこには弁えた(わきまえた)熟女のプライドの高いエロスが横たわっている。


    心理だけでなく、情景や空間、温度の描写がとても良い。
    個人的に好きなシーンは、富良野へ行く場面だが、地に足が着いていないようなふわふわした期待感と薄っすらとした不安のようなものが感じられて、読んでいるこちらまでそわそわしてくる。

    この作品は、「嫉妬」という題材を描いていながら、後味悪くなくさらりと読めてしまう。
    これもこの作家の持ち味ではないだろうか。

  • 香りについて細かく、又、それを題材にしてる作品に初めて出会ったから新鮮だった。
    前半部には特に好印象。
    他方で性的描写があまりに多く、それが時々不快にすら感じた。ただ、

    欲望 ―中略― を散らすために義務的に自慰をしたのだ。

    という一文(cf.P37-L14)には共感(笑)

  • 視覚よりも聴覚よりも
    嗅覚の記憶は消えないのだろう。

    愛しさも懐かしさも
    みんな匂いがある。そして繋がっている。

  • 辻仁成の描く男って、感性豊かで弱い。
    逆に女性は強くてキレイ。
    なにか、コンプレックスでもあるんですかね?w


    >愛する者を奪われるという虞れ(おそれ)から嫉妬するのではない。自分が傷つくのが怖いから嫉妬の鎧を着てしまうのであり、つまり嫉妬とは自己愛に他ならない。

    >大人の女が膝を出すとき、男は用心しなければならない。熟した女が、普段隠しているものを見せようとする時、そこには既に大人の駆け引きが生まれている。駆け引きのできない十代の少女のあからさまなひざ小僧とは違い、そこには弁えた(わきまえた)熟女のプライドの高いエロスが横たわっている。

  • 嫉妬の恐ろしさ、そして人を信じる難しさ――。

    読み終わったあとに、思わず深呼吸してしまった作品。

    嫉妬の連鎖がとても物悲しかったけれど、
    きっと誰にもその嫉妬を止めることはできなかったと思う。

    「未来と向き合うことを先延ばしにして、その未来をきちんと見つめなかったこと」
    私自身それで後悔したことがあるからこそ、いろんなことを反芻しつつ、
    今現在と未来をきちんと見つめていこうと思えた。

    疑惑から生じた身を苛む嫉妬を抑えることができていたら、
    平穏な日々を送れたのかもしれないとも思ったけれど、
    でも実はそんなこともないのかもしれない、とも思ったり。

  • 貰ったので読んでみました。
    読み始めはあまり期待してなかったんだけど、中盤辺りからすごかった…。
    強烈というか鮮烈というか。すごい。
    舞台が東京、パリ、仙台と縁のある土地ばかりで感慨深かった。

  • 嫉妬って怖い。。
    でも、嫉妬も恋のスパイスであることは確か。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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