- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087480948
感想・レビュー・書評
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北方謙三の初期の歴史小説。
北畠顕家という日本史ではスポットの当たらない人物を主人公にしている点が北方らしさが出ていていいです。
足利尊氏も恐れた男の生き様が儚くも清々しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鎌倉・室町を勉強して2年
漸くこの本が読めるようになりました -
北方謙三の歴史小説が好きというのと、
南北朝時代の歴史を知りたかったという
2点から読むことにした本。
主人公像や周りのキャラは
題材としては悪くないんだと思うが
最近の北方謙三を知っている分、
まだ歴史小説に書き慣れていない感じを
個人的には少し感じてしまった。
北畠顕家が、若干完璧超人すぎる感じも
それほど惹き込まれなかった要因かも。
行動原理を含めた男の生き様を描く、
というのはこの頃から変わってないんだなあ
というのは感じた。 -
北畠顕家のお話。若干20歳にして、時の足利尊氏が最も恐れた人物。
何を思って、駆け抜けたのだろう。
その胸からこぼれ落ちる思いを聞いてみたい。 -
人は何のために戦うのか。この頃は複数の尺度があった。武士は恩賞、土地を一族子孫に残すため。北条家が滅んだのは恩賞をくれなくなって武士たちが付いてこなくなったから。ちゃんと報いてくれるのは誰かって探して、最初は天皇かと思ったんだけどダメで、足利がその役目を果たしてくれそうっていうので、彼を選んだ。武士の頭領はなので結構しんどい。餌をくれなきゃ逆らう獰猛な犬を飼ってるようなものだろう。大義つまり天皇が統治する日本国を作るってのは武士にはどうでも良い、あくまでも明日のご飯。
北畠顕家は公家に生まれ、父親房に教育を受け、主上あっての国と基本概念を持つが、それが腐ってるってなった時に、陸奥国で新たな国をつくるという理想に心が揺らぐ。天皇の世でもなく、武士の世でもない、この3つ目の道には夢がある。そしてやっぱり夢だった。顕家は新たな国をつくることに挑む前に、仁義を切りに京都へ上った。辛くも生き残り、陸奥に戻ることもできたのに、果てた。戦でたくさんの部下を仲間を失い、兵や民を傷めたことに、自分には国をつくる資格がないと感じたかのようだった。
大河ドラマ「太平記」再放送中につき再読。前回は人物や背景がさっぱりだったが大河のお陰で理解が進んでた。前回は斯波家長と上杉憲顕のことしか書いてなかった…。でもやっぱりこの場面はグッとくる。しかし斯波家長の年齢設定が謎。
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2017/7/16
北方謙三の南北朝シリーズのとっかかり程度の気持ちで読み始めたのに、終盤でまさか泣くとは思わなかった…。第8章「西を指す星」、足利側の武士・斯波家長との鎌倉での死闘が1つのクライマックス。最初ダメ武士だと思った上杉憲顕と家長とのやり取りにしびれる。「負けを知る武将は強い」「新しい上杉憲顕を作るために、闘え」。家長自身が一度負けてるから言える台詞だろう。家長が討ち死にして以降、憲顕側からの描写はないが、次の章、顕家を追走してくる憲顕隊の姿だけですべてが察せられ胸を打つ。
物語は主人公、北畠顕家側からの視点が中心で、ときどき足利尊氏・直義の視点もあるが、それはあくまでも顕家の敵としてのポジション。それが第8章の家長側の描写はこの物語の主人公のようで、作者の家長への強い思い入れを感じる。唯一この鎌倉での戦いだけが敵方の家長側から描くことで1枚フィルターがかかったようで、顕家が有利なのか不利なのかがはっきりとはわからずもどかしさが募る。その後の場面転換など手法がすばらしい。
北方謙三は歴史物もなにも、実は初めて読んだが、司馬のような史観みたいなものも入ってこないし、池波や隆のようなエロもなく、ただひたすら男の美学をストイックに描いて切ない。ファンになるかもしれない…。
追記)斯波家長(1321年-1338年)ってこれ本当???17歳ですよ?北畠顕家より若い。どうなんでしょう。上杉憲顕は1306-1368と戦を生き延び、家長の後、鎌倉の執事役を務めたらしい。 -
昔大河で、後藤久美子が演じていたような。
この辺りの時代を描くというのは、いろいろ問題がありそうだが、小説としてしっかりと描かれているのはいいですね。
北方謙三は、新田義貞をあまり評価していないんですね。
新田義貞が登場する小説をはじめに読んだのが、新田次郎の作品であるが、ちょっと印象変わりますねー。 -
苦手なお話です。
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南北朝時代、後醍醐天皇により弱冠十六歳にして陸奥守に任命され、陸奥地方の統治に成果を挙げた北畠顕家の物語。
その政治的統治手腕は元より、公家でありながら無類の強さを誇った顕家ではあったが、多くの武士が土地に固執して後醍醐天皇の建武の新政に反対する中、武家の棟梁として担ぎ出された尊氏を幾度も破りながら時代の趨勢を見誤り、悲劇的な最期を迎える。
ただ、その若者の純粋なまでの思い、武家をも圧倒する強さ、鮮烈な生き方は、痛快の極みである。 -
破軍星とは、北斗七星の7番目の星で、それが指し示す方角は不吉だと言われる。14歳という若さで陸奥守に任じられ、軍事の天賦の才で激動の南北朝時代に輝きを放った北畠顕家その人を表す言葉として、ふさわしい。
南北朝の面白いところは、世を統治すべきは公家か武家かを問うたところだ。武士である平家が貴族として政治に台頭し、源氏が武士として統治者となり幕府を作った。これが平安後期から鎌倉時代にかけての流れだ。そして南北朝時代では、腐敗した幕府に不満を抱く武士と、もう一度世を治めることを伺う朝廷の対立が垣間見える。
顕家は、父の影響もあって、朝廷こそ統治者たるべき存在だと考える。一方で、公家でありながら武将として武士と接するうちに(というか、彼自身、腐敗した朝廷をみながら感じてはいたのだろうが)、足利尊氏が武士たちの支持を集める理由に気づき始める。
南朝側についた武将を見るのが一番面白い。鎌倉幕府は腐敗したとはいえ、一時でも武士たちをまとめ日本の統治者足りえたわけだし、足利尊氏のリーダーシップも申し分なかった。加えて、朝廷は一部を除いて腐敗しきっていた。楠木正成も、北畠顕家も、朝廷には任せられないってことにどこかで気づいていたはず。それでも、彼らは朝廷のために最後まで戦い、散って行った。
少しそれるが、作中では人々の支持を集める一つの要素として血筋が挙げられている。楠木正成がいくら戦上手でも、兵を集めることはできない一方で、なんだか頼りなく思慮深さに欠けてはいても新田義貞のもとにはたくさんの武士が集まってくる。顕家も尊氏も、血筋に大いに助けられた部分は大きいだろう。これは、情報の流通度が低い社会におけるレッテルみたいなもん。そして、この血筋が、統治者が誰であるべきかって議論にもかかわってくる。
・・・・アーまとまんない。w
勤王の思想は、幕末と重なるところがあるよね。 -
北方謙三の描く太平記。若くしてその命を散らすこととなった北畠顕家を主人公とした本作は、顕家の若さとその短い生涯を鮮烈に描いた。疾走感のある文章とストーリーは、1日で読み終えてしまう程に夢中にさせてくれる。北方謙三の歴史小説への入門編。