- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087713732
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
武家の身分を隠して根津の遊廓で働く定九郎は、いつかここから出て行くことを望みながらも、生簀の魚のようにそれがかなわぬ夢であることも感じている。
民権運動や「自由」という言葉が使われ始めた江戸から明治へ移ろい行く時代の中で、定九郎も花魁も楼主も客たちが、ある者は逆らいながら、ある者は意識せぬまま、川の底の砂のようにゆっくりと流されていく。時代に取り残されつつある遊廓という舞台で、自由を望みながら背を向ける者と、自分の才覚で自由をつかみとる者が描かれ、少しセンチメンタルな気分になる。
花魁の小野菊が粋で格好よかった。 -
明治10年の根津遊郭が舞台。舞台は遊郭だが、艶っぽい話ではない。
どこにも行き場がなく、心の置き所がない定九郎が立ち番として働きながら、周りの人々や自分に感じる様々な思い、感情が描かれている。
時代背景を現在に置き換えてみても、人間とは同じ事の繰り返しなのだと思う。
直木賞受賞作だが、こういう作品が選考委員好みなのかと納得した。 -
人生が定まらない焦燥感。
何にも期待しない、できない閉塞感。
今の時代もこういう思いで生きている人、いっぱいいるんじゃないかな。
兄と弟が図らずも再会してしまうシーンに泣けた。
誇りを捨てられないのに、生きるために
捨てざるを得ないというのはつらい。 -
2010年直木賞受賞作。武士をやめた主人公が全てを諦め遊郭で自分を殺して生きる。あの場所は江戸と明治のはざまのようだ。
-
龍造が一生懸命その場の仕事をこなす様が好き。粋な花魁が好き。主人公は自身とヤル気のない人。
-
なかなか読み進めない
-
明治初期、士族の反乱の頃。士族であることを隠しながら根津遊郭で使用人として働く主人公。自分の居場所・おさまりどころが心に定まらない。そんな主人公を厳しく見つめる者もあれば、好く者もあり、そして利用しようとする者もある。それらをうまく絡めながら、物語としてもうまくオチをつけている。遊郭の様子も目に浮かぶように描かれていてよい。(少し前に映画「幕末太陽傳」を見ていたからイメージしやすかったのかもしれないが)。
-
最後になるにつれてどんどんと惹きこまれていった。
歴史小説はあまり読まないが、とても面白かった。