- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087713732
感想・レビュー・書評
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ままならなさ、というか。
人を置き去りにして時代だけが流れてゆく。
流れに逆らうこともできない。ただ立ち止まることすらできない。
どこへ行くのかもわからないまま、その大きな流れに流されることしかできない。
読んでいるうちに、自分がどうしようもなく息苦しくなってくる。
この、ただ自分だけが置いてけぼりにされていくような感覚は明治の初めだけに限らず今もあるのだろうなあ、と思いました。
この閉塞感が、好きです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
直木賞受賞作。明治10年ごろの根津遊廓。混乱の時代の、希望の見えない仕事と仕事に打ち込めない若者。どんよりと息苦しかったけど、凛とした小野菊花魁に救われた。
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久しぶりの時代小説当たりです。郭で、幕末、主人公が男、これはなかなか無いよ。
お勧めです。 -
どうにも陰鬱で苛立ちを誘われて挫折しかかったけど、最後まで読んで、なにか胸にストンと落ちるものがあった。
最後までちゃんと読んで良かったと思う。 -
廓もので男性が主人公というのは珍しいのでは。
江戸幕府が瓦解して明治になって十年あまり過ぎた時代が舞台で、新しい世になっていて色々希望に満ちていてもよさそうなものなのに、ひたすら鬱々とした主人公が全編を通していじけている感じで読んでいてどうにも気が滅入った。
先行きの見えない現代社会にもこういう人はたくさんいるし、自分もそうなのかもしれないけど、この主人公を見ていたら己の境遇を嘆いてばかりいないで積極的に何とかしようと思った。こんな生き方はイヤだ。 -
この4ヶ月、読書する気もおこらないほど、、、
ヘトヘトだったけど
台風9号のおかげで、丸々三日休めて、
この本、読めた。
激動な時代の変わり目、
流される者、うまく乗れる者、変わらない者
いろんな生き様、、、、
オノレモ、カワリメに、タッテイルノカモシレナイ。 -
女性は強い。
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明治初期の遊郭を舞台にした時代小説。
とかくと、陳腐な話になりそうだが、
今の時代と非常に似ているところもあり、
描写も面白い箇所が多くあった。
“うたう”と題名にあるので察しはつくが、
ちょいと、状況描写についてゆけない部分がいくつか見て取れた。
だが、直木賞をとるだけあって、
前半の読み手を引き込んでゆく文章力はなかなか見事なものである。 -
第144回直木賞受賞作。
御一新後、出奔して根津の遊郭に潜む没落士族の次男坊である定九郎こと新右衛門。新しい世の中にも馴染めず、かといって過去に戻ることも出来ない若者の日々を描く。
非常によく調べられて書かれた物語なのだと思う。この時代の都々逸や遊郭の風習、寄席の様子など、庶民風俗がきっちりと描き込まれている。
そうした背景の描写がしっかりしているだけに、なるほどこの時代、こうした鬱屈した若者がいたのかもしれないと思わせる説得力がある。
冒頭は説明的な描写が多く、なかなか世界に入りづらい。ひとたび入ってみると、重厚な描写のおかげで、明治維新が明るいばかりでなく、その流れに乗り遅れたもの、振り落とされて沈んでいったものが多かったのであろうことが「体感」できる。
幾たびか浮かびそうになりつつ浮かび上がらない定九郎の有り様は、いつの時代にも通じるものかもしれない。世の中、ヒーローばかりではないし、何事もすぐに割り切れるものでもない。
定九郎を取り巻く遊郭やその周囲の人々も巧みに描き分けられている。
三遊亭圓朝の枕や噺の盛り込み方も秀逸。「神経と幽霊」の話なんか、時代の空気をよく写し取ったものだったのかもしれないなと思わせる。
*力作だが、梅雨時に読んで、すかっと爽快!というタイプの本ではないのは確か。定九郎と一緒にどっぷりと淀んでみるのも、まぁ読書の楽しみではありますか。