漂砂のうたう

著者 :
  • 集英社
3.53
  • (50)
  • (153)
  • (140)
  • (30)
  • (10)
本棚登録 : 934
感想 : 173
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713732

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ままならなさ、というか。
    人を置き去りにして時代だけが流れてゆく。
    流れに逆らうこともできない。ただ立ち止まることすらできない。
    どこへ行くのかもわからないまま、その大きな流れに流されることしかできない。
    読んでいるうちに、自分がどうしようもなく息苦しくなってくる。
    この、ただ自分だけが置いてけぼりにされていくような感覚は明治の初めだけに限らず今もあるのだろうなあ、と思いました。
    この閉塞感が、好きです。

  • 直木賞受賞作。明治10年ごろの根津遊廓。混乱の時代の、希望の見えない仕事と仕事に打ち込めない若者。どんよりと息苦しかったけど、凛とした小野菊花魁に救われた。

  • 久しぶりの時代小説当たりです。郭で、幕末、主人公が男、これはなかなか無いよ。
    お勧めです。

  • どうにも陰鬱で苛立ちを誘われて挫折しかかったけど、最後まで読んで、なにか胸にストンと落ちるものがあった。

    最後までちゃんと読んで良かったと思う。

  • 廓もので男性が主人公というのは珍しいのでは。
    江戸幕府が瓦解して明治になって十年あまり過ぎた時代が舞台で、新しい世になっていて色々希望に満ちていてもよさそうなものなのに、ひたすら鬱々とした主人公が全編を通していじけている感じで読んでいてどうにも気が滅入った。
    先行きの見えない現代社会にもこういう人はたくさんいるし、自分もそうなのかもしれないけど、この主人公を見ていたら己の境遇を嘆いてばかりいないで積極的に何とかしようと思った。こんな生き方はイヤだ。

  • この4ヶ月、読書する気もおこらないほど、、、
    ヘトヘトだったけど
    台風9号のおかげで、丸々三日休めて、
    この本、読めた。

    激動な時代の変わり目、
    流される者、うまく乗れる者、変わらない者
    いろんな生き様、、、、

    オノレモ、カワリメに、タッテイルノカモシレナイ。

  • 女性は強い。

  • 直木賞だっかっけ?とったの?

    龍造が冷たかったのは自分の仕事を定九朗がバカにしてるっとゆーか
    そーゆー感じで働いているとゆーのを感じとったからだろう。
    確かに真剣に学ぼうとする後輩ならまだしも。
    やる気のない奴にいちいち教えたりとかしたくないよな。
    気持ち分かるわあ。
    仕方がないからここにいる、なんて顔されたんじゃたまらないよな。
    うんうん。
    私としては龍造の肩もつなあ。しかも彼の仕事の徹底ぶり、半端ないし。
    これぞプロって感じだよな。

    ポン太は途中ホント不気味でしたー。
    いや、これもしかしてなんかホラーっぽくなったりするの?
    ってちょっと途中思ったりもした。
    ぞくそくしたんで気になって気になって最後まで一気によんでしまった。
    うう、睡眠時間が・・・
    花魁はかっこよかった。ちょっと松井今朝子さんの「吉原手引草」を思い出した。あと「円朝の女」も混ざってる感じ。
    あの一言は結構きいた。
    自分を卑下するな、か。

    あーでも私だったら定九朗みたいに逃げてしまいそうだなあ。
    花魁みたいにきっと前を向いてにっこりほほ笑むくらいできたらいいけど。

    時代に流され、どうするごともできず。
    けどきっと定九朗の中になにかはあったのだろう。
    だからポン太が声をかけてきた?
    どこへも逃げ場などないとしても生簀の中で生き続けるしかないのだとしても
    それでも目の前のことと真正面から立ち向かってゆくしかないのだ。

  • 明治初期の遊郭を舞台にした時代小説。
    とかくと、陳腐な話になりそうだが、

    今の時代と非常に似ているところもあり、
    描写も面白い箇所が多くあった。

    “うたう”と題名にあるので察しはつくが、
    ちょいと、状況描写についてゆけない部分がいくつか見て取れた。

    だが、直木賞をとるだけあって、
    前半の読み手を引き込んでゆく文章力はなかなか見事なものである。

  • 第144回直木賞受賞作。
    御一新後、出奔して根津の遊郭に潜む没落士族の次男坊である定九郎こと新右衛門。新しい世の中にも馴染めず、かといって過去に戻ることも出来ない若者の日々を描く。

    非常によく調べられて書かれた物語なのだと思う。この時代の都々逸や遊郭の風習、寄席の様子など、庶民風俗がきっちりと描き込まれている。
    そうした背景の描写がしっかりしているだけに、なるほどこの時代、こうした鬱屈した若者がいたのかもしれないと思わせる説得力がある。
    冒頭は説明的な描写が多く、なかなか世界に入りづらい。ひとたび入ってみると、重厚な描写のおかげで、明治維新が明るいばかりでなく、その流れに乗り遅れたもの、振り落とされて沈んでいったものが多かったのであろうことが「体感」できる。
    幾たびか浮かびそうになりつつ浮かび上がらない定九郎の有り様は、いつの時代にも通じるものかもしれない。世の中、ヒーローばかりではないし、何事もすぐに割り切れるものでもない。
    定九郎を取り巻く遊郭やその周囲の人々も巧みに描き分けられている。
    三遊亭圓朝の枕や噺の盛り込み方も秀逸。「神経と幽霊」の話なんか、時代の空気をよく写し取ったものだったのかもしれないなと思わせる。

    *力作だが、梅雨時に読んで、すかっと爽快!というタイプの本ではないのは確か。定九郎と一緒にどっぷりと淀んでみるのも、まぁ読書の楽しみではありますか。

全173件中 91 - 100件を表示

著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木内昇の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×