海の見える理髪店

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716535

感想・レビュー・書評

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  •  温かい美味しいお茶を飲んだ時みたいな気持ちになりました。

     これからまた頑張っていこうと。

    そんな感じです。

  • じわりと胸が苦しくなる、切ないストーリーの短編集。どの話にも、ハッとする驚きが仕掛けられていた。全編を通して喪失の痛みが描かれているので、苦い気分になります。

    表題の”海の見える理髪店”は、何とも言えない気持ちになって読み応えがあった。特にメンバーズカードのくだりから、ラストの2行がとても切なく、ため息がこぼれました。

    ”いつか来た道”
    取り返せない時間の重みを感じた。救いのある展開だったけれど、もっと早くに分かり合えなかったのかとモヤモヤします。

    ”遠くから来た手紙”
    一冊の中で、一番明るく小休止という感じ。
    気持ちがほぐれます。

    “空は今日もスカイ”
    ここから好転していくのだろうなと予想できる、力強いラストで良かった。

    “時のない時計”
    他の物語と毛色が違う。時計屋のせいか、なんだか奇妙な感じがする。止まった時の中に、ずっといてはいけないという事が伝わってきました。

    “成人式”
    どんよりとした気持ちが、サッと明るくなっていくようで、この本の締め括りに相応しい話でした。

  • 家族を題材にした心に沁みる短編6作

    表題にもなっている「海の見える理髪店」は、浅田次郎の短編集にでてきそうなストーリー

    登場人物は、理髪店の店主と一人のお客だけ
    物語は店主の語りで展開していく
    高倉健さんが出てくる映画のようにも思えたし、話の中に出てくるある有名な俳優の方にご贔屓いただくようになり、週に二回は、来られるようになったという件は、まさしく理髪店好きの高倉健さんのエピソードと同じだなと思った

    ストーリーは、もちろんだが、情景描写をするための比喩表現がとても美しい

    モビールチャイムが赤ん坊をあやす玩具じみた音を奏でた

    浮かし模様のある白い壁紙はアイロンをあてる前の洗い立てのシーツのようで、よく磨かれたダークブラウンの床はスケートリンクにだって使えそうだ
    ラベルの向きがきちんと揃えられた薬剤の容器が、完璧主義の演出家に立ち位置を決められた舞台役者に見えた
    店主は客用の椅子の脇に付属品のように立っていた

    蒸しタオルからかすかにトニックの香りがした。この匂いも懐かしい。大人の匂いだ。子どもの頃、床屋へ行くたびに、自分の知らない大人の世界の手がかりのように嗅いだ、大人の男の匂い

    こんな表現もじっくり味わいながら楽しんだ

  • 【直木賞】受賞、おめでとうございます。

    せつなくほろ苦い人生の可笑しみが心にしみる短編集でした。

    そういえばちいさい頃は、弟と一緒に床屋さんだった…。
    剃刀をベルトのようなものでシュッ、シュッっとやってみたかったこととか、
    暖かい白いクリームや、顔をそられた後のつるりとしたほっぺとか、
    懐かしく思い出しました。

    特に好きなのは#遠くから来た手紙
    夫が仕事ばっかり、と腹を立て実家に帰った主人公に届いた謎のメール…。
    戦時中、どれほど願っても、ともに生きられなかった人がいる。
    添い遂げたくてもかなわなかった人がいる。
    孫娘を心配し、現代人の贅沢な悩みや不満を叱ってくれたメッセージ。
    いつもそばにいてくれる人を、もっと大切にしよう。
    そう思わせてくれました。

    そして5年前、15歳の一人娘を事故で亡くしてから、
    時間が止まってしまっている両親を描いた#成人式。
    母親が娘の代わりに振袖を着て成人式へ出席して、それを応援する同級生たち。
    自分たちが悲しみ続けることを娘は望んでいない。
    笑っていてくれることが嬉しいはず。
    そう思えるようになった両親。
    これにはうるっと…。もう弱いです。

    なんかね、じんわりとこみ上げてくるものがあります…。
    誰でも取り返しのつかないことへの後悔はあって、
    それを抱えて生きているものなんだなぁと…。

    家族だからこそ、難しいこともあるかもしれないけれど、
    「ありがとう」と「ごめんなさい」を…。
    伝えられるうちに…。

    • あいさん
      こんにちは(^-^)/

      直木賞の作品早速読んだんだね〜♪
      本屋さんで見たらあと1冊で迷ったけど今回は買わなかったよ。
      今すぐには...
      こんにちは(^-^)/

      直木賞の作品早速読んだんだね〜♪
      本屋さんで見たらあと1冊で迷ったけど今回は買わなかったよ。
      今すぐには読めないと思うので。
      でも、うさちゃん、☆五つだから気になるわ。
      2016/07/22
    • 杜のうさこさん
      けいちゃん、こんばんは~^^
      コメントありがと~~!うれしかったよ!

      このところ、慌ただしくてなかなか遊びに行けなくて、ごめんね~
      ...
      けいちゃん、こんばんは~^^
      コメントありがと~~!うれしかったよ!

      このところ、慌ただしくてなかなか遊びに行けなくて、ごめんね~
      「いいね!」のとなりに「ごめん!」も欲しいわ。

      直木賞そうなの、早速。と言いたいところなんだけど実はたまたま(笑)
      荻原さん、ずっと好きで新作が出ると買ってたの。
      いつもならそのまま長い間、積読山に埋もれさせてしまうことが多いんだけど、
      この表紙が夏らしい雰囲気で、私もけいちゃんみたいに季節感あふれる本を読もう!って。
      やっと読み終えて感想書こうかな~と思っていたら、
      なんと直木賞の候補作品だった。
      そのことも発表の当日に知るという(笑)
      そしてその直後に受賞されて!
      世情にうといにもほどがあるよね。ホント!

      感想もね、なんだか落ち着かない気分で、やっと書いたの。
      ☆はね、う~ん、正直に言ってしまうと少々ご祝儀(笑)
      もやっと消化不良の作品もあったりしたから、
      いつもなら4にしてたかも…。(エラそうに!笑)
      でも、ずっと長い間楽しませていただいた作家さんが、やっと受賞されるって嬉しいね。

      ナツイチが気になってて、早く本屋さんに行きたくて~。
      この週末は行けそうだから楽しみ♪
      何をチョイスしたか当てっこだね。(*^-^*)
      2016/07/22
  • 伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。
    もしも「あの時」に戻ることができたら…。
    母と娘、夫と妻、父と息子…家族の日々を描く六編の短編集。

    ・海の見える理髪店
    ・いつか来た道
    ・遠くから来た手紙
    ・空は今日もスカイ
    ・時のない時計
    ・成人式

    海野見える理髪店を舞台にした連作短編集を予想して読んだら違ってた。
    色んな家族の何気ない日常を描いた六編の短編集でした。
    「海の見える理髪店」と「成人式」が良かったなぁ♪
    「海の見える理髪店」は、海辺にある小さな理髪店。
    主人の腕にほれ込んだ大物俳優や政財界の名士が通い詰めた伝説の床屋。
    ある事情からその店に最初で最後の予約を入れた僕と店主の特別な時間が始まる…。
    「成人式」は、5年前に中学生の娘が交通事故で急逝。
    悲嘆にくれる日々を過ごしてたきた夫婦が娘に代わり、
    成人式に替え玉出席しようと奮闘する…。

    どの家族も、どのお話も穏やかでどこかにありそうなお話。
    大切な人の喪失…喪失を受け入れ前に進もうとしていた。
    最初の海の見える理髪店で、こんなお喋りな店主嫌だなぁって思ってたら、
    あぁ…やられたってガツンと心に響いた。
    間の4編は良いお話なんだけど、少し物足りなさを感じてた。
    でも最後の成人式でまた、あぁ…やられたって思った。
    心が温かくなったり、涙が零れたり、哀しいのにほっこり笑ったり、
    本当に様々な感情が湧いて来た。
    家族の形は時の流れによって変わっていく。
    家族って儚いものなのですね…。
    家族というかけがえのないものを改めて大切にしたいって思った。
    今を大切にしなきゃ!これからを大切にしなきゃ!
    心にじんわり染み入りました。

    • 杜のうさこさん
      しのさん、はじめまして。杜のうさこです。

      いつも、いいね!をありがとうございます!
      私もしのさんのレビュー、いつも楽しみに読ませてい...
      しのさん、はじめまして。杜のうさこです。

      いつも、いいね!をありがとうございます!
      私もしのさんのレビュー、いつも楽しみに読ませていただいてます。
      感動したり、ん??ってなるところが似ているような気がして、
      すごく嬉しかったりします♪

      私もこんなおしゃべりな理容師さん、いやだわ~って思ってました。(笑)
      そして、同じくガツン!
      ミステリーでも必ずひっかかります。
      まさに作者の思うツボです。(笑)

      そして、#成人式、よかったですよね~。
      切なくて、温かくて泣けました。

      薬丸岳さんの新作、読まれたんですね。
      実は今日仕入れてきたんですよ。
      しのさんのレビューもあわせて、早く読みたいんですが、
      期限のある図書館本に追われて、積読山はなかなか低くなりません。

      はじめましてなのに、なれなれしくお話してしまってごめんなさい。

      これからもどうぞよろしくお願いします!
      2016/08/21
    • しのさん
      (*'▽'*)わぁ♪杜のうさこさん はじめまして (*´ー`*)
      コメントありがとうございますヾ(*´Ο`*)/
      とっても嬉しいです♪...
      (*'▽'*)わぁ♪杜のうさこさん はじめまして (*´ー`*)
      コメントありがとうございますヾ(*´Ο`*)/
      とっても嬉しいです♪

      こちらこそ、いつもイイネ(人''▽`)ありがとう☆
      とっても嬉しいく感じていました(*'-'*)エヘヘ
      私も、いつも杜のうさこさんのレビューを楽しみに拝見してました♪
      感動したり、んって思ったりする所が一緒だっていうのは感性が似てるのかなって嬉しいです〃(*o´∪`)o〃

      うわ~やっぱり、最初こんなにお喋りな店主嫌だなぁって思ったんだね。
      でもガツンとやられちゃいましたしたよね。
      (*¨)(*・・)(¨*)(・・*)ウンウン 成人式は切ないくて泣けちゃうのに、笑っちゃったりとっても素敵なお話でしたね♪

      オオーw(*゚o゚*)w薬丸さんの新刊本買ったのですね~凄い!
      でも、買った本が積んだままになってしまって読めないの凄く良くわかります。
      私は、BOOKOFF大好きでついつい買い込んで溜めちゃってるんだけど、図書館本を優先して読んでると…なかなか読めず何年も積んでる様な状態です
      2016/08/22
  • 家族がテーマの6編の物語。
    やはり表題作の「海の見える理髪店」が私は一番良かった。
    年老いた店主が若い客に語る、と言う形で進んでいく。
    淡々とした語り口だが、壮絶な内容。
    じんわりと心に染みる物語。
    最後の「成人式」は、冒頭から涙が止まらず。
    夫婦の新たな出発にまた涙。
    「 遠くから来た手紙」は、ちょっと不思議な話だけど好き。

    誰にでも後悔や忘れたい事、逃げ出したい事があるけれど、本当に大切な事を忘れずに、改めて家族に感謝をしようと思える一冊です。

  • 直木賞受賞作。
    家族をめぐる短編集です。

    表題作「海の見える理髪店」がよかったですね。
    海辺の町で小さな理髪店を開いている初老の主人公。
    その店に初めてやってきた青年、じつは、離婚して早くに生き別れた父親に会いに来たのです。
    気づいた父親でしたが‥

    「いつか来た道」
    不仲だった母親のアトリエを訪れる娘。
    「遠くから来た手紙」
    戦時中のような手紙が今届き‥?
    「空は今日もスカイ」
    ゴミ袋をかぶった男の子と出会って、一緒に行動する。
    ホームレスの男に助けられるが?
    「時のない時計」
    亡き父親の時計を修理してもらおうと‥
    「成人式」
    娘の成人式が近づき、振袖のダイレクトメールが届いた。
    両親は成人式に参加することにして、亡き娘の友だちも歓迎してくれることに。
    悲しいけれど、いい話でした。

    重いテーマが多いですが、しみじみと落ち着いた雰囲気で、さらっと読んじゃうこともできます。
    誰でも、一生のどこかでは出会うかもしれない、家族の問題や、どうしようもない別れ。
    切ないですね。

  • 図書館でたまたま見かけた小説。昔、読んだことがあるような気がして借りてきました。

    「空は今日もスカイ」と「成人式」が特に好きでした。美絵子さんと鈴音パパの会話に頬がゆるゆる。幸せになってほしい。
    一章一章をスラスラと読めていけるから読書が捗ってほっとできます。短編が好きな人におすすめ。

  • 先ず率直に短編で読みやすかったです。
    過去の回想的な話が多いですが、心温まる内容で読んでいて穏やかな気持ちになり、自分の思考・見かたが拡がる気がしました。
    色んな方の人生を垣間見て色んな経験や人生を歩んでいるような気持ちになれました。ありがとうございました。

  • 長編かと思っていたら短編集でした。どれもちょっと切なくて良い話。『海の見える理髪店』より最後の『成人式』が好き。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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