食べる。

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 216
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087814835

感想・レビュー・書評

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  • 世界を旅したノンフィクション作家による、「15の国でめぐり会った人たちの諸相を"食べる"ことを媒介に斬新な手法で描いた珠玉のドキュメンタリー。」という紹介文の本。
    うーん、ドキュメンタリーと言えばそんな気もするし、エッセイと言えばそんな気もする。あと、著者はノンフィクション作家だからノンフィクション?

    本著を読んでいて感じたのは、「どういう目的意識で書かれた文章なのかが明示されない」ということ。(ある意味、関西人の「で、オチは?」に通ずる感覚でしょうか(笑)
    「食べ物が出てくる紀行文のエッセイ」として、著者の経験を物珍しく眺めることはもちろん簡単なのですが、読んでいて単にそれだけの文章ではないような印象もあるのです。

    手掛かりとしては…
    ・本著に出てくる全ての食べ物は、旅先での人との出会いを媒介としている(単に食堂で注文した、というものはない。塩ラーメンは少しそれに近いけど)
    ・単に美味しいかどうかを基準に食べ物が選ばれている訳ではなさそう
    ・〇〇という食べ物の謎を解明する、的なテーマは特に無い
    というあたりからすると、極めて個人的な経験である「食べる。」という行為が、旅をして人と触れ合う中で新しい食や経験に触れることになり、著者自身に新たな「世界の手触り」をもたらしていく。
    こう考えれば、「著者自身を題材としたドキュメンタリー」と言えるんだろうか。。

    ドキュメンタリーやノンフィクションと言われると、テーマ設定をつい求めてしまうのですが、著者のスタイルは独特な印象です。
    こう書いてはいますが、現地の空気感まで伝えるような瑞々しい文章やエッジの効いた国や食べ物のチョイス(初っ端のエチオピアは重めのボールですが…)、読んでいて旅に誘われるような気持ちになります。分量も軽めなので、気軽に読んでみてほしい1冊です。

    個人的には、香港のBBQを経験してみたい!(現地に友人が必要そうですね。。)
    あと、ウォッカを飲みまくったくだりは良く文章にできるくらい記憶が残ってたなぁと。お酒強いんですね。

  • 私の食への興味がいかに底が浅いかを思い知らされた一冊。グルジアには行ってみたいと思ったが、「ゲロ」と「ゾーキン」は食べてみたいような、みたくないような。

  • 旅を食べ物、食べることという切り口で綴ったもの。ここまで極端なところへの旅行じゃなくても、普通の観光地でも食べ物にチャレンジするのには勇気がいる。体調を崩す要因にもなるから。
    なので、いろんな経験をするには強い胃腸が必要だ、と痛感…

  • 章ごとに著者が別人のように変わる。それが妙にリアルというか旅ってそういうもの

  • 世界各国を旅する作者が、おりおりに食べたものをテーマにして書いたエッセイ。

    なのだが、「食のエッセイ」とちょっと違う、「旅のエッセイ」でもない。「人との出会い」も大きなテーマではあるんだがメインかというと、それもなんだか違うような…。このエッセイはなんなんだろ?

    結果、このエッセイは「旅・食・人」を通じて「私」を語っているのかな?と考えた。総じていえば、エッセイなんてそういうものなのだが、この本の場合、特に「私語り」の色合いが強いように思う。

    第1話の臭いインジェラを食べるところから、日本の「ラーメンと豚丼」、最終章の東ヨーロッパ各国の家庭料理に至るまで、ずっと「食べた私はこう思った」「隣の彼女の笑顔は私に語りかけた」「濡れた靴下を乾かしながら私は…」。私は…私は…私は…。なのである。

    これって素晴らしいと思う。周りの人や情景や読み手のことを考えて俯瞰的に描いたエッセイが多い中、自分自身をどっしりと中心に据えるという安定感が心地よい。読者にとって、作者目線で書かれた文章を読むというのが、さくしゃの思いを一番誠実に共有できるはずなのである。

    「これを書いた時の作者の気持ちを述べよ」というチンケな問題を出されたとしても、比較的正解に近い回答を出しやすい文章ではないか?それくらい剛速球で想いをぶつけてくれる文章は、読んで気持ち良いのである。

  • 世界各地での記憶や体験、出会った人のことを、「食べる」ことを主軸にしてまとめたエッセイ集。普段あまり耳にしない国のことが書かれているから新鮮で飽きないうえに、一本一本も短いからさくさく読めて、合間合間に読むのにもまとめて読むのにも良かった。

  • 2013年

  • 名脇役として中村安希さん本人が登場する以外は共通項の無い様々な「食べる景色」にしみじみと感じ入る。

  • 贅肉を完全に削ぎ落とした文章に、強く惹かれる。理屈よりも本能が、彼女の文章を欲している。自分も他人も俯瞰しているような、一見冷たく突き放しているような、彼女ならではの表現の中に、ずっと浸かっていたい。なぜだかわからないのだが、それがとても快適なのだ。

  • 食はやっぱり旅のテーマだよな、と改めて思う。食からその国の風土、文化が垣間見える。そして、食事こそ仲良くなる一番のきっかけ。自分の旅を読みながら想起される本だった。

著者プロフィール

ノンフィクション作家。1979年、京都府に生まれ、三重県で育つ。高校を卒業後、渡米。カリフォルニア大学アーバイン校舞台芸術学部を卒業する。アメリカと日本で三年間の社会人生活を送ったのち、取材旅行へ。訪れた国は六十五に及ぶ。2009年、『インパラの朝』(集英社)で第七回開高健ノンフィクション賞を受賞

「2011年 『Beフラット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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