通り魔

著者 :
  • 小学館
3.28
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  • (10)
  • (3)
本棚登録 : 211
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863919

作品紹介・あらすじ

これは小説ですが、小説以上に切実です!

これは小説ですが、小説以上に切実な小説です!!

――たとえば、食べるために働いたことのない2世・3世の議員に、こんな事態が想像できるだろうか?
生活できないことは、こんな現実があっても「自己責任」なのか?
小さな障害はあるものの、善良だった少年が残虐な凶行に及んだのは、彼だけの罪と言えるのか?
社会が犯している「弱い者いじめ」は、人間としての「罪」ではないのか?

【あらすじ】
幼い頃から僕は人と上手く話せなかった。僕はスナックを経営する母親と二人暮らしだった。母親とも上手く話せない僕は、よく叱られた。いつもひとりで過ごしていた僕は、中学生の頃からネットの中に居場所を見つけた。大学まで行きたくて高校に上がったが、2ヶ月で辞めた。スナックのお客の紹介で地元の縫製工場に就職した。その工場では、僕が一生買うこともできないような高価な服を作っていた。4年間勤めたが、小さな事件を起こして退職した。僕は地元を逃げ出し、東京へ向かった。だがそれが、大きな転落の始まりだった‥。

感想・レビュー・書評

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  • ★2.5

    幼い頃から僕は人と上手く話せなかった。
    僕はスナックを経営する母親と二人暮らしだった。
    母親とも上手く話せない僕は、よく叱られた。
    いつもひとりで過ごしていた僕は、中学生の頃からネットの中に居場所を見つけた。
    大学まで行きたくて高校に上がったが、2ヶ月で辞めた。
    スナックのお客の紹介で地元の縫製工場に就職した。
    その工場では、僕が一生買うこともできないような高価な服を作っていた。
    4年間勤めたが、小さな事件を起こして退職した。
    僕は地元を逃げ出し、東京へ向かった。
    だがそれが、大きな転落の始まりだった‥。


    重い…重い…重い!
    コミュニケーション障害はあるが、とても善良な少年が
    残虐な犯罪を起こしてしまう…追い詰められてゆく姿を
    淡々と、本当に淡々と本人目線で描いていた。

    母親があんな人じゃなかったら…。
    クラスメイトが…。先生が…。会社の同僚が…。
    周りの人々の何気ない弱い者いじめ。
    何かが違っていれば…誰か一人でも彼に寄り添う人がいればと、
    思わずにはいられなかった。
    社会の底辺で生きている人ってこうなんだ。
    テレビで何度か目にしていたネット難民。
    ネカフェで親子三人が暮らしている特集番組も観た事があった。
    どうしてアパートを借りて暮らさないんだろうって思ってた。
    その日暮らしって息が詰まるほどのお金のなさなんだ…。

    孤独と絶望に押しつぶされた青年が起こしてしまった無差別通り魔殺人事件。
    そこに至るまでの彼の生活…残酷だし、とても切な過ぎる。
    怖い…怖すぎる。
    今の社会を考えさせられた。
    とてもとても考えさせられた。
    でも、あまりにも読むのが辛かった(*T^T)

    • りまのさん
      でも、ラストで通り魔するのには、共感できなかった。この作者の作品は、共感出来ないのに、読ませるパワーがある、と思います。
      りまの
      でも、ラストで通り魔するのには、共感できなかった。この作者の作品は、共感出来ないのに、読ませるパワーがある、と思います。
      りまの
      2021/02/08
  • 主人公の伊吹満くんが端的に言うとコミュ障の根暗であり、彼が出会う人が次から次へとクソなので精神的に読んでて楽しいという感じではないのですが…。
    でもどこか自分も伊吹くんや彼をとりまく人に被るところがあり、怖いもの見たさで読んでしまいました。瘡蓋をあえて剥がしてしまうような。
    最初から最後までなんだか救われないです。

  • タイトルからして、いずれ事件を起こすだろうと思いながら読み進めていくものの、余りにも主人公に対して理不尽過ぎて、『もう事件を起こしても良いのではないか?でも残りのページはまだある…』と残りのページ数を気にしながら主人公の行く末が気になり一気に読んでしまいました。
    本を読んだ感想としては✩5ですが気分的にはだいふ塞いでしまいました。

  • もしもこの事件を新聞で見たとしたら、この犯人に対して一ミリの同情も寄せなかっただろう。
    何の落ち度もない被害者たちの、その恐怖と無念を思い心の底から犯人を憎んだだろう。たとえ彼の人生が理不尽な排斥によって追い詰められた結果の凶行だったとしても。
    けれど、けれど、と不安になる。彼の語るあの瞬間を私は待っていなかっただろうか、と。
    ナイフを握る彼の背中を押しはしなかったか、と。

    彼のこの人生はきっとこの国のあちこちで同じように何度も何度も繰り返されている。その一つ一つが彼と同じとは言わない。どんなに悔いても贖える罪ではないとはわかっている、けれど。
    こうなる前に、何とかならなかっただろうか。誰かが手を差し伸べられなかったのだろうか。
    何十人もの彼を押しとどめる何かを私たちは考えなければならないんじゃないだろうか。
    彼の背中を押さないでいられるために。

  • コミュニケーション障害を抱え、同級生や職場の同僚はおろか、母親とも上手く会話ができない主人公。そんな彼が度重なる辛く理不尽なことにも耐え忍び、何とか生きていこうとするが、方々で裏切られてしまい、最後には恨みや妬みが爆発しとんでもないことを起こしてしまう。物語は終始、主人公から読者へ語りかける形の構成。最後まで主人公に対して感情移入も共感もできず。そして作者がこの本を通して読者に何を伝えたかったのかは分からなかった。配管清掃の場面に象徴されるように、終始どこかに閉じこめられたような閉塞感が漂う一冊だった。

  • 著者の本は初めて。コミュニケーション障害を抱えた主人公の独白形式。文体が少し変わっていて、ですます調が時々崩れる。漢字の使い方も独特で、「一寸」など使うため、古い作品を読んでいる気分になった。

    不穏なタイトルに向かって、ゆっくりと追い詰められていく感じ。どこの選択を変えたらよかったのか、誰なら助けられたのか、と考えてしまう。

    直接関係ないのだが、警察の取り締まりや派遣会社の登録などの方法はこんな風になっているのだな、と少し知らない世界を知れた気がした。

  • 『自分がこの状況に陥ってしまったらどうする?』
    と考えさせられるような小説でした。
    信じられる人もいなくなり孤独でお金もないそんな状況です…

    SNSが広まっている今、SNSの危険性についても考えさせられました。

    気になっている方は是非手に取ってほしいです!!

  • 野ばら氏ぽくない作品。
    これはこれで好きです。

    しかし、毎回読み終えると、虚無感に苛まれる。

    蒲田ってドヤ街だったの?
    そんなに治安が悪いの?

    特にネカフェのキッチンスペースにあったソース無し麺を食べるシーンが読んでて辛くなる。

  • 罪を憎んで人を憎まず。これほどこの言葉が沁みたことはないです。
    最初から罪を犯す為に生まれてくる人間なんていません。
    ですが、胸の内に他人への殺意を秘めている人間なんてごまんといるはず。
    わたしも頭の中では何人も殺してきた。

    誰もがこうなる可能性があって、決して他人事だと思えない主人公の心情に苦しくなりました。
    同情も肯定もしないけれど、否定もできない。
    どうすれば良かったのかもはっきりと浮かばず読了後しばらく暗い気持ちをひきずりました。
    野ばらさん作品は好きでよく読みますが、なかでも心に残る一冊でした。

  • 堕ちていく人生を擬似体験しているように思えた。
    特にどんどん無くなっていく所持金の描写がリアルだった。

    個人的には最後のシーンで赤い服を纏った人をターゲットにしたところで鳥肌。

    篠田のハイブランドを着たいという報われない想い、資本主義社会に対する抵抗、誰も助けてくれる人はいないという絶望感を背負って犯行に及んだシーンでは複雑な感情だった。

    関わる人が悉く冷たすぎる!と思ったが、その日暮らしをしている人の現状なのかな。怖い。

    ラプンツェルのくだり以外野ばらちゃんぽくない作品だと思ったけれど、これはこれで面白い。 

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著者プロフィール

文 嶽本 野ばら
京都府宇治市出身。作家。
1998 年エッセイ集『それいぬ̶ 正しい乙女になるために』(国書刊行会)を上梓。
2000 年『ミシン』(小学館)で小説家デビュー。
2003 年発表の『下妻物語』が翌年、中島哲也監督で映画化され世界的にヒット。
『エミリー』(集英社)『ロリヰタ。』(新潮社)は三島由紀夫賞候補作。
他の作品に『鱗姫』、『ハピネス』(共に小学館)、『十四歳の遠距離恋愛』(集英社)
『純潔』(新潮社)など。『吉屋信子乙女小説コレクション』(国書刊行会)の監修、
高橋真琴と共書絵本『うろこひめ』(主婦と生活社)を出版するなど少女小説、お姫様をテーマとした作品も多数。

「2021年 『お姫様と名建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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