コスメの王様

著者 :
  • 小学館
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感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866415

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!
    明治時代に花街に売られたハナとやはり貧しく生きてきた利一の出世話。
    利一の身体に良い化粧品をの思いがトントンと大きな企業となっていく。
    それを支えたハナも花街では出世するが…
    明治から昭和へと難しい時代を生き抜いた人達の心意気が心地良かった。

  • ドロドロした処が無くて朝ドラの原作みたいですね。
    主人公の二人が純粋です。
    本当にこんな人間がいるのかなと思いました。

  • ハナさん好きだ。

  • 読み終えたあと、しばらく放心してしまって、感想が、言葉が出てこない。
    本当に素敵なお話だった。

    明治時代、色街に売られたハナと進学を諦め家族のために働く利一。不思議な縁で出会い、そして支え合う。
    グングンと仕事にのめり込んでいく利一の様子は読んでいて楽しかったし、勢いもあってこちらも気持ちがはやりながらページをめくった。
    最高のお膳立てが整って、ようやくふたりの想いが成就する……かと思いきや、自分の足を引っ張る兄弟の存在がネックとなり、利一から身を引くことに決めたハナ。「え!? 残りのページも少ないのにまさかこんな!?」と本当に本当に驚いたしショックだった。
    そして離れ離れになってからの利一は取り憑かれたように仕事に打ち込み、形ばかりの家族も持ち、でも戦争によって心血を注いで来た会社を失う。良き友・良きビジネスパートナーだった仲間も失う。
    ハナを生涯の人として利一は独身を貫くと思っていたから、「おまえ〜!」と利一にイラッとしたけど、でもまぁ時代が時代だし、利一の地位的にもそして会社を確固たるものにするためにも、結婚は必要だったよなとあとから冷静になって思う。
    会社を失ってボロボロになった利一は40年振りにハナと再会し、そこからまた二人で過ごす穏やかな日々が始まる。
    当初私が思い描いていたような関係ではない。
    確かにあの時利一とハナの恋愛が実って結婚して、そして二人の間に子どもが生まれて…となったら利一はより生き生きと仕事に励むだろう。でもハナは家庭を守る側になってしまって、ハナが望むような『自分の足で立つ』生き方は出来なかったよなと思う。だから遠回りしたけど、いや、遠回りしたからこそ、二人はこうしてしわしわの狸じじいと狸ばばあになって、また二人の時間を動かすことが出来たんだな。そう思うと温かい気持ちになれた。

    ジェットコースターのように(特に後半)色んなことが起こるお話だったけど、でも読んでいて「自分も頑張ろう!」とパワーをもらえる素敵な作品だった。
    高殿さん、この世に生み出してくれてありがとう!(笑)
    図書館で借りて読み始めた本だけど、これはちゃんと手元に残しておきたいので本屋に走りました。
    装丁も素敵でカバーで隠してしまうのがもったいないくらい。

  • コスメを広めることに尽力した1人の男と、陰ながらに支え強く強く生きた女の物語
    凄く胸が熱くなる


    女性の為に、身体に害のない化粧を作る
    そして、真心を持って全ての人が使える物を作り広めてく
    利一さんのその志がとてもカッコイイ
    化粧品王の名に相応しい程の名声を手に入れる
    けれど、同じ王様が王座に君臨することはない事だろう
    戦争による打撃は凄まじく、一気に衰退する
    落ちぶれていく様は本当に苦しいものだ
    栄光一瞬で、瞬く間に名が忘れられていくのはどの時代どの人間でも一緒だ
    彼からとても、学ばせてもらえる

    そして、ハナ
    彼女の努力はとても美しい
    自身の身の上に苦しみながら、今を受け入れる
    私は芸妓や舞妓に詳しくなかったが、読んでいてつい調べてしまった
    沢山の人から愛されるのは彼女の人柄や強さや努力なんだと思う
    だから、頑張れって思うし私自身にも応援してもらえているようだ

    利一とハナが結ばれることは無かったけれど、近くて離れてまた近寄って、それが彼らの形であるよう
    近くて遠い存在だったからこそ、キラキラして強く輝く人生だったのだと思うのだ
    帯の書店員さんの感想に、「ビジネス書としても、恋愛小説、自己啓発本としても楽しめる1冊です」の文字になるほどと理解する

    化粧は苦手だけれど、私も永山心美堂のはハートの化粧品使って化粧したい

  • パラパラ読んだときに花隈の地名が目に入って、学生時代を神戸で過ごしたので懐かしくなって読んでみることに。

    飛行機で自身の会社を宣伝するという大胆な導入場面。利一が興した会社はまさに発展していくその時でそれを見ながらハナはいっそう利一が愛おしくなるのだった 
    この場面が疾走感と希望いっぱいのキラキラ感がすごい 高殿円さんが描写すると眼の前に浮かんでくるよう
    全部読み終わってから思ったけど、この場面は利一と離れることを決めているところなんよね
    ほんまに愛おし!と言いながらもう一生会うことはないって決めている
    自分はこれからどんどん大きくなる利一の邪魔にしかならないから…
    切ない!!

    この本には色々と対になっている部分があると思った 
    整った顔立ちがよく似ているハナと利一
    大家族を支えたいと都会で頑張る利一と朝生
    仏様とキリスト教

    ハナと利一の関係はもちろんのこと、利一と朝生も気になった
    境遇も想いも似ていたのに2人の生き方はまるで違ってて 朝生は聖書を利用して私欲のために人々を陥れ、利一は真心を大事にみんなを幸せにする…
    お寺の掃除に疲れて寝転がると、金色の仏様の飾りに囲まれているようだった
    いつも仏様が見ている、だから真心を大事にしなくては、みんなを幸せにしなくちゃという気持ちで育っていけたのかもしれない 例え、学校に行けないほど貧しくても…

    ハナも利一も心に大きな鉄の箱を持ってて、その中に自分の気持ちを入れてきた
    花街に売られたくない、上の学校に行きたい…
    年を取った2人が自分の気持ちを全部言うことができて、ただの狸の子だった小さな頃に戻れてよかった 




  • 面白くなくはないが、今一つ物足りない読み応えだった。

  • 戦前の大手化粧品会社である中山太陽堂を創立した中山太一をモデルとした小説

    恋愛小説でもあり大正、昭和の経済社会を学べる最高に面白い本だった

    関西がメインで神戸の地名も沢山出てきて親しみやすかったけど、テンポは良くは無いから読みずらさは少しあった

    長男として家族を支えるために休む暇もなく働き続ける利一と
    両親に幼い頃に色町に売られたハナ
    の2人の物語

    利一の真心を大切に、毎日が吉日、という言葉が彼の生真面目さをよく表していた。化粧品会社を大きくして成功!以上!で終わらなくて戦時中の悲惨やその後の苦しみが壮大で、老いとどう向き合うかが描かれていて涙が出てきた。

    ハナは利一を誰よりも大切に思っていたが故に利一に迷惑をかけまいと利一の元を去ってしまったのが、ハナらしいと思った

    利一とハナは恋人にも夫婦にもならなかったけど誰よりもお互いのことを想っていて、最後に再開できてよかったほんとに

    サクセスストーリーでは無いかもしれないけど読んでいてとても考えさせられたし、リアルな世界を描いていたと思う

    ずっと手元に置いておきたい1冊

  • ハナと利一の恋がせつない。

  • Kindleで読んだ。
    山口の家族を支えるため神戸に出てきた少年・利一。牛より安い値段で花街に売られてきた少女・ハナ。2人の出会いは大ヒット商品誕生へとつながり…。“東洋の化粧品王”と呼ばれた男の一代記。
    初読みの作家さん。

    中山太陽堂(のちのクラブコスメチックス)創業者の中山太一さんがモデル。
    広告業でも名を馳せ、斬新な広告を次々と打ち出したそう。
    朝ドラでやったら面白そう。

    ライオン、ウィルキンソンに三ツ矢サイダー、十合(そごう)や大丸などいまもある商品や店がこんなに古くからあったんだとびっくり。

    食や化粧品、洋装などがいろいろ発展してるのに大戦でまた逆戻りというか…。
    戦争の前の時代がこんなに華やかだったとは想像ができない。
    せっかく開発した商品も、戦争による統制で原料が手に入りにくくなったり、贅沢品だからと製造出来なくなったりした。

    利一とハナがお互いの気持ちを確かめ合うところ。
    純朴な感じがもう…!
    「僕が、大阪の堺町あたりに家を買うたら……、その家に銀杏の木があったとしたら、いやなくてもや。もう、お座敷にはでんで、僕の前だけでたぬきを踊ってくれる?」

    でも、想いあっていたのに…いたからこそ。
    悪い身内がいるハナは身を引き、ニューヨークへ。
    この時代に外国で暮らすってすごいなぁ。

    おじいちゃんおばあちゃんになって再会した2人が良い友達として交流していて良かった。

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著者プロフィール

1976年兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。主な著作に「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、『メサイア 警備局特別公安五係』、『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』、『マル合の下僕』、「カーリー」シリーズ、『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』、『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(文藝春秋)など。2013年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。漫画原作も多数。

「2023年 『忘らるる物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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