蓼喰う虫 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005072

感想・レビュー・書評

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  • "妖しく交錯する"という表現がぴったり当てはまるような内容。
    既婚者だからこそ、この小説を興味深いと思えるのかもしれません。

  • 時代を経てもなんだか今と通じるようなちょっと粋な姿が面白かった。
    子供のことを案じながらも、別れる夫婦だけどでも、お互いのことは思いやれていて壊滅的なわけでもない感じ。

  • 昔の日焼け止めの商品名アンチソラチンなのいいね

  • 文学好きの知人が「谷崎潤一郎の中では『蓼喰う虫』が好きだ」と言っていたので、読んでみた。読後「どうだった?」と聞かれたので、「人形浄瑠璃が見たくなりました」と言ったら、知人も「私も全く同じ感想だった」と。人形浄瑠璃は徳島で『傾城阿波鳴門』を見たことがあるだけなので、要たちが淡路島で見る『朝顔日記』を見てみたいと思った。こんな風に、お重にお弁当を詰めて行って一日中屋外で浄瑠璃見れたら楽しいだろうなぁ。トイレが無いのは困るけど。
    夫婦関係は、まぁそういうこともあろうかなぁという感じであまり心動かされなかった。谷崎の書く男女関係や恋愛のあれこれよりも、作品に表れる谷崎の日本文化に対する目の方が好きだ。

  • 文庫本の裏表紙に著者の私生活を反映した問題作、と書いてあるのが気になって読んでみた。

    物語の冒頭、旦那が出かける前に身支度を妻が手伝ってやるシーン。
    それだけのことなのに、女性の姿態の描写が妙に生々しく、さすがの描写でいきなり引き込まれた。

    世間体を気にして離婚に踏み切れない主人公。
    子供に自分の口から言うのさえ憚れて、従兄の口から子供に伝えてくれないかと思っている。
    妻の父親にもなかなか切り出せない。
    グズグズぶりがなんとも情けない。

    こんなんだから嫁が旦那に魅力を感じず、外で彼氏を作るんだよ!と思ってしまった。

    前編を通して昭和20年代の日本の雰囲気を満喫。
    TVもネットもない時代、娯楽であった文楽、人形浄瑠璃を楽しむシーン満載。
    決してキレイとはいえない芝居小屋でのトイレ事情や裸電球の照明など、芝居好きの私には興味深かった。

    妻の父親は50代後半だというのに、やたら老人という描写。人生100年時代となった今でいうと70代位でしょうか。

  • 裏表紙の簡単なあらすじを見てどんなものかと思ったが、文章美しく、心理描写に優れている谷崎潤一郎の世界にすぐに入ってしまいました。
    性的不和の夫婦が段取りを踏んで離婚に向かっていけるよう取り決めをすると言う様な話はこの作品が書かれた時代には衝撃的ではなかったか。
    別れたあとの妻とその恋人の幸せを願う一方、1人になる自分を想像した時の心情など、あれこれ思う気持ちの表現が巧み過ぎる。
    文楽の世界が描かれているのも物語に色彩を与えている素晴らしいところ。

  • 初めての谷崎潤一郎。

    解説では谷崎潤一郎の作品でも異色を放つという。

    人物、心理、風景、関係、動作などの描写は言うまでもなく小説の重要な要素だが、そのいずれにも偏らない、バランスの取れた、いいようによっては特徴のない作品と感じる。

    さらに、筋立てはシンプル。
    矢が的に向かって素直に放たれるように、起伏の隙間を縫う。

    有島や三島などではぐっと唸らされる場面に出くわすが、それもない。

    ただこの作品は情緒のみ特徴とする。
    ここに出てくるひとたちの情緒がこの作品に通底する出汁となり、読み応えを与えるのかもしれない。

  • 妻を肉体的にも精神的にも愛しきれない夫とそんな夫から愛されたい反面本当の恋を知った妻が、これからの人生をどうするか踏み切れないでいる話。
    何か大きな事件や進展があるでもなく、どちらかから、はたまた誰かが2人の関係に見切りをつけてくれないかと他力本願な2人を描いている。
    別れを切り出されたい、自分が悪いのはわかっている、お互い似たもの同士だからこそ踏ん切りがつかなくていつまでもうじうじ言い訳ばかり。
    じれったいと思う人が多いかもしれないけど、個人的には特に夫に共感ができるなあと。
    愛はないし一緒いても仕方がないと分かってても、いざ別れを切り出すと涙が溢れてくる、だけど避けては通れないけど、できることなら先延ばしにしていたい。
    一時の感情で娼婦のところへ行くけれど、結局はそちらにも踏ん切りはつかなくて…。
    なんだか本当に人間らしさがぎゅっと詰まってるような印象でした。

    途中の人形と女性を照らし合わせる描写もフェミニズムの象徴なのかな、その辺よくわからないけど。
    理想の女性像、たしかに芸達者でお料理もできて気の利く肌の白い女性は男性の理想なのかな、女性的にも素敵だなぁとは思うけど。

    2020.12.11 読了

  • 性的不調和が原因で、離婚しようとするが、なかなか踏み切れない夫婦を描いた作品。
    今のように簡単に踏み出せないのは、当時の世間の目が大いに関係している。
    妻の立場を思うと、こんな夫は嫌だ!と言いたくなる。自分に性的な魅力を感じてくれず、また他の男のもとへ通うのも助長されるのだから。しかし、なかなか夫を攻めきれないのは長年寄り添ってきて情がなかったわけでは無かったからであろう。しかし、妻は夫に素直になることができないのは可哀想だと感じた。

    スッキリしない終わり方、と言われればそうなのだが、当然なのではないかと感じた。最初から曖昧な関係、曖昧な心持ちの夫婦だったのだ。それが、最後に綺麗に収集される方が違和感がある。きっと夫婦は別れ、それぞれの道を歩むのだろう。しかし、そこまで描く必要もない。一貫した終わり方だと感じた。

  • どこの夫婦にも多少はありそうな不和が比較的若い時期に訪れた悲劇ではあるが、夫婦感の感情の起伏をとても繊細に丁寧に描いており、また表現がうつくしい。
    嫁の父が中を取り持とうとしているが読みのほうが遠ざける原因が目かけのお久にあることとか、はっきりと描かれてはいないが根深い感情があると察しつつ考えさせられる。
    淡路に三人で人形浄瑠璃観覧に行くところは本筋ではないけれど情景が浮かぶようでとても楽しい。夫のかなめの感情はルイズやお久を慕っていることが終盤に明かされいよいよ興味深い展開に。
    最後に父娘二人ででかけ、嫁が泊まりを了承した意外な展開から、残された要とお久の風呂場や寝床での描写などの後に突如終わる展開が何故かとても印象深い。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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