走れメロス (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006062

感想・レビュー・書評

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  • 走れメロス
    メロスが人間臭くて笑える。「人を疑うことは最も恥ずべき悪徳だ」と言い張っておきながら、自分が欺くことに関しては言い訳たらたらで泣きが入りながらも一度は肯定してしまうお調子者。その後持ち直し、「俺を殴れ」から始まる感動シーン?を迎えるのだがメロスの内情を知っている読者視点からみると茶番にしか見えない。表面だけ見ると人を信用することの尊さを説いた物語のように思える。事実小学生の時の私はそう思った。しかし、今となっては、人を信用することの愚かさ、滑稽さを逆説的に強調するための友情物語のように思えてたまらない。人ほど不安定で信用に値しないものはない。裏切りなんて当たり前、騙し騙されの関係が日常で繰り返されている。そんな中で関係を続けていくのに必要なのは信用ではなく、寛容さである。メロスのような奴を非難し排除し続けたら、あとに残るのはセリヌンティウス的な聖人だけであろう。そんなやつはそうそういないのだから、信用をものさしに人をはかるのやめた方が良い。

    • lacuoさん
      「人ほど不安定で信用に値しないものはない。裏切りなんて当たり前、騙し騙されの関係が日常で繰り返されている。そんな中で関係を続けていくのに必要...
      「人ほど不安定で信用に値しないものはない。裏切りなんて当たり前、騙し騙されの関係が日常で繰り返されている。そんな中で関係を続けていくのに必要なのは信用ではなく、寛容さである。」

      ううん、なるほどー。

      オレは『走れメロス』って、大人になるまでちゃんと読んだことなくて
      ようやく最近になって、youtubeで朗読してるのを聞いて、初めて内容を知ったんだけど

      現代の基準から見れば、メロスの自分勝手でテキトーでお調子者な言動は、ツッコミどころ満載すぎて、笑ってしまった。

      評価が★★★なのも、頷ける。
      たしかに、★★★くらいのクオリティーの作品だと思った。

      でも、このレヴューは★★★★★だよー。
      「人ほど不安定で信用に値しないものはない。」
      それは、オレ自身についても、まったく当てはまるんだから
      ましてや
      他人に、絶対的な信頼関係を求めるなんて、そもそも、まちがってるのかもしれない。
      たしかに、大事なのは「寛容」なのかも。
      2022/10/01
    • metasekoiyaさん
      <lacuoさん
      事前(この人に事を頼めるか?の検討など)と事後(事を頼んだ人の評価など)を繰り返す人間関係においては、今どの段階にいるか...
      <lacuoさん
      事前(この人に事を頼めるか?の検討など)と事後(事を頼んだ人の評価など)を繰り返す人間関係においては、今どの段階にいるかで、「信頼」と「寛容」の相対的重要度が変わってくるかもしれませんね。多くの場合で、事前の段階では 、事を頼む人への「寛容」より、「信頼」の方が重要になり、事後の段階では「信頼」より「寛容」が重要になる気がします。
      ここからは私の個人的な経験談になりますが、「信頼」だけを重要視していた時期は、事後の段階で関係が破綻することが多々ありました。「信用してたのに裏切りやがった」と思ったら、直ぐに関係を切ってしまっていたんですよね。そういうことを繰り返した結果、気がついた時には、不本意ながら、一人ぼっちになっていました。
      その反動で、「寛容」だけを重要視していた時期は、事前の段階で、すでに関係が破綻していることが多々ありました。信頼がない人でも無理して事を頼んだり、引き受けたりするので、量的にみた人間関係は増えます。しかし質的にみると、すでに破綻している関係がほとんどで、それらの関係は、自身の「無理(頑張りとも言われる)」によってのみ支えられていました。無理は長く続かないですし、そもそも他人と関わるのが億劫になってくるので、むしろ自ら進んで一人ぼっちに。
      今は、事前と事中は「信頼」を、事後は「寛容」を重要視していますが、どうなることやら。
      2022/10/05
  • 全9編収録。『走れメロス』はシラーの『人質』をモチーフとしており、また熱海の出来事として、太宰治は借金の人質に檀一雄をたてて、お金を工面しに出かけていきますが、一向に帰って来ず、しびれを切らし探しに行くと、井伏鱒二と将棋を指していたという裏話しも有名。物語に関して言えば、メロスは思慮が浅く、自己中心性と自己陶酔性をを併せ持つ危うさを孕んだ人物として描かれており、単なる王を改心させる良い話しとして終わらせない所に面白さがあります。

  • 太宰治の作品集のなかでは比較的明るく、また、中期の作品の方が作者本来の魅力が出てます。

  • 教科書で読んだ。激怒して約束させられて走らされて疲れて眠っちゃうメロス。かわいい。

  • 本屋で見かけて、「走れメロス」読んだことないなと思い購入。「女生徒」といい太宰ってこんな作品も書いているんだなと思いました。
    「東京八景」がお気に入り。読んでいて苦しくなりました。

  • 太宰治の良し悪しはまだ分からないけれど、何故か読みたくなる。

    やっぱり、走れメロスが良かったかな。

  • 本書を読んでいて、これは小説ではなく散文ではないかという思いを抱いて読んでいた。
    何処がそういうような気持ちを抱かせれるのかを考えていたが、柔らかい文体もそうだが、太宰治自身に物語を語る意思がないからではないかと感じた。

    表題作の『走れメロス』にしても、何か小説ではなくて散文のよくできたものという印象が強い。
    別に散文だから、評価を下げるとか、そういう意味ではなく、文章の構造によるものである。
    それは、僕がやさしい口語体の文章をあまり読み慣れていないせいだろうか?

    ユダの内面とユダから見たイエスを描いた『駈込み訴え』は、よかった。
    名作であると思った。

    『女生徒』
    本当に女性が書いているように感じた。
    大人でもない子供でもない思春期のアンビバレントな少女の内面が面白く現れていた。

  • メロスとセリヌンティウスの友情がすごいと思った

  • メロスは激怒した。この冒頭で一気に引き寄せられるのよ_φ(・_・

  • 少年時代に感慨深かったものを大人になってから読むシリーズ。確かにメロスが諦めそうになるシーンの内省は目を見張るものがあるが、そもそも死刑になったのは考え無しに城に突貫したのが原因だし、友達死にそうなのに意外と寝坊するしで、やや人間味を再確認もできた。でも、この短さでこのメッセージは凄いね!

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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