走れメロス (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006062

感想・レビュー・書評

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  • こんなにも
    いさぎよくて
    さわやかで
    正しい小説を読むと、心が晴れ晴れとして勇気がわいてくる
    そうだ!走れ!
    走れ、メロス!
    走れ、私!

  • 【ダス・ゲマイネ】
    小説家の太宰治の斜に構えた態度が見れる。しかしその正直者故の文体が嫌いになれない。

    【富嶽百景】
    美しい富士山を嫌いな、やはり斜に構えた男。そんな彼がやっぱり富士山は良いと言ってしまう。可愛い。キュートだ。

    【女生徒】
    珍しい、女の人が主人公の作品。嘘のない正直すぎる文章がウリの作家だと思っていたが、なるほどこの短編も、主人公の女生徒の偽りのない真っ直ぐな気持ちの流れをとても細かに描いてある。うんうん。思考ってのはこんなふうに流れるよな。大人になる途中の女の子は意外と色んなことを考えているなあ。しかしリアルだなあ。そんなふうに読むのだが、紛れもなく男性でおじさんの太宰治が書いているのである。自分とはかけ離れた女生徒の気持ちですらこれほど精巧に描けるのなら、他の作品もただ正直に描いているのではなく絶妙な虚構だったのか。裏切られた!


    【駈込み訴え】
    予備知識なく読み始めて、「あの人」へのわたしの執着を読んでいた。キリスト教信者のようなことを言うなあ、ん?ん?これは、、あの人とはイエス・キリスト本人のことか。そして、愛故にジェラシイを抱き、裏切りを決心する。ん?これはユダの話か!と読んでいきながら段々と分かってくる感覚が初見でとても面白かった。また、この短編の中では宗教的な信仰は見られるが、キリストは魔法のようなものを一切使わない。実存主義的な聖書の解読だ。ユダが愛故の嫉妬で感情が行ったり来たりする描写も、とてつもなく人間的で本当にあったことだと思える。そしてあの人、イエスキリストが町娘に愛情を抱いていたかもしれないという描写。これはクリスチャンではない私自身も、聖書を読んでいて可能性として考えてしまった現実的な視点だった。聖書を写実的に捉えて物語にしてしまい、それが全く現実味のあるものになっている。その手腕と意欲に感動した。

    【走れメロス】
    小学校の教科書に全文が載っていたようだが、ふんわりとしか憶えていなかった。だが、マラソン大会の時なんかはこれを思い出して、「走るんだメロス」なんて自分に言いながら走ったような気もする。28歳になって改めて読んだが、紛れもなく名作。筋トレをしながら読んだこともあり、心臓がバクバクやる気に満ち溢れた。人生にはやりたくない事、避けたい事が山ほどあるが、しかしやらねばならぬのだ。メロスは走った。
    そして、走りながらパンツも脱げていき、全裸でセリヌンティウスに合流。熱い友情を分かち合った。大衆の中にいた若い娘さんが、全裸のメロスにマントを与えた。赤面してそれを着る可愛いメロスで物語がオチる。オチまで完璧じゃないか。改めてとっても面白い文学だった。


    【東京八景】
    太宰治のエッセイ風作品。私小説っていうのか。彼がどんな気持ちで学生時代から30代前半までを生きてきたか知る事ができる。文の書き方がよく、自分ごとのように感じてしまう。年齢も近い。厭になるなあ。最後ちょっと明るく終わって嬉しかった。


    【帰去来】
    勘当されている太宰が、北さんの厄介になりながら10年ぶりの故郷に帰ってくる。緊張しながら帰る太宰に、母や祖母が泣きながら懐かしんでくれる。親子の情はいつの時代にも変わらないなと感動した。


    【故郷】
    帰去来の続きのような作品。故郷に帰ってその話を書いたそのすぐ後に母が危篤になり再び実家に帰る話。実家でありながらそわそわと心が落ち着かない様子がとてもリアルで、自分ごとのようだ。

  • 教科書で有名な表題の『走れメロス』は箸休め的な短編だけど深い、一人称を女性として書いた『女生徒』が非常によかった。私小説的なものが多いので非常に読みやすかった。聖書を題材にした『駆け込み訴え』もよかった。

  • 勝手に友達を自分の身代わりに決めたり、友達の死が掛かっているのに、寝坊!したりと、とても人間的なメロスでした(笑)
    ぜひぜひ、読んでみてください❗

  • 太宰治の短編集

    太宰といえば「人間失格」「斜陽」「走れメロス」というイメージで、暗い作品が多いイメージだったけど、この短編集には明るい作品や爽やかな作品もあって、
    太宰治の様々な面を見ることができた。

    特に好きだったのは「富嶽百景」

  • 今年も6月の桜桃忌の頃に太宰を再読しようと思っていたのに結局8月になってしまった…(去年も遅れてP+D BOOKSで『帰去来』を読んだ)それにしてもちゃんとメロスを読むのは30年ぶりくらいな気がする(苦笑)

    短編集としては、私小説系の作品(富嶽百景、東京八景、帰去来、故郷)と、メロスや駆け込み訴えなど一種二次創作的な異国の話などが混在していて、そこは分けようよ、とは思ったけれど(これは太宰のせいではない)太宰入門編的な編集なのかな、まあそう思えば悪くはない。

    キリストを裏切るユダの「駆込み訴え」が一番好きです。愛憎入り混じったユダのイエスへの歪んだ感情が一気に噴出する感じ、とても良い。最後に自ら貶める自虐的なところは、太宰自身とも重なる。

    「女生徒」は、思春期の女の子の気持ちがとてもリアルに描かれていて、さすが太宰と思う反面、30代のおじさんが女生徒の気持ちを一生懸命想像して書いているところを想像するとちょっと可愛いようなキモいような(笑)

    「ダス・ゲマイネ」は、なぜか語り手とは別に「太宰治」が登場してきてこれも笑ってしまった。芸術家気取りの4人の登場人物は、全員が太宰の分身のような印象も受けた。総じて太宰は、ちょっと距離をとって読むと意外とユーモラスなんですよね。

    ※収録
    ダス・ゲマイネ/満願/富嶽百景/女生徒/駆込み訴え/走れメロス/東京八景/帰去来/故郷

  • 中期の短篇9つ収録。

    特に「女生徒」「駆け込み訴え」「走れメロス」の三連符に射抜かれました。

    数十ページで女性の心理のあれこれを、聖書の深みを、死を越える友情を描きこなす筆致は芸術的。

    入水希望の女性が後を絶たなかったのも分かる様な…夏だけに。

  • 表題作の『走れメロス』を改めて読みたくてこう購入

    メロスの短気とセリヌンティウスのお人好し、暴君ディオニスの単純さなど色々突っ込みどころがあるが故に多様な解釈が可能であろうと思える。

    取り敢えずメロスが間に合わなかった時の其々について考えてみた。

    メロス:自分の身勝手で自称親友を殺してしまう。周りからも非難され妹夫婦からも距離を置かれる。セリヌンティウスの弟子たちから訴えられ、生きていくことに絶望を感じ自分の短慮と若さに後悔する。

    セリヌンティウス:急遽訪れた試練の三日間!自分では問題を解決する事が出来ない状況がもどかしい。ディオニスに命乞いすべきか、潔い死かの選択を迫られるもディオニスの性格を加味し、潔い死により友を信じたために殺された悲劇の英雄として名を残す事を選択。石工の弟子達の将来を憂う。

    ディオニス:セリヌンティウスへの刑の執行の是非を迫られる。執行すれば畏れられるが罪の無い者を殺す罪悪感と民衆からの支持率が益々下がる事が必死。セリヌンティウスへの刑の執行を見送れば寛容なところが民衆から支持される可能性はあるが王の発言が軽いものとなってしまうことについて悩む。


    他には、キリストの弟子の告白を描いた『駆け込み訴え』と、自分と実家の関係修復を描く『帰去来』が面白かった!

  • 感受性の高い作者が、自分を傷つけずに書いている数少ないお話。
    歴史的な設定、友情と信頼について記述しようとする姿勢。
    太宰の作品の中では、人間失格とは対極のような物語かもしれない。

  • これは永久保存版だわ。短編集侮るなかれ。面白い。さすが太宰、読みやすい言葉を使ってくるしサクサク感情移入できて読めちゃう。

    メロスもいいが、『駈込み訴え』でのめりこみ、『帰去来』で感動。。。

    人間失格から太宰ワールドに入ったもんだから、陰鬱な先入観で読み始めたら見事に裏切られた。光というか希望のようなものが編みこまれてる短編物語がいくつかあった。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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