虞美人草 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010106

感想・レビュー・書評

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  • 紫色の女としてヒロインとしつつも嫌われてしまっている藤尾。彼女の描写に引き込まれました。丁寧にその美貌を讃えていて、美しい表現を散りばめることができる夏目漱石だからこそでしょう。
    甲野さんや小野さんが語る世界観もまたおもしろい。甲野と宗近の掛け合いなぞは身近な友人同士をうまく表していて憧れます。ひたむきに思う糸子、謎の女こと藤尾の母、そしてしとやかな小夜子など、それぞれの人格が際立っていた。定めているのは夏目漱石の地の文。そして状況に対する反応。どうとっても小夜子は「待つ女」で糸子は「耐える女」だということを表現できていました。
    長編ということもあり、無学な私には少し堪えました。しかし読み切ったときの達成感は計り知れません。今までに読んだ夏目漱石の作品は「こころ」と「坊ちゃん」でしたがが、藤尾のような強力な登場人物がいなかっただけに印象が強かったです。彼女の生き方や考え方は少なくとも誰かを惹きつけている。小野さんも財産目当てのような部分があったが、少なくとも藤尾の人格に惹かれていたのは否めないと思います。最終的にはそのプライドも気品も地に落ちるわけだが、嫌な女というのも嫌な立ち位置であると感じました。

  • 漱石のはじめての新聞連載小説。各章の始めの雅文がいい雰囲気を出してる。ここだけ声に出して読みたい!

  • なぜだか漱石の作品には自分の好みにクリティカルヒットするような登場人物が一人は出てくる。キャラで読むのは浅い読書だとかいうけれど、こんなにキャラがたってちゃしょうがないじゃないか。漱石が悪いんです。
    これだと甲野兄。漱石の作品中でも多分一番ツボに嵌りました。この薄幸そうなダルそうな感じが!

    そして甲野妹。いきなり文章が神話かおとぎ話に変わったんじゃないかというほどの描写をされていて戸惑った。現実離れした和風クレオパトラ。多分あらゆるファム・ファタールの中でも最も綺羅綺羅しい描写をされているんじゃないかと。最後もファム・ファタールの名に恥じなかったし。徹底しすぎていてやっぱり現実離れ。現実を舞台にしているからやっぱりそぐわない気はしちゃいますがね。

    珍しくシェークスピアの要素が入っていたりしてそこも楽しめました。しかし気合の入った文章だったなー、硬い硬い。
    そんな硬い文章の内容がこんなに面白いとは思わなかった。漱石作品で夜を徹してしまうとは。今のところ読んだ漱石作品中トップです。

  • 漱石の長編で多分唯一読みおわってない。珍しく読みきれない

  • 素晴らしく面白い。今まで読んだ(5つのみですが)漱石の作品の中では一番面白かった。
    さきのレビューでも書いたが、やはりその場にいるかのような風景の描写がすごい。文章も美しく、これは芸術であると言える。
    ただ全体的に長く、難しい表現も多いので読み難さはある。しかし読み進めるうちに、面白さは二次曲線のように大きくなっていくだろう。

    小夜子は良かったと思う。小野を見て私も反省します・・・。

    作中の名言(独断による)を載せておきます。
    ・一人と一人と戦う時、勝つものは必ず女である。男は必ず負ける。
    ・真面目と云うのはね、僕に云わせると、つまり実行の二字に帰着するのだ。
    ・道義の実践は他人にもっとも便宜にして、自己にもっとも不利益である。人々力をここに致すとき、一般の幸福を促がして、社会を真正の文明に導くが故に、悲劇は偉大である。

    是非一読をお勧めします。

  • 漱石がヒロインの藤尾さん嫌いなのがびしばし伝わってくる。

  • すごく独特。これでもかというくらい飾りに飾った荘厳な描写と、中身があるようでない問答の数々。
    哲学的と詩、悲劇と喜劇を巡って繰り広げられる静かな闘いが私には心地よかった。
    だが結局は喜劇ばかりが流行るのが悲しい現実なのか・・・。

  • なんとも悲しい話

  • 07.5.23

  • 09018

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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