- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101010113
感想・レビュー・書評
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頼りないけど憎めもしないちょっと捻れた明治ニートたちを中心とした、連作短編というよりはオムニバス形式という方がしっくりきた作品集。
どの話も取り立てて山や谷がある展開ではなく。
けれど、本作の狂言回し役と言って差支えないポジションにいる、大学を卒業したばかりで世間をまだよく知らない青年・敬太郎が様々な人と知り合い、その行動を眺め、彼らから話を聞く姿を読んでいて特に強く思ったのは。
個々の人生は独立したもので、その心のうちも行動原理も、それがどれほど身近な人間であっても、他者である以上は、どれほど親身になろうと、どれほど対話に努めても、決して伺い知れず踏み込めない部分が絶対にあるのだ、ということ。
その背景も相まって、従妹にして事実上の婚約者である千代子へ抱く鬱屈した思いを滔々と語る、敬太郎の友人・須永の姿には、その実、自分ですら自分の気持ちなんてわかっていないし、だからこそ何もしないというか出来ないのか、とまで思う。
それにしても須永は頭でっかちが過ぎる気がしたけれど。
でもこれが、血縁や家の縛りに抗うなんて考えることもできなかった明治規範の中で生きた人の一つの姿なのかもしれない。
正直、数ある漱石作品と比べて、特別に面白い作品!おすすめ!というわけではないです。
最後に全てがつながって…みたいな仕掛けがあるわけでもないし。
でも、生死を彷徨う大病から回復した漱石が
「かねてから自分は個々の短篇を重ねた末に、その個々の短篇が相合して一長篇を構成するように仕組んだら、新聞小説として存外面白く読まれはしないだろうかという意見を持していた。」
故に書き上げた意欲作であり、それだけに、次の話へ進めるためのさりげない繋がり部分が興味深かったりはします。
そうはいっても、漱石は意図せず既に処女作「吾輩は猫である」で連作小説の型を創り上げているし、そちらのほうがラストの衝撃度が強いです。
そして、現代文学をたくさん読んでいる人にとっては、もはや真新しい手法ではなく、むしろ古めかしく辿々しいくらいかもしれませんね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
須永の暗さが伝染しそう。
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漱石ってなんでこんなに魅力的な心情描写が出来ちゃうんだろう。凄いな。
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敬太郎が関わった人たちそれぞれを主人公にして話が展開していく、スラップスティックな構成。写生文というジャンルなんですね。
なんだか全体的に静かな小説。
外からみるのとその本人が考えてることなんて随分隔たりがあって、詰まるところ人ってわかんないなぁと思った。
高等遊民に憧れる一方、やりがいを感じて日々幸せな生活があれば普通でも十分だと思えました。 -
夏目漱石の前期三部作を読み終わったので、後期三部作へ。前期のモラトリアムな高等遊民の話から一歩進んでいる気がする(それでも臆病な自意識が邪魔をして、女の子と上手くいかないのですが)。
話も工夫していると漱石が言うだけあって、蛇のステッキの話から探偵まがいの話など興味を引く小話がうまくつなぎ合わされて千代子との話に流れていき、飽きずに読めた。 -
娶る気もないくせに嫉妬をする市蔵に千代子が卑怯だと伝えるシーンがやはり印象に残る。
でも彼の考え方は割と現代的で分からんくもないが…最後は希望と捉えたいところ。
しかしこの作品、夏目作品としては結構新鮮なつくりだった。
これで後期3部作も残り1つ‼︎
買っとこ。 -
昔読んで「面白かったなー」という記憶があるけれど、どんな話だったかあまり思い出せない。蛸が出てくる?
ヘビのステッキが重要な小道具だった気がする。
もう一度読み返したい -
彼岸って言っても今どきいつ頃のことだか良く分からんし、むしろ島なのか?丸太は持ったのか?って感じになるし、彼岸島迄?って思う人もいるしいないしで、まぁでも吸血鬼は出てこない平和な話だった。
でもっていつもの昔の文学に出てくる、ぶつぶつと面倒くさい事ばっかり言って何もしないニートがぶつぶつ言ってるわけなんだけども、そんなぶつぶつ言ってるだけなのに、女の子がしっかりついてくるという、またこれか!って言わずにはいられない展開。そしてその展開がどうなったのか分からないまま終わってしまうという、このモヤモヤをどうしてくれようか。
あと鎌倉在住者として、鎌倉近辺がめっさ田舎というか、スラム漁師村的に語られてたのがなかなか良かった。調子に乗ってる住民に是非とも読ませるべき書ではないか。