- Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101010199
感想・レビュー・書評
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ハードル上げすぎたかな?
普通、登場人物が語る言葉や、心的描写でキャラを作ってくのが常套手段やけども、この作品はそれプラスお互いの相手に対する評価(期待とか嫉みとか好意とか)みたいなものをぶつけ合うから、光が反射し合いながらプリズム効果をうんで、その光から生まれる影によって立体性を持たせたのではないかな。
たぶん狙ってんちゃうかな〜。
しかし!
何ちゅうか、率直に筋に入られへんかった。
名作やと思って読んだからかもしれんけど、名作読んでます感が途中から自分でしらけたんかもしれんな。
10年後くらいにもう一回読まなあかんかな。
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夏目漱石の絶筆。新聞連載の小説だったようです。第188話が最後で未完。
ほぼ全編、登場人物同士のマウントの取り合いのような内容だった。会話の一言々々の心理描写が長く、読むのが苦痛に感じた。
津田の理屈っぽい物言いや、登場人物の中で異物(下流階級)である小林の話し方など、全く好きになれなかった。 -
未完の大作。ずっと読みたかったのですぐに読了。
人によっては回りくどい言い回しがとっつきにくいだろうけれど、私はどハマりした。
言葉の使い方が本当に美しくて、津田のダメ男さが霞むほど。
最後は「えっ⁈ここで終わり⁈」と思わされ、もし漱石が続きを書くとしたらどうしただろうと妄想を膨らませられるのも、考えようによっては楽しかった。
人それぞれの解釈をすることができるのも、きっと名作たる所以。ある意味、未完という形があってこその本作なのかもしれない。 -
相容れない、噛み合わない、分かり合えない、そんな感覚が残る。誰もが自分に一所懸命であるがゆえなのか、その集まりは混沌としている。おそらくそれがわれわれの生き延びなければならない世界なのだろう(限られた人と奇跡のように通じ合える、一握りの時間はあるのかもしれないけれど)。
惜しむべきは未完であることだが、きっとすれ違いを続けたまま話は進み、そのまま終わっていくのだと思う。 -
津田(夫)対お延(妻)、津田(夫)対お秀(妹)、お延(妻)対お秀(妹)、津田(夫)対小林(悪友)、お延(妻)対小林(悪友)、吉川夫人(上司の妻)対お延(妻)、、、そして肝心の清子(元かの)との対峙が始まる直前で絶筆の未完。
登場人物が入れ替わっての会話対決が次から次に転換されて、正直なところ、これが傑作呼ばわりされる理由がさっぱりわからん。漱石にしてはえらく俗っぽく、かつ、女性をずいぶんたくさんえがいたからかしら。
対決シーンの中では、湯治に行くことをめぐっての津田(夫)対お延(妻)の対決、お金の援助を廻っての津田(夫)とお秀(妹)の対決の部分だけか、昼ドラみたいな感じが味わえたのは。 -
夏目漱石の小説は、どこか馴染めないところがある。上流階級のエリートで、男性中心という世界観が自分とは縁遠いという感じを起こさせるからだ。ただ、本作はお延という女性の心情を事細かに描写していて、感情移入できる感じがあった。天真爛漫な清子の域には、とても達せそうもない。
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未完。絶筆。惜しまれる。続編を水村 美苗が書いている。
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<u><b>鋭く悲しい漱石作品の到着点</b></u>
<span style="color:#cc9966;">勤め先の社長夫人の仲立ちで現在の妻お延と結婚し、平凡な毎日を送る津田には、お延と知り合う前に将来を誓い合った清子という女性がいた。ある日突然津田を捨て、自分の友人に嫁いでいった清子が、一人温泉場に滞在していることを知った津田は、秘かに彼女の元へと向かった…。濃密な人間ドラマの中にエゴイズムのゆくすえを描いて、日本近代小説の最高峰となった漱石未完の絶筆。 </span>
後書きで柄谷行人も書いてあるけど、漱石は“他者”(自分の手が及ばぬもの)という存在をこだわって描き、多くの場合それは主人公を翻弄する女性であったんだけど、今回ばかりは、いつもと違う。語りの視点がころころ代わり、それによって“他者”も代わり続ける。
どいつもこいつも“他者”に出し抜かれないように、自己防衛ばかりしている。だからみんな妙に饒舌だ。『明暗』以前の登場人物たちとは比べると、登場人物の大半の性格は悪そうだ。作品中、登場人物たちは、自分のエゴイズムに満足し、またその一方で、理解できない他者の動きに恐怖を抱き…その繰り返しである。それは、或る意味では、人間社会の真理を突いているとも言え、「夏目漱石」という一作家としての慧眼はすばらしくも、一人間「夏目金之助」が最後にたどり着いた人生観だと考えるとなんだかとても悲しい。