黒い雨 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101034065

感想・レビュー・書評

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  • 日本に生きている以上避けては通れない原爆、中学の頃読み通せなかったものをようやく最後まで辿り着けました。石炭会社や軍部との関係などが少しわかりづらく、黒い雨にうたれた矢須子さんについてもう少し踏み込んで欲しかった。全滅、という言葉が出るたびに胃がぎゅっとなった

  • 積読でありながら、今まで避けてきてしまった作品。高校の教科書で習った時から、原爆被害の描写が衝撃的で、読まなきゃいけないけど、どうしても手が出なかった。しかし今年、戦後75年の節目ということもあり、勇気を出して読んだ。
    この作品は、ありがちな戦争小説、原爆小説のように、被害の生々しい描写で恐怖を与えて、NoWarを訴えるものとは違った。原爆投下の日から終戦までの数日間を、回想日記の形で示している。日常の中の原爆、あくまで日常の中での大きな被害が描かれていて、尚更胸が締められる思いもするが、「生き残ったから生きなきゃのらない」その生活が一番の主題となる。だから、恐怖ばかりが強調されるわけでなかったから、より深く原爆について考えることができた。

  • 田中好子主演「黒い雨」が頭にあり、原爆に翻弄された矢須子の話だと思い込んでいた。それが原爆投下後の重松日記を延々と読むことになりがっかり。映画を見てないが映画もそんな内容なのか?

    今は「こんなひどいことがありました」だけでは伝わらないと思う。聞き飽きたとは言わないが、たくさんのひどい話の一つにしかならない。なぜ核兵器を無くす必要があるのか? それは一瞬にしてあるべき未来を奪うからで、そこを伝える必要があると思う。だから、この本では矢須子の話が中心にあった方がよかった。

  • 言葉では、言い表せないような凄惨な場。
    それを言葉にして、見事に描ききる。
    体験していない僕たちは、このような文学や体験記でしか知り得ることができない。
    想像も絶する、世界だったのだろう。
    言葉のひとつひとつから、滲み出る凄味がある。

  • 昔読んだ本

  • 僕らの世代は戦争を知らない世代だ。
    子供のころに、はだしのゲンの映像を見て、戦争、原爆に対する恐怖を感じた。昔の写真週刊誌には時々知らない国の戦争の様子や死体の写真が載っていることもあったが、今では生々しい死体の写真すら見ることはなくなった気がする。
    時にはグロも必要だと思う。でないと人が何人死のうとイメージができないからだ。
    娯楽的な戦争映画で戦争を学ぶのも良いと思うが、こういう戦時中の生々しさを描写してくれる作品で、より戦時中の悲惨さと、それでいながらの日常を知ることができました。

  • 広島の原爆投下前後の状況を一般の夫婦とその姪を通じて描いている。自分が見たこと、人から聞いた話等を交えており、リアリティがあり、その悲惨さがよくわかる。

    直接被爆していなくても、救助に向かった人、避難時に通り抜けた人が後々後遺症に苦しんだこともよくわかる。淡々とした記述だが、だからこそ引き込まれるものがある。

    若い世代にも読み継がれるべき戦争作品の傑作と思う。

  • 原子爆弾で破壊され尽くした広島。
    終戦間際から終戦、そして数年後。
    日記、記録の形で綴られる、その時。その後。
    歴史の教科書では見えない市井の人たちの戦争。
    今までぼんやりとしていた戦争が、視界に、胸に、迫ってくる。
    とは言え、とにかく読みやすい。
    夢中で読んだ。

  • 「志村〜後ろ後ろ」の世界である。
    よかれと思っての記述が、被爆のしるしという悲劇を
    柔らかく描く

  • [private]石垣りんの「挨拶」を思い出した。
    あ、

    この焼けただれた顔は
    一九四五年八月六日
    その時広島にいた人
    二五万の焼けただれのひとつ
    すでに此の世にないもの

    とはいえ
    友よ
    向き合った互いの顔を
    もう一度見直そう
    戦火の跡もとどめぬ
    すこやかな今日の顔
    すがすがしい朝の顔を

    その顔の中に明日の表情をさがすとき
    私はりつぜんとするのだ

    地球が原爆を数百個所持して
    生と死のきわどい淵を歩くとき
    なぜそんなにも安らかに
    あなたは美しいのか

    しずかに耳を澄ませ
    何かが近づいてきはしないか
    見きわめなければならないものは目の前に
    えり分けなければならないものは
    手の中にある
    午前八時一五分は
    毎朝やってくる
      
    一九四五年八月六日の朝
    一瞬にして死んだ二五万人の人すべて
    いま在る
    あなたの如く 私の如く
    やすらかに 美しく 油断していた。[/private]

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著者プロフィール

井伏鱒二 (1898‐1993)
広島県深安郡加茂村(現、福山市加茂町)出身。小説家。本名は井伏満寿二(いぶしますじ)。中学時代より画家を志すが、大学入学時より文学に転向する。『山椒魚』『ジョン万次郎漂流記』(直木賞受賞)『本日休診』『黒い雨』(野間文芸賞)『荻窪風土記』などの小説・随筆で有名。

「2023年 『対訳 厄除け詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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