- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101048017
感想・レビュー・書評
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純愛物なのに、文章が情緒に欠けるなぁ…と思って読んでいたけれど、最後の三文は美しい。政夫と民子の想いを凝縮した文章。
「号泣した」という感想をよく聞くが、わたしはそこまでではなかったかな…?
「野菊の墓」「守の家」は切なく悲しく、「浜菊」は少し皮肉めいていて、「姪子」は暖かみがあったので、この一冊でいろいろな話を楽しめた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
純粋で、初々しく、そして悲しい恋を描いた表題作。民子との別れや民子の病死の場面はいかにも古典的な感じ。むしろ序盤から中盤、政夫と民子との日常の描写が秀逸。特に2人が山畑の綿を採りに行く道中、民子を野菊に、政夫を竜胆に例えて、互いの気持ちを伝えあうところがこそばゆい。燃え上がるような恋もよいけれど、抑圧された環境下での静かな恋もまたすばらしいものだ。
表題作以外の『姪子』『守の家』も心が温まる佳作。 -
「好きの定義とは?」などと中学生じみたことを吐露していたら、涙なしでは読めないと本書を知人に紹介され読んでみました。涙なしでも読めました。小説に答えを求める月間9冊目。「貴方は野菊みたいな人です」→「私は野菊が好きです」。こんなこと言ってみたいわ!やっぱりひかれるからやめとくわ!一番泣きたいのは政夫の筈なのに、周りを思って気丈に(?)振る舞うのは優しさなのか。我を忘れて怒り狂っても、それはそれで深い愛情な気がするけども。こんな場面においても自分を殺すなよと思う。
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なんて純粋な二人なのだろう。素晴らしい恋。
「民子は嫁に往った。此一語を聞いた時の僕の心は自分ながら不思議と思うほどの平気であった。僕が民子を思っている感情に何等の動揺を起こさなかった。」
政夫の民子を思う気持ち、民子の政夫を思う気持ちは、何があっても変わらないということがわかる一文。民子が政夫といるときの無邪気さ、嬉しさが、読んでいるこちらにまで伝わってきてつい微笑んでしまう。 -
青空文庫さんにて。2人が本当に初々しくて、清らか。切なくて仕方がないけど、それがまた好き。当時の社会を如実に書き出している、ということで授業ですすめられた作品。
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受験真っ只中で読みふけっていた。読みやすく、こてこての純愛ながら心打たれた。
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2017/09/19
この作品を手に取ると、鮮明に思い出す。
高校卒業間近の3階の教室の窓際。冬ながら小春日和で日差しが暖かかったこと。中庭に輝くようなハクモクレンが咲いていたこと。冬休みの静かな校舎。先生の担いでいた脚立。何を読んでるの?と聞かれて応えると、「お民さん、」と先生が言った。自分の名前を呼ばれたような気がして、頬が熱くなったこと。暮れるのが早い冬の西日が眩しかったこと。
永遠のような静かな時間が心地よかった。十年、二十年のちにこの本を読んでも、きっとまっさきにこの日を思い出す。幸福を感じたこと。人生でいちばん、美しい日だったこと。 -
学校の宿題で呼んだのですが思わず涙がポロリ…
かなわぬ恋に胸が締め付けられました。 -
とても若々しい小説だった覚えがあります。でも本人はかなりの頑固者だったとか。ずいぶんと年配になってから作家になった人です。