- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101050232
感想・レビュー・書評
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豊穣の海第三巻、今度はタイの姫ジンジャンが生まれ変わりとして本多の前に現れた。今作からは主に本多視点で物語が進み、感情が細かく描写されているように感じた。
前半部分では本多がタイやインドで見た光景や唯識論等、輪廻転生に重きを置いた物語だった。そんな経験をした本多の見る世界を追うことができて非常に面白かった。しかし、後半からは本多の性欲の話がメインになり、それまでの話との繋がりがよく分からなかった(というより難しくて読み取れなかった)。そのため、徐々に物語にのめり込めなくなっていった。
それでも随所に描かれている哲学的な議論は面白く、また美しい言葉には心を動かされた。
遂に最終巻まで来た。楽しみ。
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谷崎潤一郎作品を読んでいるのかと何度か錯覚した。
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1996/08/28
タイ旅行の前に読んでおこうと手に取る。
長い3冊だった。
気持ちが沈む。あまりにもこの本の人生への悲観が今の私を楽に感じるくらい。
とにかく今の私はダメダメ、もっと強くもっとカッコよくなろうって。
以前はここまで人の目が怖くなかったはずなんだけど。 -
傑作だと思う。
ただ、作者の思いなのかとにかく作品にのめり込まれて、自分を失いそうになるくらいのインパクトがある。 -
語り部(見届ける者というか)として通しで登場する本多はもう50歳を過ぎていて、僕とほぼ同い年(読んでて結構辛い)。
三島は、ここでも冷徹に歳をとることの過酷さを描いている。
彼はたまたま弁護した裁判の結果、巨万の富を得ているが、お金があったとしても年齢からは逃れられないことを際立たせているように思う。
第1巻で若き2人を破滅に導くこととなった蓼科が95歳で再登場したとこに驚いたが、これも老いの厳しさと業を描いていて、印象に残った。
タイとインドへの旅、タイの王妃ジン・ジャンの妖しい魅力などから4部作の中でも最もカラフル。小説としてもここまでの3冊はどれも面白く、さすがだなと思う。 -
三島由紀夫の小説に足りないものは何か。
それがわかったような、、、。
この世を創っている仕組みに関与していないのだ。
いや、批評精神がないとでも言おうか。
作者の資質なのだから芸術性が削がれるわけではないけど。
むしろ芸術上の美学が濃くあるのだが。
さて第三巻にいたって脇役の「本多」が主人公に躍り出てきた。
第一章と二章に分かれている。
第一章のタイ、インドへ「本多」が旅行してつぶさに見た、
「輪廻転生」の仏教哲学を詳しく語る部分は圧倒される。
「唯識(ゆいしき)」「未那識(まなしき)」「阿頼耶識(あらやしき)」
の言葉が飛び交い煙に巻かれた感じである。
ただ、永遠に続くことはなくて絶えず流れているのがこの世であり、
「いまここ」を生きるという仏教の根本理念はわかるが。
一章と二章の落差。
この一章に三島由紀夫が自殺を決意したこのなぞときがあると文庫の解説者はいうが、、、。
うーむ?
第二章の老齢になった(といっても58歳、いまならまだまだなのに?)
のあきれる姿、これでもかこれでもかと猥と雑を描く筆のさえは何事かと思う。
この司法の場で仕事する人物の、言うなれば世間知らずがおもしろい。
しかし「情熱な悲恋」と「壮絶な自刃」行動の純粋な見守り手だった彼が、
やっと人間性を取り戻したのかもしれない。
ひょんなことから億万長者になり、老醜をさらすような、贅の限りを尽くし、色香に迷い、ばかなことをする、執着する、最低、、、。
落ちるところまで落ちた先は、、、という作者の心づもりがある。
というとうがちすぎでつまらないようだけれど。 -
第3巻「暁の寺」。
世界は、一瞬一瞬ごとの滝-。未来も過去もなく、ただひたすら今この瞬間だけが存在するのみ。
豊饒の海も3巻目にして哲学的な論考が随分な紙数を割いて語られる。ロマンチックなストーリーがただ続くだけでは、ダイイングメッセージとしての本小説が意味をなさないので、必要なパートなのでしょう。
この仏典を解釈するパート、そしてインドへ取材旅行をした上で書かれたヒンズー的死生観のパート、どちらもゆっくり考えたいのだけれども、先が気になるので第4巻「天人五衰」へ急ぐ。 -
「奔馬」で推理した次の転生「少女、南の島」は当たっていたし、転生者の軽挙妄動も一途な情熱も今回はお休みだ。そしてなんたらあっけない、というか付け足したようなend。
これは読む側の問題なのだが、流麗で華美な名文にいささか食傷してきた(笑)。けっこう飛ばし読みをしてしまった私を(文学の)神よ、お許しください。
食傷したので大好きな安部公房を読みたくなったが、そういえば三島と安部は一歳しか違わないのであって、2人の対談などを読むとまあ、頭が良すぎて何を言っておるのかわからない。純然とした日本的なものを描く三島と、透徹と冷然と現代を描く安部という両者の作風の違いはまるで書かれた時代が違うかのようだ。
さらには作風を異にするこの2人の評価が、揃って海外でも高いというのも面白い。しかしこの小説の巨人がいたなんてすごい時代だな。
というわけでせっかく調子よく3冊読んだんだから安部に寄り道せず、この勢いで4巻目「天人五衰」へ!