しろばんば (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101063126

感想・レビュー・書評

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  • ノスタルジックな夕暮れに始まり、それとの別れに終わる。無論湯ヶ島と婆ちゃの思い出は少年の中で1つになっている。象徴的なしろばんば。

    老いの進みが洪ちゃの成長を表すと共に、ちんまりとした「しろばんば」というワードに収まっていく婆ちゃの人生の、逞しくも寂しい余韻が胸に響いた。

    頼りない甘えん坊な田舎少年が家族に流されながらも、後半自ら人生を見据え机に向かう真面目さ。場面は薄暗いのに反して爽やかで好ましかった。たった5年でこんなに成長するものか。

    大正時代の日本の描写も単純に興味深く、良き読書時間だった。

    余韻に浸って辿り着いた解説が、あらすじに2、3行コメントがついただけのもので物足りない。プロ目線の感じ方、読み取り方を伺いたかった。

    ブクログの感想を読み漁ろう。

  • 面白かったけど、何故か井上靖の作品は退屈さを感じてしまう。子供が成長して行く気持ちの揺れや心理を上手に描いていると思う。

  • 前半がほんとにほんとに退屈で、何が名作なのかぜんぜんわからなかった。
    出てくる人みんな意地悪いし、仲も悪いし、冗談も言わないし。

    でも中〜終盤、特に死にまつわる話がよかった。

    さき子姉ちゃんの面影や、狂ってしまった犬飼先生や、もうろくしていくおぬいばあさんの姿。
    体験したことのない日常が描かれていて、素朴で情感が強かった。
    映画のなかった時代の映画のように思った。
    何十年も経ってから、記憶を頼りにこれだけのことが書けたのだとしたらものすごいことだと思う。

    ただとりとめがないので、「子供に読ませる名作」としては全然魅力的に思わない。

  • 善人すぎたり悪人すぎたりするのではなく、本音で行動する人物がたくさん登場するのである意味爽快。少年が成長していく過程に自分の子供時代と重ねてほのかな懐かしさをおぼえた。天城の田舎の描写が目の前に浮かぶようでまたよい。

  • 井上靖的最強物語。

  • 和風トムソーヤ。少年の精神的な成長をいろんな側面からいろんな描写方法で描いている。肉親の死の捉え方はリアルだった。子どもの視点を克明に表現していると感じた。衰弱していくさき姉や腰が曲がっていくとともに丸くなっていくおぬい婆の様子が洪作との対比も巧い。ただ、若干冗長。

  • おぬいばあさんの老いと洪作の成長が対照的で印象を深めている。おぬい婆さんは決して立派だと言い切れる人物ではなかったけれど、洪作を可愛がり愛していたことは確かでそれもひとつの人間としての形なのだと感じた。老いた祖母のことが思い出される。

  • 田舎の少年の日常と成長のお話。
    閉鎖的な田舎の考え方や人間関係、淡い恋心、都会の少女が自分とは違う人種に見えたり。
    育ててくれたお婆さんとその周りの人間関係やお婆さんに対する少年の思い。
    とりたてて大事件が起こるわけでもなく進むけれど確かに少年が歩む道と人生があって、そこに生きている人達の人生もある。
    どことなく物悲しい雰囲気に包まれながら読んだ気がする。

  • 大学の授業で使うため図書館で借りました。
    ページ数600ページ弱。今まででこんなに分厚い本は読んだことがないかもしれません。
    でも、分厚い割に読みやすく、すらすら読めました。

著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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