- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101094014
感想・レビュー・書評
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初めて小泉八雲の小説を読みました。
上田秋成っぽい雰囲気です。いくつか似ている?話もあったりして……江戸の怪談小説のような。
どれも気付いたら世界に引き込まれていて、「主人公どうなる?!」というものが多くて楽しかった。実写にしたら相当な恐さがありそうなものもありましたが。恐さと、ファンタジーが同居しているような、ホラー? だけではないどこか幻想的な雰囲気がとても自分好みでした。良かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
八雲を通して視る、美しく、旧い、かつての日本たち。
実情はここまで美しいものではなかったのかもしれない。
けれど彼の目にはこう見えていたのだろう。 -
有名な「耳なし芳一」など幾つもの短編が収められている。
小泉八雲は怪談で有名だが、単なるミステリーということではなく、古の日本にて死や自然の畏怖にどのように対峙していたのか、と考えながら読み進めると、小泉八雲の功績が理解できるような気がする。
死に対する恐怖や畏怖を妖怪や幽霊を通じて生活に組み込もうとした、共存しようとした。
また、そこには生きる上での教訓も含まれている。
キリスト教の世界から奇異に映り、必ずしも仏教の精神でもない。
脈々と受け継がれてきた日本独特の死生観、自然への畏怖を感じる機会を与えてくれたような気がする。
「日本人の微笑」は、西欧人からみた日本の精神の素晴らしさを著しているものであり、明治維新に西欧一辺倒になることへの警鐘でもあり興味深い。
明治時代の小泉八雲の以下一文は今でも色褪せない。
以下引用~
・現在、日本の若い世代の人達がとかく軽蔑しがちな過去の日本を、ちょうどわれわれ西洋人が古代ギリシア文明を回顧するように、いつの日にか、かならず日本が振り返って見る時があるだろう。素朴な歓びを受け入れる能力の忘却を、純粋な生の悦びに対する感覚の喪失を、はるか昔の自然との愛すべき聖なる親しみを、また、それを映していた今は滅んだ驚くべき芸術を、懐かしむようになるだろう。かつて世界がどれほど、光にみち美しく見えたかを思い出すであろう。
古風な忍耐と献身、昔ながらの礼儀正しさ、古い信仰のもつ深い人間的な詩情、こうしたいろんなものを想い悲しむことであろう。そのとき日本が驚嘆するものは多いだろう。 -
「乳母桜」少女の身代わりで亡くなった乳母が桜となって開花する。
「十六桜」切腹した侍の魂が桜となって毎年、その命日(十六日)に開花する。 -
怪談を子ども時代に読み、日本人の微笑を高校時に英語の授業で読まされていたが、八雲は小説家ではないのね。
日本が受け継ぎ、育てて来たぼんやりした曖昧さ、前世からの因果、来世まで見越した関係が支えていた共同体の肝は西洋一辺倒で失われたのか!?自己主張はグローバル社会に必要でも周りとの関係や過去と未来への時間の流れまで心に留めておく根っこは西洋人に指摘されるまでもなく待ち続けたい。 -
明治の頃、実際にあったお話です。
強盗に入り捕まった犯人が、連行中に警察官を殺して逃走した。
やがて捕まった犯人は巡査に引き連れられて、停車場に降り立った。
この犯人を見るべく多くの人々が駅前に集まった。
その時突然、、巡査が「杉原おきびさん、来てますか」と怒鳴った。
すると背中に子どもを背負った婦人がしずしずと前に出てきた。
殺された警察官の寡婦である。
「ぼうや、これがお前のお父さんを殺した人だよ。
ぼうやを可愛がてくれるはずのお父さんがいないのは
この男のせいだよー」
母の肩越しに怖そうに見つめた男の子はやがて泣きだした。
と、いきなり、縛られたまま犯人は地面に顔をこすりつけ、
「ごめんなさい、坊ちゃん。
恨みがあってやったわけじゃございません。
逃げ出したいばかり、怖くてやってしまったのです。
ほんとうに悪いことをしました。」と叫んだ。
犯人を引き起こし立ち去っていく巡査に涙があった。
そして、あたりにいた多くの人々がすすり泣いていた。
その場に立ち会わせたラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は
この様子を見、心から驚き、感動した。
彼は当初、群衆が怒り狂って罵詈雑言を発するさまを
想像していたのである。
明治26年のことです。
※ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)「停車場で」より
当時、日本国民は本当に貧しかった。
貧しく、ひもじいがゆえに、こらえきれず悪の道に踏み込んだ人もあった。
犯人のおかれた境遇が、心情が
当時の人々の心に、すうーと入ったのである。
まさに「罪を憎んで人を憎まず」という言葉が
そのままに受け入れられた時代だった。
さて、こうした事が現代の日本にあったらどうでしょうか?
マスコミが騒ぎ立て、群衆は騒然とするのではー
今の日本人には何か大切なものを
忘れてしまったような気がするのは私だけでしょうか? -
怪談ばっかりかな、と思って手にしたら日本人論ありエッセイ的なものもありバラエティに富んだ一冊でした。外国人向けの注釈訳が載っているのもいいです。外国人から改めて、古い日本を教えて頂いた心境。今の日本人は著者にとってどうだろう。嫌いかな?そんなことを思いつつ「日本人の微笑み」を読んだらまだ日本人の根っこに染み付く変わらない「笑み」を発見。外国人から不快と取られる「微笑」の本質を逆に教えられました。現代人の語る「怪談」は心がなくて好きではないけど、この本の「怪談」は哀しくて時に優しくてどこか曖昧で、好きです。
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さまざまな「話」の原形、とくに日本人の特徴的な情緒をあらわす小さな話が一挙に読めてたのしいです。恨み、思い残し、約束、不実など、Godのない日本の近世でなにが道徳や美徳の基準であったのか、また、そこにたしかに模範とされる基準があったことを感じられます。
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日本語が美しくて、翻訳された方も尊敬する。
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小泉八雲の作品を読んだのは子供の頃以来か。
やはり年齢によって感じ方は異なるものだ。
とても丁寧に日本の伝記。。主に怪談だが。。を作品にしていっている。
会談ではないが 日本と西洋の文化の違いを論じた日本人の微笑は 現代にも通用する素晴らしい論説。
一度読んだことがある方ももう一度読んでみてもいいだろう。